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交通事故の慰謝料を先払いしてもらう3つの方法!内払い・仮渡金・被害者請求を比較

交通事故の慰謝料を先払いしてもらう3つの方法!内払い・仮渡金・被害者請求を比較

「交通事故のけがで働けず、生活費が苦しい」「治療費の立て替えがかさんで、示談を待っていられない」。

そんな不安を抱える方は少なくありません。

交通事故の慰謝料は、原則として示談成立後に支払われます。

しかし示談までには通常6か月から1年かかるため、その間の生活費や治療費に困るケースは多いものです。

こうしたとき、示談前でも慰謝料の一部を受け取れるのが先払いです。

先払いには、内払い・仮渡金・被害者請求という3つの方法があり、それぞれ請求先や受け取れる金額、もらえるまでの期間が異なります。

この記事では、3つの先払い方法を比較しながら、いくら・いつ・どうやって受け取れるのかを解説します。

あわせて、ご自身の状況に合った方法の選び方や、請求がうまくいかないときの対処法も紹介します。

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この記事の監修者

富永 慎太朗 (福岡県弁護士会)

ご相談者様のお話をしっかりと伺い、豊富な実績を活かし最適な解決策を提案しています。
目次

【比較表】交通事故の慰謝料を先払いしてもらう3つの方法

交通事故の慰謝料は、原則として示談成立後に一括で支払われます

しかし示談交渉を始められる症状固定まで半年〜1年程度かかるケースも多く、その間の治療費や生活費に困る被害者は少なくありません。

そこで活用したいのが、示談前でも慰謝料の一部を受け取れる先払い制度です。

先払いには、主に次の3つの方法があります。

比較項目 ① 内払い
(任意保険会社による仮払い)
② 仮渡金 ③ 被害者請求
請求先 加害者の任意保険会社 加害者の自賠責保険会社 加害者の自賠責保険会社
受取時期 請求後2〜4週間程度 請求後約1週間(最速) 請求後1〜2か月程度
(書類準備を含め実質2〜3か月)
金額の目安 費目ごとに保険会社が認めた額 5万・20万・40万・290万円の定額 傷害120万円/後遺障害75万〜4,000万円/死亡3,000万円
法的根拠 なし(保険会社の任意対応) あり(自賠法17条1項・施行令5条) あり(自賠法16条1項)
難易度 難(書類準備が煩雑)
こんな人におすすめ 加害者が任意保険に加入しているケース 重傷で当面の生活費が至急必要なケース 加害者が任意保険未加入/治療が長期化するケース

利用頻度が高いのは①内払いです。

加害者が任意保険に加入していれば、まず検討すべき方法といえます。

ただし内払いは法律で定められた制度ではなく、対応するかどうかは任意保険会社の判断によります。

場合によっては拒否されることもあるため、内払いが使えない、または金額が不十分なケースでは、②仮渡金③被害者請求の利用を検討してください。

仮渡金と被害者請求はいずれも法律上の制度で、条件を満たせば受け取れます。

以下では、それぞれの方法についていくら・いつ・どうやっての3点を軸に詳しく解説します。

①加害者側の任意保険会社に請求する「内払い」

内払いとは、加害者側の任意保険会社が、示談成立前に賠償金の一部を前払いする対応をいいます。

先払い方法のなかで最も一般的に利用されており、加害者が任意保険に加入していれば、まず検討する方法です。

なお内払いは、かつて自賠責保険にあった内払金制度(2008年10月1日廃止)に由来する通称です。

現在は任意保険会社が任意一括対応の一環として同様の前払いに応じるため、本記事では「内払い」と表記します。

ただし法律上の制度ではなく、対応の可否は任意保険会社の判断による点に注意が必要です。

内払いでいくらもらえる?対象費目と請求回数・金額の上限

内払いで先払いされる金額は、定額ではなく、費目ごとに実際に発生した損害額をもとに決まります

先払いされやすい費目

家計への影響が大きく緊急性の高い費目は、内払いが認められやすい傾向にあります。

  • 治療費:一括対応として保険会社が病院へ直接支払うため、被害者が立て替える必要がない
  • 通院交通費:実費として明確に計算できる
  • 休業損害:収入減が家計に直接ひびくため、毎月単位で支払われるケースが多い

とくに治療費の一括対応は、被害者が手続きをしなくても始まる先払い形態で、多くの被害者が利用しています。

先払いされにくい費目

一方、次の費目は対象になりにくい傾向があります。

  • 慰謝料:精神的苦痛への補償で、金額が示談時に確定するため、先払いの緊急性が低いと判断されやすい
  • 逸失利益:将来の損害で、確定に時間がかかるため先払いされない

請求回数の上限

請求回数に明確な上限はなく、治療が続く間は複数回請求できます。

休業損害は、毎月の給与支給日に合わせて支払われるケースも珍しくありません。

ただし自賠責保険の傷害分の上限120万円を超えると、任意保険会社の判断で先払いが打ち切られる場合もあります。

内払いはいつもらえる?

内払いの支払いまでの期間は、請求後おおむね2〜4週間程度が目安です。

必要書類を揃えて請求すると、保険会社内部での審査・承認を経て振込がおこなわれます。

ただし、次のようなケースでは支払いが遅れることがあります。

  • 提出書類に不備があり、訂正が必要になった場合
  • 損害額の算定をめぐって保険会社と認識の違いがある場合

内払いの請求方法と必要書類

内払いを請求する手順は次のとおりです。

  1. 加害者の任意保険会社に連絡し、内払いの可否と必要書類を確認する
  2. 必要書類を揃えて保険会社に提出する
  3. 保険会社が内容を審査・承認する
  4. 指定口座に振込がおこなわれる

必要書類は費目や保険会社によって異なりますが、一般的には次の書類が求められます。

  • 交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得)
  • 診断書(治療を受けた医療機関で取得)
  • 診療報酬明細書(治療費を請求する場合)
  • 通院交通費明細書(通院交通費を請求する場合)
  • 休業損害証明書(休業損害を請求する場合/勤務先が発行)
  • 源泉徴収票(前年度分/休業損害の収入証明)
  • 印鑑登録証明書

とくに休業損害証明書は勤務先の総務部などで記入してもらう必要があり、取得に時間がかかるケースもあります。

請求を予定している場合は、早めに準備を進めておくと安心です。

内払いを請求する際の注意点

内払いを利用する際は、次の3点に注意が必要です。

注意点①:保険会社の任意対応であり、拒否される場合もある

内払いは仮渡金と違って法律上の制度ではなく、任意保険会社の判断でおこなわれます。

そのため、次のような場合は拒否されることがあります。

  • 過失割合で争いがある場合
  • 休業損害の発生状況について、保険会社と見解が異なる場合
  • 治療期間が長引きすぎていると保険会社が判断した場合

拒否されたときは、自賠責への被害者請求や仮渡金など、別の方法を検討しましょう。

注意点②:先払い金は最終示談金から差し引かれる

内払いは追加でもらえるお金ではなく、示談金の前倒しです。

示談成立時には、先払い分が最終示談金から差し引かれます。

注意点③:保険会社から示談を急かされても応じない

内払いを受けた後、保険会社から早期の示談を促されることがあります。

しかし症状固定の前に示談すると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できなくなります。

示談は症状固定後におこなうのが基本です。

②自賠責保険の「仮渡金(かりわたしきん)」制度

仮渡金とは、自賠責保険から一定額を一時的に受け取れる法律上の制度です。

内払いと違って法律で定められているため、条件に該当すれば確実に受け取れる点が最大の特徴です。

ただし請求は1回限りで、金額もけがの程度に応じて固定されています。

まとまった賠償金というより、示談成立までの当面の生活をしのぐための制度と位置づけるのが現実的です。

仮渡金でいくらもらえる?けがの程度別の金額

仮渡金の金額は、けがの程度に応じて5万円・20万円・40万円・290万円の4段階で固定されています。

具体的な金額と対象となる条件は、自動車損害賠償保障法施行令5条で次のように定められています。

けがの程度・条件 仮渡金の金額
死亡した場合 290万円
脊柱の骨折で脊髄を損傷/上腕または前腕の骨折で合併症がある/大腿または下腿の骨折/内臓破裂で腹膜炎を併発/14日以上の入院を要し、かつ治療期間30日以上 など 40万円
脊柱の骨折/上腕または前腕の骨折/内臓破裂/入院を要し治療期間30日以上/14日以上の入院 など 20万円
11日以上の治療を要する傷害 5万円

仮渡金で押さえておきたいのは、支給される条件(支給事由)が定められており、軽傷のケースでは利用できない場合があることです。

具体的には、治療期間が11日に満たない軽傷は対象外となります。

また金額自体もそれほど高額ではないため、仮渡金をもらえば生活が劇的に楽になるというものではありません。

当面の治療費や生活費を補う、一時的な制度と考えるのが現実的です。

仮渡金はいつもらえる?

仮渡金は、請求後おおむね1週間程度で指定口座に振り込まれます。

3つの先払い方法のなかで最も早く受け取れるのが、仮渡金の大きなメリットです。

請求後の流れとしては、損害保険料率算出機構が事故の調査を行い、自賠責保険会社が金額を決定します。

書類に不備がなければ短期間で振り込まれるため、生活費の支払いが迫っているなど、急ぎで資金が必要な状況で便利です。

仮渡金の請求方法と必要書類

仮渡金は、被害者自身が加害者の自賠責保険会社へ直接請求します。

請求に必要な書類は次のとおりです。

  • 支払請求書兼支払指図書
  • 交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得)
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書
  • 印鑑登録証明書

※死亡事故の場合は死体検案書や戸籍謄本、被害者本人以外が請求する場合は委任状などが追加で必要です。

必要書類は、加害者の自賠責保険会社に連絡すれば一式を郵送で取り寄せられます。

記入方法の案内書も同封されるため、初めての方でも手続きを進めやすい仕組みです。

仮渡金を請求する際の注意点

仮渡金の利用にあたっては、次の3点に注意が必要です。

注意点①:請求は1回限り

仮渡金は、ひとつの交通事故につき1回しか請求できません。

治療が長引いて追加の資金が必要になっても、再度請求することはできません。

継続的に資金を受け取りたい場合は、複数回請求できる内払いとの使い分けを検討しましょう。

注意点②:本請求との差額精算が発生する可能性

仮渡金として受け取った金額が、最終的に確定した自賠責保険の補償額より多かった場合、差額を返還する必要があります。

たとえば仮渡金で40万円を受け取ったものの、最終的に自賠責から認められた損害額が30万円だった場合、差額の10万円を返還することになります。

注意点③:支給事由に該当しないと利用できない

前述のとおり、仮渡金には支給事由が定められています。

治療期間が11日に満たない軽微なけがでは利用できないため、その場合は内払いや被害者請求など、別の方法を検討してください。

③自賠責保険の「被害者請求」

被害者請求とは、被害者自身が加害者の自賠責保険会社に対して直接損害賠償を請求する方法です。

加害者を介さずに自賠責保険から賠償金を受け取れるため、加害者が任意保険に未加入の場合や、加害者側とのやり取りを避けたい場合に有効な方法です。

仮渡金や内払いが見込みでの前払いであるのに対し、被害者請求は実際の損害額を自賠責基準で確定させて受け取る本請求です。

示談を待たずに自賠責分を受け取れるため、先払いに近い形で利用できます。

受け取った額は最終的な賠償額の一部として扱われるので、仮渡金のように後から差額を返金するリスクは原則ありません。

ただし損害額の確定を伴うぶん、手続きや支払いには相応の時間がかかります

被害者請求でいくらもらえる?自賠責の支払限度額

被害者請求で受け取れる金額は、自賠責保険の支払限度額の範囲内です。

損害の種類 支払限度額
傷害による損害(治療費・休業損害・慰謝料など) 最高120万円
後遺障害による損害 等級に応じて75万円〜4,000万円
死亡による損害 最高3,000万円

※後遺障害の限度額は等級によって異なり、最も軽い第14級で75万円です。原則は最も重い第1級で3,000万円ですが、神経系統や精神・胸腹部臓器に著しい障害が残り常時介護を要する場合に限り、上限は4,000万円になります。

この限度額内であれば、治療費・休業損害・慰謝料などを、自賠責基準で算定された金額としてまとめて受け取れます。

ただし、自賠責基準は慰謝料を計算する3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)のなかで最も低額です。

最終的に弁護士基準で請求できる金額はこれを上回るため、被害者請求はあくまで示談前に一定額を確保する手段と理解しておきましょう。

被害者請求はいつもらえる?

被害者請求の支払いまでの期間は、請求後おおむね1〜2か月程度が目安です。

必要書類を自賠責保険会社に提出すると、損害保険料率算出機構が事故状況や損害額を調査し、その結果をもとに支払い額が決定されます。

書類準備にかかる時間も含めると、実質的には2〜3か月程度を見込んでおくのがよいでしょう。

3つの先払い方法のなかでは最も時間がかかりますが、限度額の範囲内でまとまった額を受け取れるのがメリットです。

被害者請求の請求方法と必要書類

被害者請求は、加害者の自賠責保険会社に対して行います。

必要書類は請求内容によって異なりますが、一般的には次の書類が求められます。

  • 自動車損害賠償責任保険支払請求書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 通院交通費明細書
  • 休業損害証明書(休業損害を請求する場合)
  • 印鑑登録証明書
  • 後遺障害診断書(後遺障害分を請求する場合)

手続きの流れは次のとおりです。

  1. 加害者の自賠責保険会社に連絡し、書類一式を取り寄せる
  2. 必要書類を揃えて自賠責保険会社に提出する
  3. 損害保険料率算出機構が事故調査をおこなう
  4. 調査結果にもとづき自賠責保険会社が支払い額を決定する
  5. 指定口座に振込がおこなわれる

被害者請求は書類準備の負担が大きく、手続きが煩雑になりがちです。

とくに後遺障害等級の認定を伴う場合は複雑になるため、弁護士に依頼するのが一般的です。

後遺障害の認定手続きについては「後遺障害認定とは。損をしないための手続きや必要書類を解説」もあわせてご確認ください。

被害者請求を利用する際の注意点

被害者請求を利用する際は、次の3点に注意が必要です。

注意点①:手続きが煩雑で時間がかかる

被害者請求は、被害者自身が必要書類を全て揃える必要があり、書類準備だけで1か月以上かかるケースもあります。

治療と並行して手続きを進めるのは負担が大きいため、弁護士への依頼を検討しましょう。

注意点②:自賠責基準での支払いになる

被害者請求で受け取れる金額は、自賠責基準で算定されます。

この基準は慰謝料の3つの計算基準のなかで最も低く、本来受け取れる金額より少なくなる可能性があります。

不足分は最終的に任意保険との示談交渉で請求できますが、被害者請求で受け取った金額は最終示談金から差し引かれる点も覚えておいてください。

注意点③:限度額を超える損害には別途対応が必要

自賠責の支払限度額(傷害120万円など)を超える損害については、加害者または加害者の任意保険会社に別途請求する必要があります。

被害者請求だけで全損害を回収できるわけではありません。

【ケース別】あなたに合った交通事故の慰謝料の先払い請求方法はどれ?

加害者が任意保険に加入していれば、まずは①内払いを検討します。

先払いのどの方法が向いているかは、加害者の保険加入状況・けがの重さ・資金の緊急性によって変わります。

状況別の選び方を、次の表に整理しました。

被害者の状況 おすすめの先払い方法 理由・特徴
加害者が任意保険に加入している 内払い 治療費は一括対応で病院へ直接支払われ、休業損害も月単位で受け取れる
加害者が任意保険に未加入 被害者請求 自賠責から直接回収できる。限度額超えは自身の人身傷害保険を併用
重傷で1週間以内に資金が必要 仮渡金 最速で受け取れ、当面の生活費や急な出費に対応できる
後遺症が残る可能性があり長期化する 内払い+傷害部分の先行示談 治療中の資金を確保しつつ、後遺障害の認定後に残りを請求できる

最も多いのは、加害者が任意保険に加入しているケースです。

この場合は内払いが基本となり、被害者の負担が最も少なくなります。

加害者が任意保険に未加入の場合は内払いを使えないため、自賠責への被害者請求を選ぶとよいでしょう。

自賠責の限度額を超える分は、加害者本人への請求や自分の人身傷害保険でカバーします。

入院を要する重傷で、1週間以内に資金が必要な切迫した状況なら、最速で受け取れる仮渡金が向いています。

仮渡金は内払いや被害者請求と併用することも可能です。

後遺症が残る可能性があるケースでは、後遺障害等級の認定結果を待つあいだ示談が長期化しがちです。

内払いで治療費・休業損害を受け取りつつ、傷害部分だけを先行して示談する方法もあります。

状況判断が難しいため、早めに弁護士へ相談すると安心です。

交通事故の慰謝料の先払いを受け取る前に知っておきたい注意点

どの方法で先払いを受ける場合も、示談交渉への影響として押さえておきたい注意点が3つあります。

注意点①:先払い金は最終示談金から差し引かれる

先払いは追加でもらえるお金ではなく先にもらうお金です。

最終示談金からは先払い分が差し引かれます。

とくに仮渡金と内払いを併用すると、最終示談金が両者の合計を下回った場合に差額の返金が必要になります。

このリスクは、後述する弁護士基準での増額交渉で抑えられます。

注意点②:保険会社の提示額をそのまま受け入れない

慰謝料には3つの計算基準があり、どれで算定するかで金額が大きく変わります。

計算基準 特徴
自賠責基準 法律で定められた最低限の基準。最も低額
任意保険基準 各保険会社が独自に定める基準。自賠責基準と同程度かやや高い
弁護士基準(裁判基準) 過去の裁判例に基づく適正な基準。最も高額

保険会社が提示するのは任意保険基準の金額で、ケースによっては弁護士基準との間に大きな差が生じることもあります。

先払い額に納得した場合でも、最終的な示談では弁護士基準での交渉を目指すと、受け取れる額を大きく増やせる可能性があります。

注意点③:保険会社から早期示談を迫られても応じない

先払いを受けた後、保険会社から早期の示談を促されることがあります。

しかし症状固定の前に示談すると、後遺障害等級の認定を受けられず、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できなくなります。

示談は症状固定の後におこなうのが基本です。

 

交通事故の慰謝料の先払い請求がうまくいかない・長期化する場合の対処法

次のような場合に検討できる対処法を、3つ紹介します。

  • 内払いを保険会社に拒否された
  • 自賠責の限度額を超えそう
  • 治療が長期化し、示談まで時間がかかりそう

①人身傷害保険を活用して自分の保険から補償を受ける

人身傷害保険とは、被害者自身が加入している任意保険の特約のひとつです。

交通事故でけがをしたり死亡したりした場合に、自分の保険から補償を受けられます。

人身傷害保険の大きなメリットは、過失割合の影響を受けない点です。

加害者側との過失割合の交渉を待たずに、契約内容に従って保険金が支払われます。

加害者が任意保険に未加入の場合や、加害者側の保険会社の対応が遅い場合でも、自分の保険会社から速やかに補償を受けられるため、先払い代わりの選択肢として有効です。

まずは自分や家族、同乗者が加入している自動車保険の契約内容を確認してみてください。

人身傷害保険が付帯されていれば、加害者側の対応を待たずに補償を受けられます。

②後遺症がある場合は傷害部分だけ先に示談する

後遺症が残る可能性があるケースでは、傷害部分だけを先行して示談する方法が有効です。

後遺症が残ると、後遺障害等級認定の結果が出るまで示談できず、示談金の受け取りが大幅に遅れがちです。

そこで、後遺障害部分(後遺障害慰謝料・逸失利益)を除いた傷害部分(治療費・入通院慰謝料・休業損害など)だけを先に示談し、その損害賠償金をまとめて受け取ります。

後遺障害部分は、等級認定の結果が出てから改めて示談交渉します。

ただし傷害部分だけの先行示談は保険会社に足元を見られやすく、相場より低い金額を提示されることも少なくありません。

弁護士に交渉を依頼すれば、このデメリットを抑えられます。

③民事保全手続(仮払い仮処分)で法的に請求する

最終手段として、裁判所に仮払い仮処分を申し立てる方法もあります。

民事保全法にもとづき、裁判所が加害者に一時的な支払いを命じる制度です。

治療費や休業損害など緊急性の高い費目は認められやすい一方、慰謝料や逸失利益は対象になりにくい傾向があります。

ただし認められるハードルは極めて高く、実務ではほとんど使われません

裁判所は「勝訴が確実で、かつ生活が困窮している」ケースに限って認める傾向があるためです。

手続きも専門的なため、現実的には、まず自賠責の仮渡金や任意保険会社との交渉を検討するのが先決です。

交通事故の慰謝料の先払い交渉や請求は弁護士への相談がおすすめ

交通事故の先払い交渉や請求は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

先払いはどの方法も保険会社との交渉や煩雑な書類手続を伴い、被害者が自分で対応すると、内払いを拒否されたり金額を低く抑えられたりするリスクがあるためです。

弁護士に相談・依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 保険会社との交渉を全面的に代行してもらえる
  • 被害者請求などの必要書類の準備・作成をサポートしてもらえる
  • 先払いを拒否されたときにも、適切な対処法を提案してもらえる
  • 民事保全手続などの複雑な手続きにも対応してもらえる
  • 最終的な示談金を弁護士基準で増額できる可能性が高まる

なかでも、弁護士基準の適用による示談金の増額は、弁護士に依頼する大きなメリットです。

弁護士に依頼すると慰謝料・示談金の増額が見込める

弁護士に依頼すると、 3つの基準のなかで最も高額な「弁護士基準」で慰謝料を算定して交渉できます。

たとえば、むちうちで6か月通院した場合の入通院慰謝料を比べてみます。

自賠責基準では、実通院日数によって約51万6,000円(実通院60日)から77万4,000円(上限)の範囲です。

一方、弁護士基準では89万円が目安となり、自賠責基準より高くなります。

同じ通院期間でも、弁護士基準と任意保険基準では数十万円の差がつきます。

重傷を負ったり後遺症が残ったりしたケースでは、数百万円以上の差が生じることもあります。

弁護士を立てれば、先払い金の返金リスクを抑えながら、最終的な示談金の増額が期待できます。

ご自身の保険に弁護士費用特約が付帯していれば、多くの場合は自己負担0円で依頼できるため、まずは相談から始めてみてください。

慰謝料の先払い請求に強い弁護士を探すなら「ベンナビ交通事故」

弁護士に相談したいけれど、どこに頼めばいいかわからないという方には、ベンナビ交通事故の利用がおすすめです。

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「先払い交渉がうまくいかない」「示談金を少しでも増やしたい」「どの方法を選ぶべきか相談したい」など、交通事故に関する悩みがあれば、まずは無料相談から始めてみてください。

生活費や治療費の不安を抱えたまま一人で悩むよりも、早めに専門家の力を借りるほうが、適切な先払いと十分な示談金につながる可能性が高まります。

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交通事故の慰謝料の先払いに関するよくある質問

ここでは、交通事故の慰謝料の先払いに関するよくある疑問にお答えします。

手続きを進める前の不安を解消しておきましょう。

Q1. 交通事故の慰謝料は誰が払うの?

交通事故の慰謝料は、原則として加害者が支払います

ただし実際には、加害者が加入している任意保険会社が示談交渉や支払いを代行するのが一般的です。

加害者が任意保険に未加入の場合は、次の順序で請求先を検討します。

  1. 加害者の自賠責保険会社(被害者請求)
  2. 加害者本人(直接請求)

なお、加害者が業務中に起こした事故の場合は、勤務先の会社に使用者責任を追及できる可能性もあります。

Q2. 加害者が任意保険未加入でも先払いしてもらえる?

加害者が任意保険に未加入でも、先払いを受ける方法はあります

  • 自賠責保険の仮渡金:けがの程度に応じて5万〜290万円を短期間で受け取れる
  • 自賠責保険への被害者請求:限度額内でまとめて受け取れる
  • 自分の人身傷害保険:自分の任意保険から補償を受けられる

ただし自賠責の限度額を超える損害は加害者本人に直接請求する必要があり、加害者に支払い能力がないと回収が難しいケースもあります。

早めに弁護士へ相談すると安心です。

Q3. 過失割合が9対1のような場合でも先払い請求できる?

過失割合があっても、先払い請求自体は可能です。

ただし、どの方法を使うかで扱いが変わります。

任意保険会社への内払いは、過失割合に争いがある段階では応じてもらえない傾向があります。

また最終的な示談金は過失相殺で減額されるため、先払いで受け取った金額が最終示談金を上回り、差額の返金が必要になることもあります。

一方、自賠責保険の仮渡金や被害者請求は、被害者保護の制度であるため、被害者に重大な過失(7割以上の過失)がない限り、過失による減額はされません。

ただし7割以上の過失がある場合は、重過失減額を受けます。

減額割合は、傷害分は一律2割、後遺障害・死亡分は過失の程度に応じて2割から5割です。

ご質問のように過失が9割のケースでは、傷害分が2割、後遺障害・死亡分は5割の減額になります。

過失割合で争いがあるケースでは、どの方法を選ぶかで受け取れる額が変わるため、早めに弁護士へ相談すると安心です。

Q4. 整骨院に通院中でも先払いの対象になる?

整骨院での施術費用も、医師の指示や同意があれば先払いの対象になる可能性があります

ただし、次の点に注意が必要です。

  • 原則として、整形外科にも併せて通院することが求められる
  • 医師の同意なく整骨院だけに通うと、治療費を打ち切られるおそれがある
  • 整骨院のみの通院では、慰謝料が減額される可能性がある

整骨院への通院を検討する場合は、まず整形外科の医師に相談し、同意を得てから併用する形にしてください。

Q5. 先払いで受け取った金額は返金することになる?

先払いで受け取った金額が、最終的な示談金や損害賠償金を下回る場合は、返金の必要はありません

最終示談金から先払い分を差し引いた残額が支払われます。

一方、次のケースでは返金が発生する可能性があります。

  1. 仮渡金の金額が、最終的な自賠責保険からの補償額を上回ったとき
  2. 仮渡金と内払いの合計が、最終示談金を上回ったとき

返金リスクを抑えるには、弁護士を立てて弁護士基準で示談金を増額し、先払いの合計を上回るようにするのが有効です。

Q6. 弁護士費用は先払いで受け取ったお金から払える?

弁護士費用は最終的な示談金から支払うのが一般的で、先払い金からすぐに支払う必要はありません

弁護士費用の支払いパターンには、主に次の3つがあります。

  • 弁護士費用特約:自分の任意保険から弁護士費用が支払われ、自己負担0円
  • 完全成功報酬制:着手金0円で、最終示談金から成功報酬を支払う
  • 後払い制:示談金が振り込まれた後に弁護士費用を精算

多くの交通事故専門の法律事務所では初回相談無料・着手金0円のプランを用意しているため、手元に資金がなくても、先払い金を取り崩すことなく依頼できるケースが多くあります。

弁護士費用特約の有無は、自分の任意保険の契約内容で確認できます。

まとめ|慰謝料の先払いは弁護士に相談し生活の不安なく治療に専念しよう

交通事故の慰謝料は原則として示談成立後に支払われ、示談までには通常 6か月から1年かかります。

生活費や治療費の不安を抱えたまま治療に専念するのは難しいため、次の3つの先払い方法を活用してください。

  • ①内払い:加害者の任意保険から先払い(最も一般的、請求後2〜4週間)
  • ②仮渡金:自賠責から定額を短期間で受け取れる(請求後約1週間)
  • ③被害者請求:自賠責に直接請求(請求後1〜2か月)

最適な方法は、加害者の任意保険加入の有無やけがの程度、緊急性によって変わります

また先払いを受けた後の示談交渉で弁護士基準を適用できないと、返金リスクが生じたり受取額が少なくなったりすることもあります。

自分に合った方法の選択から保険会社との交渉、書類準備まで任せられるのが弁護士です。

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この記事の監修者

富永 慎太朗 (福岡県弁護士会)

ご相談者様のお話をしっかりと伺い、豊富な実績を活かし最適な解決策を提案しています。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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