交通事故の治療費の請求方法|請求範囲・治療費打ち切りの対処法

交通事故の怪我の治療費は、加害者の保険会社や自賠責保険に請求できます。ただ、加害者の任意保険会社がこちらの請求に必ず応じてくれるわけではありません。場合によっては交渉が必要になることもあります。
また自賠責保険に治療費を請求する際も、しかるべき手続きが必要になります。手続きに手間取ってしまうような場合は、その分だけ治療費の負担に悩むことになります。
この記事では、交通事故の治療費の請求方法や請求時のポイント、治療費として請求できる費用とできない費用などを説明します。
交通事故の治療費の請求方法
交通事故の治療費は、怪我を治療して症状固定などを待ってから損害を確定し、示談交渉をした後に払われるのが基本的な流れです。交通事故の怪我が重いほど治療費が多く必要になりますので、被害者の生活や治療継続に影響を与えかねません。
損害確定前に治療費を払ってもらう方法は3つあります。治療費の請求で困っている方は参考にしてください。
相手方の任意保険会社に請求する
治療費の請求方法として代表的なものに、加害者の任意保険会社に請求するという方法があります。
交通事故の場合、基本的に任意保険会社に連絡すれば、被害者が治療費の支払いをしなくていいように担当者が手続きを進めてくれます。ただし、任意保険会社が休みの日に事故にあって治療費の支払いが必要になった場合などは、被害者側が治療費を立て替え払いして、後から任意保険会社に請求することもあります。
また交通事故による怪我であることを伝えれば、治療費の支払いを一端保留にしてくれる病院もあるため、病院を受診した際は「交通事故による怪我であること」「任意保険会社の対応待ちであること」を伝えて、支払いについて確認を取っておくのもよいでしょう。
なかには「一旦は被害者の方で立て替えてもらって、後から請求してください」という任意保険会社もありますが、このようなケースでは任意保険会社と費用の内容などで揉める可能性もあります。
もし任意保険会社が立て替え払いを要求してきた場合は、任意保険会社の方で支払い対応をしてくれるよう、早い段階で交渉する必要があります。自身での交渉が難しければ、交通事故対応に注力している弁護士に依頼することをおすすめします。
相手方の自賠責保険に請求する
交通事故の加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者の自賠責保険に治療費を請求することも可能です。これは仮渡金請求と呼ばれる方法です。
仮渡金として支払われるのは、政令で定められた額になります。請求が認められると、怪我などの状況によって5万円・20万円・40万円のどれかが支払われます。
なお、仮渡金請求で支払われる治療費は「賠償金の先払い」としての性質を持っている点に注意が必要です。仮渡金請求で支払ってもらった金額は、後ほど賠償金から引かれます。
自身の人身傷害保険を利用する
被害者が加入している人身傷害保険などを利用して保険金を受け取る方法もあります。被害者の加入する任意保険の特約として設定されていることが多いため、まずは人身傷害保険(特約)の有無について、自身の加入する任意保険会社に確認しましょう。
また被害者家族が加入する保険であっても利用できる場合もあるため、家族の加入状況なども確認する必要があります。
自賠責保険と人身傷害保険は、一般的にはどちらか片方を利用するかたちになります。相手の保険会社が対応してくれない場合には、自身の保険会社と相談して人身傷害保険が利用できるか相談しましょう。
交通事故の治療費として請求できる費用・できない費用
ここでは、交通事故の治療費としてどこまで請求できるのか解説します。
請求できる費用
交通事故の治療費として請求できるのは、交通事故の怪我の治療に必要な費用だけです。
たとえば病院での初診再診費用・処方箋料・検査費用・投薬注射費用などは怪我の治療のために必要な費用であるため、交通事故の治療費として請求できます。
このほかに整骨院や接骨院の費用なども、医師に相談したうえで施術を受けているなどの条件をみたしていれば請求可能です。
請求できない費用
交通事故と因果関係のない費用は請求できません。
たとえば交通事故前から別の病気を患っていたとします。この場合、別の病気は交通事故と因果関係がないため、交通事故の怪我の治療費として請求することはできません。
さらに過剰に長い治療をおこなった場合の治療費や、ヨガやヒーリングといった民間療法などの費用なども基本的には請求できません。ただし通院期間が長くても、治療行為と交通事故について、明確な因果関係があることを証明できる場合には請求できます。
交通事故の治療費を請求する際に知っておきたいポイント
交通事故の治療費を請求する際は、以下3つのポイントに注意しましょう。
「症状固定」と診断された後の治療費は請求できない
治療費の請求ができるのは「治癒」または「症状固定」と診断されるまでです。症状固定後に治療を受けても治療費の請求はできないため注意してください。
症状固定とは「これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない状態」のことです。どの時点で症状固定と判断するかは、医師の判断と被害者の治療状況によって変わります。
交通事故の治療でも健康保険は利用できる
交通事故の怪我の治療でも、健康保険は利用可能です。現在は多くの治療法や薬が健康保険の対象になっており、健康保険の範囲内でも適切な治療を受けられるケースがほとんどです。
健康保険を利用するメリット
交通事故の怪我の治療に健康保険を使うことには2つのメリットがあります。
まず被害者が治療費を立て替える際の費用負担が軽減されるという点、そして被害者の過失割合が大きいケースでは自己負担額が軽減されるという点などがメリットとして挙げられます。
相手から治療費の打ち切りを打診されることがある
交通事故の怪我の治療期間が長引くと、加害者や加害者の任意保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。ここでは治療費の打ち切りを打診される期間の目安や、打ち切り時の対応などを解説します。
打ち切り期間の目安
治療費の打ち切りを打診されるまでの期間目安は、怪我によって異なります。たとえば打撲は1~3ヶ月ほど、むち打ちは3~6ヶ月ほどが目安になっています。
このほかにも、治療を怠っている場合は治療費の打ち切りを打診される可能性もあります。たとえば治療から治療までの間が1ヶ月ほど空いてしまうと「交通事故の怪我と因果関係のない治療である」と判断されて治療費の支払いを否定されることがあります。
打ち切られた場合の対応
治療費を打ち切られたときの対応は2つです。
まず、自己判断で怪我の治療をやめないことが重要です。任意保険会社などはあくまで怪我ごとの治療期間の目安から考えて治療費の打ち切りを打診しますので、医師の判断ではまだ治療が必要なケースもあります。自己判断で治療はやめず、しっかりと怪我の治療に努めることが重要です。
もうひとつは、治療費を打ち切られたからといって即座に示談交渉に応じないことです。示談交渉は基本的に損害が確定してから行うものであり、一度交渉成立させてしまうと後からやり直しできません。追加で条件を出すこともできないため、焦って対応してしまうと十分な賠償を得られない可能性があります。
交通事故の対応で不安な方は弁護士に相談
治療費について不安な方や治療費の打ち切りで困っている方などは、弁護士に対応を依頼するのがおすすめです。以下では弁護士に依頼するメリットを解説します。
治療費の打ち切りについて交渉してもらえる
弁護士に交通事故の治療費の対応を任せれば、もし治療費を打ち切られても任意保険会社側と交渉してくれます。弁護士が交渉した結果、任意保険会社が治療費の打ち切りを撤回する可能性もあるのです。
弁護士に一任することで、適切なときに適切なタイミングで、被害者側の立場に立って交渉してもらえるというメリットがあります。
慰謝料が増額することがある
弁護士に交通事故対応を任せることで慰謝料などの賠償金が増額する可能性があります。
慰謝料などの計算方法には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つの基準があり、任意保険会社は任意保険基準で算出します。
弁護士は3つの基準の中で最も慰謝料などが高額になる弁護士基準で計算するため、任意保険会社の提示条件より弁護士の計算結果の方が被害者側に有利になる可能性が高いのです。
怪我の治療に専念できる
弁護士に交通事故の対応を一任すれば、被害者は加害者の保険会社との連絡や各種手続きから解放されます。被害者は手続きや交渉などに追われることなく、怪我の治療に専念できます。
まとめ
交通事故の状況や保険の加入状況などによって選択できる請求方法は異なるため、治療費の請求にあたっては状況に応じた判断が必要となります。
もし治療費について不安なことがある場合には、早めに弁護士に相談して不安解消をはかることをおすすめします。
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特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
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