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高次脳機能障害が後遺障害として認定されると、その症状の度合い(等級)に応じて慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求をする権利が認められます。
ただ、交通事故の慰謝料の金額は主に加害者の保険会社との話し合いで決定されるため、その際に慰謝料の相場を知らないと、慰謝料が少なく見積もられた場合に気が付けず損をしてしまう恐れもあるのでご注意ください。
この記事では高次脳機能障害で請求できる慰謝料の具体例や相場額ご紹介します。高次脳機能障害で後遺障害認定を受けられる場合は参考にしていただければ幸いです。
【関連記事】損害賠償と慰謝料の違い|示談に役立つ損害賠償請求の知識
まず、実際に裁判所で出た高次脳機能障害の損害賠償(慰謝料)の具体例をご紹介します。
※交通事故における慰謝料は損害賠償の一部です。よく混同されがちですが、慰謝料とは治療費や休業損害と同じく損害賠償の一項目として扱われます。
京都地裁平成17年12月15日:7,960万39円
項目 |
詳細 |
被害者 |
43歳、嘱託勤務、商品部にてデザイン業務 |
性別 |
男性 |
傷害の内容 |
脳挫傷,急性硬膜外血腫,頭蓋骨骨折,外傷性くも膜下出血、易怒性,記銘力低下,感情失禁,社会的適応性の障害(高次脳機能障害),外傷後てんかん発作 |
獲得等級 |
5級2号 |
休業損害 |
82万8,306円 |
入通院慰謝料 |
120万円 |
後遺障害慰謝料 |
1,700万円 |
逸失利益 |
4,596万8,996円 |
将来の介助費用 |
1,460万2,737円 |
札幌高裁平成18年5月26日:1億785万9,619円
項目 |
詳細 |
被害者 |
高校1年生、15歳 |
性別 |
女性 |
傷害の内容 |
集中力の低下,記銘力,記憶障害 |
獲得等級 |
3級3号 |
入通院慰謝料 |
190万円 |
後遺障害慰謝料 |
1,990万円 |
逸失利益 |
8,605万9,619円 |
交通事故の慰謝料には3つの算出基準があり、どの基準が適用されるかによって慰謝料の金額が変わってきます。慰謝料の金額は『弁護士基準』任意保険基準>自賠責基準』で弁護士基準が最も高額です。
交通事故の慰謝料を決める3つの基準 |
|
自賠責基準 |
交通事故により負傷した被害者に対して、法令で決められた最低限の補償を行うことを目的とした基準。 |
任意保険基準 |
自動車保険会社が独自に設けている基準。自賠責基準よりも多くの保障が受けられる。 |
裁判所の判例などを参考にした基準。自賠責基準や任意保険基準よりも高額な慰謝料が設定されることが多い。 |
弁護士基準は慰謝料請求を弁護士に依頼した場合に適用される基準です。高次脳機能障害が後遺障害認定されている状況であれば、弁護士費用を差し引いても他の基準との差額が大きいので、弁護士依頼をした方がお得になる可能性が高いでしょう。
なお、上記で紹介した慰謝料の具体例も弁護士基準で算出されています。
高次脳機能障害で請求できる慰謝料には、『入通院慰謝料』と『後遺障害慰謝料』の2種類があります。以下では上記で紹介した各基準の相場額をご紹介します。
高次脳機能障害で請求できる2つの慰謝料 |
|
入通院慰謝料 |
交通事故によって入通院が必要な状態になった精神的苦痛に対して請求できる慰謝料 |
後遺障害慰謝料 |
交通事故によって後遺症を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料 |
入通院慰謝料の金額は実際に入通院をした日数によって決定されます。
日数 |
自賠責基準 |
任意保険基準 |
弁護士基準 |
3ヵ月間の通院 |
25万8,000円 (25万2,000円) |
37.8万円 |
73万円 |
6ヵ月間の通院 |
51万6,000円 (50万4,000円) |
64.2万円 |
116万円 |
1ヵ月間の入院 |
8万6,000円 (8万4,000円) |
25.2万円 |
53万円 |
※1:初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。
入通院慰謝料は各基準によって算出方法が異なるので、日数の例をいくつか挙げて相場額を紹介させて頂きました。
後遺障害慰謝料の金額は後遺障害の等級によって決定されます。
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
高次脳機能障害は9級から認定されるケースが多いです。9級でも弁護士基準と他の基準では約300万円もの差額が生じるので、後遺障害慰謝料だけを見ても弁護士依頼をした方がお得になりやすいのがお分かり頂けるかと思います。
高次脳機能障害で請求できる慰謝料は『入通院慰謝料』と『後遺障害慰謝料』の2種類で、『自賠責基準』と『任意保険基準』と『弁護士基準』の3種類の算出基準が存在します。
慰謝料が高額になりやすい高次脳機能障害を負っている状態であれば、弁護士費用を差し引いても弁護士を雇った方が受け取れる慰謝料が増額する可能性が高いので、示談の前に弁護士相談だけでも検討されてみてはいかがでしょうか。
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