交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
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交通事故の加害者と示談が成立しない場合には、訴訟手続きに移行します。
このときに気になるのが「裁判費用」ではないでしょうか。
訴訟について詳しいことがわからない方であれば、「訴訟をすると何十万円もかかってしまうのではないだろうか…」と不安になってしまうかもしれません。
そこで本記事では、交通事故の裁判費用について、どういった内訳になるのか、裁判費用例を紹介します。
また、裁判費用を抑えるポイントはどういったものがあるのかについても解説します。
これから交通事故の裁判を検討している方は参考にしてください。
交通事故の裁判費用として支払うものの内訳は以下のとおりです。
ここでは、上記4つの内容とそれぞれどれくらいの費用が発生するかを確認していきます。
裁判を提起する場合、申立て手数料を裁判所に納めます。
金額は請求する損害賠償の金額区分によって異なっています。
具体的な金額は、次の表のとおりです。
100万円までの部分 |
10万円までごとに1,000円 |
100万円を超え500万円までの部分 |
20万円までごとに1,000円 |
500万円を超え1,000万円までの部分 |
50万円までごとに2,000円 |
1,000万円を超え10億円までの部分 |
100万円までごとに3,000円 |
注意すべきなのは、金額ごとに区切られているという点です。
仮に請求する損害賠償額が400万円だった場合、100万円までの部分の1万円に加え(1,000円×10)、100万円を超え400万円までの部分の1万5,000円(1,000円×15)の合計2万5,000円が申立て手数料となります。
請求する金額別に申立て費用の例を挙げると、次のとおりです。
請求する損害賠償金額 |
申立て手数料 |
計算 |
50万円の場合 |
5,000円 |
1,000円×5 |
500万円の場合 |
3万円 |
1万円+1,000円×20 |
1,000万円の場合 |
5万円 |
1万円+3万円+1,000円×10円 |
5,000万円の場合 |
17万円 |
5万円+3,000円×40 |
1億円の場合 |
32万円 |
5万円+3,000円×90 |
なお、控訴の提起には申立て手数料は上記の1.5倍、上告の場合は上記の2倍の金額が必要となります。
申立て手数料は、訴状・申立書に収入印紙を貼付して支払います。
郵便切手代は、予納郵券として支払います。
裁判所からの訴状を加害者などに対して送付することなどに使用されます。
郵便切手代は裁判所によって異なりますが、訴訟相手が1名の場合は5,000円程度、1人増えるごとに2,000円程度ずつ増えるのが通常です。
郵便切手代は、訴状や申立書の提出と同時に切手で納めるか、窓口納付や銀行振り込み、電子納付などの現金で納めます。
訴訟をする際には、申立て手続きや請求する損害賠償額の算出などが必要となります。
これを個人でおこなうのは困難ですので、弁護士に依頼することが多くなります。
弁護士に依頼すると、弁護士費用が発生します。
弁護士の費用体系や料金は事務所によってさまざまですが、2004年以前の弁護士費用が自由化される前の旧日弁連基準が一応の目安になるでしょう。
旧日弁連基準では、弁護士報酬を着手金と報酬金に分けていて、次のように定められています。
経済的利益 |
着手金 |
報酬金 |
300万円以下 |
経済的利益の8% |
経済的利益の16% |
300万円を超え3,000万円以下 |
経済的利益の5%+9万円 |
経済的利益の10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下 |
経済的利益の3%+69万円 |
経済的利益の6%+138万円 |
3億円超え |
経済的利益の2%+369万円 |
経済的利益の4%+738万円 |
上記の表にある経済的利益とは、一般的に訴訟によって獲得できた損害賠償額の増加分のことをいいます。
たとえば、示談で提示されていた損害賠償額が1,000万円で、訴訟で獲得できた損害賠償額が3,000万円だった場合、経済的利益は2,000万円です。
どのような料金体系なのか、具体的な弁護士費用はいくらなのかについては、法律事務所によって異なるので、詳しくは直接問い合わせましょう。
裁判では、損害が発生したことを証明するために、書類などを提出しなければなりません。
したがって、それらを取り寄せるための実費が必要になります。
具体的なものとしては、怪我の診断書、後遺障害診断書、休業損害証明書、源泉徴収票などが挙げられます。
では実際に、交通事故の裁判費用をシュミレーションしてみましょう。
ここでは次のようなケースにおける、裁判費用を見ていきます。
請求する損害賠償金額 |
5,500万円 |
経済的利益 |
2,500万円 |
請求相手 |
1人 |
上記の場合に、必要になる裁判費用は次のとおりです。
ただし、これはあくまでも一例ですので、個別のケースについては弁護士に相談してください。
申立て手数料 |
18万5,000円 |
郵便切手代 |
5,000円 |
弁護士費用 |
402万円 |
その他費用 |
1万円 |
合計 |
|
422万円 |
この場合の裁判費用は、合計422万円になります。
では、実際に起こった交通事故の裁判例について見ていきましょう。
事故の概要 |
被害者は原動機付自転車を運転中、対向してきた加害者の軽自動車と正面衝突しました。 事故により、右大腿骨骨折、右膝内出血、下腿の筋断裂などのケガを負いました。 その結果、右膝関節の機能障害が残りました。 後遺障害は9級~10級相当です。 |
争点 |
被害者は後遺障害のために音楽と書道の家庭教師業務を継続することができなくなりました。 交通事故の場合でも労働災害における基準どおりの労働能力喪失率となるのか、争われました。 |
判決 |
労働能力喪失率90%と認定されました。 |
【参考元】最高裁判所 昭和48年11月16日判決 事件番号昭和47年(オ)第734号
労働能力の低下については、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)別表1「労働能力喪失率表」を参考に、障害の部位・程度や被害者の職業などを総合して判断されます。
後遺障害によりどの程度労働能力が失われたかを示した割合である「労働能力喪失率」は、後遺障害の等級ごとに割合が定められています。
逸失利益を算定するにあたって労働能力喪失率表は有力な資料となります。
しかし、この基準は労働災害における基準を準用したものです。
実際には上記判例のとおり、被害者の属性や後遺症の程度などを総合的に考慮して、実態に即した割合を求めることが重要になります。
つまり、具体的事情によっては、労働能力喪失率表記載の労働能力喪失割合を超える逸失利益を請求できる場合があります。
この判例では、労働能力喪失率が通常35%~27%であるところ、被害者の職業を勘案して労働能力喪失率90%が認められました。
結果、被害者が得られる賠償金の額が大幅に増額されました。
事故の概要 |
当時10歳の女児が、無免許運転の自動3輪車に衝突され、顔面口角から顎下にかけて7センチの裂傷を負いました。 将来にわたって除去不能な傷跡と、顔面三叉神経の麻痺が残りました。 |
争点 |
女児の母親は加害者に対して、女児だけでなく、自身にも固有の慰謝料を支払うよう求めました。 |
判決 |
女児の母親にも固有の慰謝料が認められました。 |
【参考元】最高裁判所 昭和33年8月5日判決 事件番号 昭和31年(オ)第215号
傷害事故の場合、原則として慰謝料の請求は事故に遭った本人(上記判例でいえば被害者の女児)に認められます。
しかし、上記判例では、直接事故に遭っていない被害者の母親にも固有の慰謝料が認められました。
上記判例によると、近親者が被害者死亡の場合と比肩する(同じ程度の)精神上の苦痛を受けたときは、固有の慰謝料が認められると判断しました。
事故の概要 |
女児2名を後部座席に乗せた被害者車両の後方から、加害者車両が追突したという事故です。 |
争点 |
被害者側弁護士は、事故態様を考慮して通常の相場よりも高い基準での慰謝料の支払いを求めました。 |
判決 |
慰謝料の増額を認めました。 |
【参考元】東京地方裁判所 平成15年7月24日判決 事件番号 平成14年(ワ)第22987号
東名高速飲酒運転事故として有名な損害賠償請求事件です。
被害者の女児2名は事故直後まだ生きており、その後の車両火災によって意識を保ったまま焼死するという凄惨な最期を遂げています。
事件当時は危険運転致死傷罪はなく、加害者は懲役4年の実刑となりました。
事故加害者は飲酒運転が常態化し、直前に料金所の人から休むよう忠告されたにもかかわらず「風邪薬を飲んでいる」などと言って忠告を無視し、本件の事故を起こしました。
事故を起こした直後の対応についても、「何で止まったんだ」「急に止まるからぶつかったんだ」「まーえーじゃないか」「逃げるんじゃない、会社に電話をかけてくる」「酒なんか飲んでいねえよ、風邪薬飲んだだけだ」などと言い訳を繰り返していたそうです。
捜査段階では自己弁護の供述を繰り返し、被害者への謝罪についても手紙を送るのが事故後半年を経過してからでした。
このように、加害者が本件事故において自らのおこなった行為の重大性について真に自覚し反省していないことも考慮されました。
これら、事故の凄惨さ・悪質さ・事故直後の対応・事故後の反省の態度などの諸般の事情が勘案され、慰謝料が増額されました。
裁判にかかる費用はできるだけ抑えたいところです。
そのためのポイントを3つ解説します。
弁護士費用特約とは、自動車保険などに付帯しているオプションで、加入者本人やその家族が事故に遭って弁護士に依頼した場合の費用を、保険会社が負担してくれるもののことです。
保険会社によって異なりますが、弁護士費用は最大300万円まで、法律相談は10万円までの補償を受けられるのが一般的です。
弁護士費用特約は、自分が加入していない場合でも、以下の方が加入していた場合には適用できる可能性があります。
弁護士費用の負担を抑えるためにも、弁護士費用特約が付いているか確認しておきましょう。
なお、保険会社によっても補償範囲は異なるので注意してください。
なお、弁護士費用特約の詳しい内容は以下の関連記事を参考にしてください。
民事法律扶助とは、法テラスが実施する弁護士費用を立て替える制度のことをいいます。
立て替えてくれるのは「相談料」「着手金」「実費」などで、裁判後は月に5,000円~1万円程度の範囲で分割払いをおこないます。
仮にあなたが生活保護を受けている場合には、裁判が終了しても支払い自体を免除してくれるケースもあるので覚えておきましょう。
ただし、民事法律扶助を受けるためには、以下のような条件を満たさなければなりません。
利用するには法テラスで審査を受ける必要があり、審査に通れば個別に契約を締結します。
民事法律扶助の詳しい内容や受けるための条件、利用の流れなどは、以下の関連記事を参考にしてください。
裁判費用のうち、申立て費用などの裁判所に納める費用には、支払いを先送りできる「訴訟救助」という制度があります。
後に詳しく解説していますが、訴訟費用は基本的には敗訴者が負担します。
なお、訴訟救助の申立てをするには、訴状に印紙は貼らず、訴状と一緒に訴訟救助申立てをおこないます。
訴訟救助にも「費用を支払う資力がない」「支払うことで生活に著しい支障が生じる」「勝訴の見込みがないとはいえない」などの要件があるので注意してください。
弁護士に依頼する場合には、損害賠償請求の申立てと一緒に、訴訟救助の申立ても代理でおこなってもらえるので、その旨を伝えるようにしましょう。
上記で一部説明しましたが、裁判所に支払う「申立て手数料」「郵便切手代」も、弁護士に支払う「弁護士費用」も、加害者負担になるケースがあります。
ここではその内容を見てみましょう。
裁判所に支払う「申立て手数料」と「郵便切手代」は、民事訴訟の場合、必ず判決書で費用負担について決めています。
判決内容に応じて、原告であるあなたと被告である事故の加害者が裁判費用を負担することになります。
ただし、実務的には訴えを提起した段階でまずはあなたが全額を支払います。
そして、仮に勝訴した場合には、損害賠償金に加え、裁判費用も加害者に支払ってもらうという流れです。
弁護士費用についても、損害賠償金の一部として加害者に支払ってもらうことが可能です。
訴状には損害賠償金の項目を一覧で記載しますが、このときに弁護士費用についても記載することが可能です。
ただし、弁護士費用をそのまま負担してもらえるということではありません。
認められた損害賠償請求の10%程度が弁護士費用として請求できるのが通常です。
たとえば(弁護士費用を除く)損害賠償請求額が3,000万円だった場合、10%の300万円を「弁護士費用」として損害に加えて請求し、判決で全額認められれば、加害者から合計3,300万円の損害賠償金が支払われることになります。
ただし、弁護士費用として請求できるパーセンテージは事案によって異なるので注意してください。
ケースによっては10%よりも低いこともあります。
交通事故の損害賠償請求で加害者と示談が難航しており、裁判を検討しているのであれば弁護士に依頼することをおすすめします。
裁判をするには訴状を作成しなければなりませんし、損害が発生したことを証明する必要があり、あなた個人では困難なケースがほとんどだからです。
弁護士に依頼すれば、訴状もあなたに代わって作成してもらえます。
また、交通事故証明書・怪我の診断書・後遺障害診断書・休業損害証明書・源泉徴収票といった、損害の証明に必要な書類も代わりに収集してもらえます。
受けた被害から適切な損害賠償金額も算出してもらえて、あなた自身で訴訟するよりも手間も省けます。
そして、獲得できる損害賠償金も多くなる可能性が高まります。
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ぜひ近くの弁護士事務所に連絡し、まずは相談から始めてみてください。
裁判費用の内訳は、主に裁判所に支払う「申立て手数料」「郵便切手代」と、弁護士に支払う「弁護士費用」となっています。
弁護士費用の支払いは、弁護士費用特約や民事法律扶助を利用することで抑えられます。
また、訴訟提起段階の裁判費用を抑えるには、訴訟救助の利用を検討しましょう。
なお、裁判所に支払う費用も弁護士に支払う費用も、裁判に勝訴した場合には加害者に支払ってもらえるケースもあるので、最終的にあなたの財布を痛めることなく裁判ができる場合もあります。
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