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交通事故の損害賠償とは?請求できるお金の種類・計算方法と慰謝料の相場を解説

松島 達弥 弁護士
監修記事
交通事故の損害賠償の基礎知識

交通事故の被害に遭った場合、その被害の程度や精神的苦痛に応じた損害賠償請求ができます。

しかし、損害賠償請求ができる項目や相場を知らないと、加害者側の保険会社の提示金額を鵜呑みにしてしまい適正な金額の賠償を受けられない恐れがあります。

本記事では、損害賠償額の相場や請求方法、請求できる賠償項目など、交通事故の被害者が知っておくべき基礎知識を解説します。

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交通事故の損害賠償とは?

交通事故の損害賠償とは、どのようなものなのでしょうか。

まずは、交通事故における損害賠償請求の基本について確認していきましょう。

交通事故による損害を加害者が補填すること

交通事故の損害賠償とは、交通事故を原因とする損害・被害について、加害者に金銭的に賠償してもらうことを意味します。

民法第709条が法律上の根拠であり、損害賠償について以下のように規定されています。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法第709条

この法律に基づいて、交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することになります。

そして、被害者が損害を請求すると、損害賠償金として、損害賠償の項目に該当する金銭が受け取れます。

損害賠償を支払う義務を負う者

損害賠償の請求の相手方は、法的に損害賠償義務を負う人物や法人等(会社等)となります。

まず、最も基本的な請求の相手方は、加害者(運転者)本人です。

しかし、状況によっては、加害者本人以外の関係者に対する損害賠償請求が認められる場合もあります。

具体的には、以下のような人物が該当します。

加害者死亡時の相続人

加害者が事故後に死亡しているような場合には、原則として相続人が賠償義務を承継します。

加害者が勤務中に事故を起こした場合の使用者

加害者が、勤務中に事故を起こした場合には、原則として、その使用者(会社等の勤務先)が、民法715条に基づいて加害者本人と連帯して賠償責任を負う事になります。

加害者の運行供用者

自己のために自動車を運行の用に供する者は、自分自身が運転者でない場合でも、その運行によって加害者が事故を起こし、他人の生命又は身体を害したときに、自動車損害賠償保障法第3条に基づいて、賠償責任を負います。

加害者が未成年者の場合の親

事故の加害者が未成年の場合、その加害者が不法行為責任能力を負えない程に若年である場合には、民法714条1項に基づいて監護義務者である親等が賠償義務を負います。

また、未成年者が不法行為責任を負うことが可能な程度に成長している場合であっても、例外的に親権者の監督義務違反という観点から、親権者に対する賠償請求が認められることがあります。

損害賠償金は算定基準によって大きく変わる

慰謝料の支払基準には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあり、適用される基準によって損害賠償の算定額は大きく変わります。

各基準の内容は、以下のとおりです。

  • 自賠責基準:自賠責保険が慰謝料を算定するときの計算基準
  • 任意保険基準:任意保険会社が使用している基準
  • 弁護士基準:裁判所の判例を基にした算定基準

支払い基準ごとの慰謝料額は「自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準」という関係になっており、弁護士基準で請求するのが最も高額です。

実際、弁護士基準で請求内容を見直すことで、保険会社の提示する慰謝料額を2倍以上増額できるケースもあります。

被害者の立場に立っていえば、弁護士基準での回収を目指すことが重要です。

交通事故の損害の種類に応じた分類

交通事故による実損害は、主に「物的損害」と「人身損害」の2つに分類され、ここではそれぞれの特徴について詳しく説明します。

物的損害

交通事故により、自動車が壊れた、携帯電話等の携行品が壊れたというような物が損壊した場合を「物的損害」といいます。

人身損害

交通事故により、被害者の方が怪我をしたり、命を落とした場合を「人身損害」といいます。

そして、人身損害は主に以下の3つに分けることができます。

  1. 被害者の方が怪我をした
  2. 被害者の方に後遺傷害が残った
  3. 被害者の方が死亡した

この結果に応じて、請求できる損害項目はそれぞれ異なります。

例えば、治療を続けたけれども後遺傷害が残ってしまった場合であれば、①と②に関する損害項目が請求できます。

「治療の甲斐なく死亡してしまった」という事案であれば①と③に関する損害項目が請求できます。

そして、①から③のそれぞれの項目ごとに、損害額の計算方法や計算基準などによって回収できる金額が異なります。

そのため正しい情報を知らなければ、過小な基準で算定された条件で解決してしまい損をすることがあります。

交通事故の損害賠償として請求できる項目

交通事故に遭った場合は、被害の種類・程度に応じて以下のような損害の賠償を請求できます。

分類 概要
人身損害のうち、経済的な損害 交通事故で失われた財産上の損害のこと。
実際に支出が生じたことによる「積極損害」と、将来得られるはずだった利益が失われたことによる「消極損害」に分けられる。
人身損害のうち精神的・肉体的損害 受傷したことによる傷害慰謝料、後遺障害が残存したことによる後遺障害慰謝料、死亡した場合の死亡慰謝料、遺族や親族の付随的な慰謝料がある。
物的損害 交通事故で物が損壊したことによる損害のこと

ここでは、交通事故で怪我を負ったケース、後遺症が残ったケース、死亡したケースに分けて、加害者に請求できる損害賠償項目を解説します。

怪我を負ったケース

交通事故で怪我を負った場合は、以下のような損害賠償を請求できます。

分類 具体例 補足
財産的損害 治療費・通院交通費・休業損害・付添看護費など 原則として支払った費用の全額を請求できる
肉体的・精神的損害 入通院慰謝料 入院・通院で生じた精神的苦痛を補償するもの

怪我を負った場合の損害賠償項目のなかで、金額が大きく変動しやすいのは入通院慰謝料です。

例えば、弁護士基準では重症の場合と軽症の場合に分けて、入院期間・通院期間を踏まえながら請求額を決めていきます。

そのため、入通院慰謝料で損しないためには、事故後すぐに診察を受け、医師の指示に従い、適切に入院・通院することが重要です。

保険会社から治療費打ち切りの打診があったとしても、安易に同意せず、医師と相談したうえで適切に治療を継続してください。

後遺症が残ったケース

交通事故で後遺症が残った場合は、以下のような損害賠償を請求できます。

分類 具体例 補足
財産的損害 治療費・通院交通費・休業損害・付添看護費
+後遺障害逸失利益など
逸失利益は労働能力の低下による将来的な減収分を補償するもの
肉体的・精神的損害 入通院慰謝料
+後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は後遺症が残ったことによって生じた精神的苦痛を補償するもの

後遺症が残った場合の損害賠償請求で重要になるのが、後遺障害等級認定です。

後遺障害等級認定とは、交通事故による後遺症が後遺障害として正式に認められたことを示すもので、1級から14級に分類されます。

等級次第で後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料の金額が大きく変動するため、弁護士とも相談しながら、適切に申請手続きを進めるようにしてください。

死亡したケース

交通事故の被害者が死亡した場合は、以下のような損害賠償を請求できます。

分類 具体例 補足
財産的損害 死亡までに要した治療費・通院交通費・休業損害・付添看護費
+葬儀費用・死亡逸失利益など
請求できる葬儀費用は事案によって異なる。
肉体的・精神的損害 入通院慰謝料(死亡までに入通院していた場合)
+死亡慰謝料
死亡慰謝料は死亡した本人や遺族が受けた精神的苦痛を補填するもの

被害者の年齢や収入などにもよりますが、死亡逸失利益・死亡慰謝料は高額になるケースがほとんどです。

弁護士が介入するかどうかで、受け取れる金額に数百万円以上の差が出ることもあります。

また、葬儀や行政手続きに追われ、精神的にも不安定な状況のなか、遺族が自力で損害賠償請求を進めていくのは困難です。

少しでも多くの損害賠償を受け取りたいのであれば、弁護士のサポートは必要不可欠といえます。

交通事故における損害賠償金の正しい計算方法と相場

損害賠償のうち各種慰謝料、休業損害、後遺障害逸失利益・死亡逸失利益などは高額になりますが、計算方法や支払い基準などによって請求できる金額が異なります。

ここでは、それぞれの損害賠償金の正しい計算方法と相場について確認しましょう。

慰謝料の計算方法

入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料のそれぞれの計算方法を確認しましょう。

入通院慰謝料

入通院慰謝料の計算方法は、自賠責基準の場合と、任意保険基準や弁護士基準の場合で異なります。

自賠責基準で計算する場合、以下のいずれかのうち「低い金額」が適用されます。

自賠責基準での入通院慰謝料の計算方法
4,300円×入通院期間 4,300円×(実入通院日数×2)

※ただし、自賠責保険の場合、治療費、休業損害と併せて120万円が上限となります(過失があまりに大きい場合には120万円という上限額自体が減額されます。)。

一方、任意保険基準と弁護士基準でも、入通院期間や実通院日数に応じて慰謝料額を計算します。

また、弁護士基準では「通常の怪我の場合」と「むちうちなどの場合」で別の基準が設けられています。

以下の表を参考に慰謝料額を計算しましょう。

下記の表で任意保険会社基準について(推定)とあるのは、あくまでも、多くの任意保険会社がこの数字を提示してくることが多いという意味だと理解してください。

また、実際の整形外科通院回数が少ないような場合には、下記の表を大きく下回る金額を提示される可能性もあります。

【任意保険基準による入通院慰謝料額(推定)単位は万円】

任意保険基準による入通院慰謝料額

弁護士基準では、下記の表を参考に入通院慰謝料の算定がおこなわれます。

しかし、実通院回数が少ない場合には、通院期間を基礎とした計算どおりに慰謝料額が算定されず、より少額な慰謝料しか認定されない場合があるので注意が必要です。

【弁護士基準による通常の入通院慰謝料額(万円)】

弁護士基準による通常の入通院慰謝料額

【弁護士基準によるむちうちなどの場合の入通院慰謝料額(万円)】

弁護士基準によるむちうちなどの場合の入通院慰謝料額

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料の場合は、入通院慰謝料のような複雑な計算は不要です。

後遺障害の等級(症状の種類や重さ)によって慰謝料額が決められているため、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求すればよいでしょう。

後遺障害等級ごとの自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の慰謝料額は以下のとおりです。

下記の表で任意保険会社基準について(推定)とあるのは、あくまでも、多くの任意保険会社がこの数字を提示してくることが多いという意味だと理解してください。

なお、弁護士基準・裁判基準といっても、重度後遺障害の事案では、下記基準にとらわれず、同種事例の裁判例等を参考に、より高額な慰謝料の請求が認められる余地がないかを確認する必要があります。

等級別の後遺障害慰謝料の目安額
等級 自賠責基準
(2020年3月31日までに発生した事故)
任意保険基準(推定) 弁護士基準
第1級 1,150万円(1,100万円) 1,600万円程度 2,800万円
第2級 998万円(958万円) 1,300万円程度 2,370万円
第3級 861万円(829万円) 1,100万円程度 1,990万円
第4級 737万円(712万円) 900万円程度 1,670万円
第5級 618万円(599万円) 750万円程度 1,400万円
第6級 512万円(498万円) 600万円程度 1,180万円
第7級 419万円(409万円) 500万円程度 1,000万円
第8級 331万円(324万円) 400万円程度 830万円
第9級 249万円(245万円) 300万円程度 690万円
第10級 190万円(187万円) 200万円程度 550万円
第11級 136万円(135万円) 150万円程度 420万円
第12級 94万円(93万円) 100万円程度 290万円
第13級 57万円 60万円程度 180万円
第14級 32万円 40万円程度 110万円

死亡慰謝料

死亡慰謝料の計算方法も自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあり、適用される基準によって損害賠償の算定額は大きく変わります。

  1. 自賠責基準:自賠責保険が慰謝料を算定するときの計算基準
  2. 任意保険基準:任意保険会社が使用している基準
  3. 弁護士基準:裁判所の判例を基にした算定基準

自賠責基準では死亡した本人に対して一律400万円が支払われます。

また、被害者の父母(養父母も含む)、配偶者、子ども(養子・認知した子ども・胎児も含む)がいる場合は、人数や扶養の有無に応じて死亡慰謝料を請求できます。

遺族の人数 慰謝料額 被害者に扶養されていた場合
1人 550万円 750万円
2人 650万円 850万円
3人 750万円 950万円

一方、任意保険基準と弁護士基準では遺族の人数や扶養の有無などはあまり関係なく、死亡された方の立場によって慰謝料額の目安が設けられています。

死亡者の立場ごとの死亡慰謝料目安は以下のとおりです。

任意保険基準と弁護士基準の死亡慰謝料の目安
死亡者の立場 任意保険基準 弁護士基準
一家の支柱 1,500万円〜2,000万円程度 2,800万円程度
配偶者、母親 1,500万円〜2,000万円程度 2,500万円程度
上記以外 1,200万円〜1,500万円程度 2,000万円~2,500万円程度

なお、上記で弁護士基準を示しましたが、実際に弁護士が請求する場合には、この基準に拘束されるわけではありません。

過去の裁判例等を参考に、増額の可能性を探り、被害者の方にとって最も有利な計算方法を採用します。

休業損害の計算方法

休業損害の計算方法は、いずれの支払い基準でも「認定休業日数×収入額」で計算するのが基本です。

ただし、支払い基準によって「収入額」は異なります。

まず自賠責基準の場合は基本的に日額6,100円ですが、給与の日額が6,100円を超えることが資料などで明らかな場合は、最高で1万9,000円までの範囲で増額されます。

自賠責基準での基本的な休業損害の計算方法
認定休業日数(+有給休暇日数)×6,100円

※ただし、自賠責保険で実際に受領できる金額は①治療費②慰謝料などと合計して120万円が上限となります。

一方、弁護士基準では「1日あたりの基礎収入」を基に休業損害を計算します。

1日あたりの基礎収入額は被害者の職業によって異なり、給与所得者であれば「事故前3ヵ月間の給与」を基準として日当を計算します。

そして、算出された1日あたりの基礎収入額と認定休業日数を乗じることで、休業損害を算出することができるのです。

弁護士基準での休業損害の計算方法
認定休業日数(+有給休暇日数)×1日あたりの基礎収入額

後遺障害・死亡に伴う逸失利益の計算方法

「後遺障害・死亡に伴う逸失利益」というと言葉からはイメージがつきにくいですが、簡単にいえば、十分に働くことができなくなったことに対する将来に向けた減収分の埋め合わせを意味します。

後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の計算方法をそれぞれ確認しましょう。

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益は、もともとの労働能力の水準が1年あたりでどの程度低下するか、その状態が何年続くのかという視点で算出します。

具体的には、下記の【①×②×③】で計算します。

  1. 被害者の方の年収の基準値(一般的には、事故前年収)
  2. 労働能力の喪失率(一般的には下記の表)
  3. 労働能力喪失期間(一般的には67歳-症状固定時年齢)に対応する一定の係数(ライプニッツ係数等)
後遺障害等級ごとの労働能力喪失率表
後遺障害等級 労働能力逸失率 後遺障害等級 労働能力逸失率
第1級 100/100 第8級 45/100
第2級 100/100 第9級 35/100
第3級 100/100 第10級 27/100
第4級 92/100 第11級 20/100
第5級 79/100 第12級 14/100
第6級 67/100 第13級 9/100
第7級 56/100 第14級 5/100

それぞれに「一般的には」と記載していますが、事案によっては例外的な処理が取られる場合も多々あります。

たとえば、「①被害者の方の年収の基準値」であれば、被害者が給与所得者の場合は事故前年度の年収額を基準としますが、主婦(主夫)や子どもの場合は「賃金センサスの男女別全年齢平均賃金」を参考にすることもあるでしょう。

また、むち打ちでの14級の事案では、労働能力喪失期間が67歳までの年齢にかかわらず5年程度と限定されてしまうことが一般的です。

また、67歳を超える方について後遺障害に伴う逸失利益がみとめられないかというと決してそのようなこともありません。

被害者の方が50歳を超えているような場合には、特殊な計算方法を利用することがあります。

死亡逸失利益

死亡逸失利益

死亡事故の場合は、後遺障害の逸失利益と同様に【①×②×③】と計算しますが、ここにさらに④生活費控除率を乗じます。

  1. 被害者の方の年収の基準値(一般的には、事故前年収)
  2. 労働能力喪失率(被害者が死亡しているため、喪失率は100%)
  3. 労働能力喪失期間に対する一定の係数
  4. 生活費控除率

生活費控除率を乗じる理由は、被害者が死亡していなければ「支出」も発生しているはずなので、生活費としての支出分を調整精算する必要があるからです。

生活費控除率は被害者の性別、被扶養者の人数によって異なります。

ただし「夫婦が共働きの場合は控除率が高くなる」など、生活控除率にも例外があるため注意しましょう。

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交通事故で損害賠償金が支払われるまでの流れとタイミング

交通事故で損害賠償金が支払われるまでの流れとタイミング

交通事故が発生してから損害賠償金が支払われるまでのおおまかな流れを解説します。

また、損害賠償請求を始めるタイミングについても確認しましょう。

損害賠償金が支払われるまでの大まかな流れ

損害賠償金が支払われるまでの大まかな流れは以下のようになっています。

1.事故発生

一般的には、加害者が警察に届け出をおこない、自動車保険会社にも連絡を入れます。

事故報告を受けた保険会社は、保険契約内容や保険料支払い状況などを確認し、保険が使える場合であれば保険会社対応が始まります。

2.損害・事故原因の聴き取り

保険会社は、事故当事者からそれぞれ事故の状況を聞き取ります。

加害者側の保険会社が保険対応可能と判断した場合には、基本的に加害者側の保険会社がその後の対応をおこないます。

被害者側にも過失がある事故で、相手方への賠償のために被害者側も保険を使うような場合には、被害者側も保険会社がその後の対応をしてくれる場合があります。

しかし、被害者の過失が認められない事故(単純な追突事故等)のように、被害者側が保険を使う必要のない事故の場合は、被害者本人が加害者側の保険会社と交渉しなければなりません。

3.示談交渉

被害者側と加害者側の交渉により、被害者の損害をどのように賠償すべきか(和解の条件)を協議します。

示談交渉のタイミングは、基本的には加害者側の保険会社から被害者側に示談条件が提示されてからになります。

被害者側がその条件を受諾すれば示談はそこで終了ですが、納得いかない場合は増額交渉をおこないます。

このとき、保険会社が提示する金額は、多数の事案で弁護士基準を大きく下回るものです。

そのため、交通事故問題に詳しい弁護士に相談し、「保険会社の提示額が本当に妥当であるか」のチェックを受けることが極めて重要です。

保険会社の提示額が適正額に比べて少額であるにも関わらず、加害者保険会社側が増額に応じなかったり、対応に問題があったりする場合には、訴訟(裁判)も視野に入れる必要があるでしょう。

4.合意書(免責証書)の取り交わし・保険金の支払い

示談交渉がまとまった場合、保険会社から示談が完了した旨の書類(一般的には免責証書という名称です。)が送られるため、これに署名して返送します。

書類を受領した保険会社は、保険金支払いの処理に移り、その後、損害賠償金が指定口座に振り込まれます。

訴訟手続きを利用しない場合は、このようなステップで交通事故の損害賠償金が支払われます。

損害賠償を請求するタイミング

損害賠償請求を始めることができるのは、「損害額が確定してから」が基本です。

損害が確定するタイミングは損害の種類によって異なりますが、以下のようなタイミングを目安にするとよいでしょう。

損害の種類 損害賠償請求を始めるタイミング
事故による傷害(完治できる怪我の場合) 医師が完治を宣告して治療が終了し、医療資料の取り寄せが一通り完了したとき
事故による傷害(後遺症が残った場合) 損害保険料算出機構などから後遺障害等級の認定通知を受けたとき
死亡事故 葬儀や四十九日が終わり、相続放棄しないことが確定したとき
物的損害(自動車の修理費用など) 修理見積が完了すれば随時

なお、物的損害と人的損害が同時に発生する事故の場合には、物的損害に関する交渉が先行するのが一般的です。

それは、傷害・死亡による損害の確定を待っていると自動車の修理や買い替えができないためです。

しかし、過失割合が争点となる場合には、人的損害の交渉が開始できる状態になるまで、物損に関しても本格的な交渉を開始できないことがあります。

損害賠償金を早く受け取りたいときには

損害賠償金を受け取るタイミングは基本的に、示談が成立したあとになります。

そのため、示談が成立する前に損害賠償金を受け取りたい場合には、仮渡金請求や被害者請求等、自賠責保険に対する請求をおこなうことがおすすめです。

仮渡金請求とは、交通事故の加害者が加入している自賠責保険に対して、一時的な金額を請求する制度です。

この請求をおこなうことで、事故直後の急な支出を補うための金額を、示談が成立する前に受け取れることができます。

交通事故で損害賠償を請求する際の注意点

交通事故の損害賠償を受ける際の注意点についても確認しましょう。

損害賠償の請求には時効がある

損害賠償の請求には権利の消滅時効があります。

権利の消滅時効は、損害の種類に応じて時効が成立するまでの期間が定められています。

具体的には、物的損害で3年、人身傷害で5年、後遺障害で症状固定から5年です。

損害の種類 時効期間
物的損害 事故発生日から3年
人身傷害(後遺障害なし) 事故発生日から5年
人身傷害(後遺障害) 症状固定日から5年

交通事故の損害賠償請求の場合、加害者側保険会社との交渉が継続するため、時効が成立するケースは少ないものの、保険会社との交渉がおっくうになるなどして無視したり放置したりすると時効が成立してしまいます。

なによりも、事故から時間が経てばたつほど重要な証拠が失われ、請求が難しくなります。

そのため、できる限り迅速に回収にむけた行動を取ることが大切です。

なお、事案によっては時効期間を過ぎていたとしても、例外的に損害賠償を請求できる場合があります。

自分だけで勝手に判断せず、必ず弁護士に相談して、請求できる余地がないかを確認してください。

実際の損害賠償金は損害額と過失割合で決まる

交通事故の損害賠償では、以下の損害を合計した金額をそのまま請求できるわけではありません。

  • 財産的損害
  • 精神的損害(慰謝料)
  • 物的損害

なぜなら、交通事故の場合は被害者側にも過失(責任)があるケースもあるためです、その場合、過失割合に応じた分しか支払われません。

これはすなわち、被害者側に過失がみとめられれば、その割合に応じて、損害賠償金が減額されてしまうことを意味します。

そのため、実際に受け取れる損害賠償金額を算定する際には、以下のように計算する必要があります。

損害賠償金額の計算式
損害賠償額=損害総額×加害者の過失割合

しかし、人身傷害保険・労災保険・自賠責保険をうまく活用できる場合は「損害総額×加害者の過失割合」以上の額を手にすることもできます。

保険会社の提示金額が正しいとは限らない

一般的に交通事故の示談交渉は、保険会社から示談条件が提示されてスタートします。

しかし、保険会社からの提示額は「治療費が全額含まれていない」、「過失割合が本来のものと異なる」、「慰謝料が想定より低い」などの可能性が高いといえます。

それを知らずに、安易に保険会社を信用して示談してしまうと、不利な条件での解決に陥ってしまいます。

そのため、示談交渉が始まった時点で、一度は交通事故問題に詳しい弁護士に「示談内容が適切かどうか」を相談するのがおすすめです。

加害者が損害賠償金を支払えない場合がある

実際の事案では、加害者が任意保険に入っておらず、また、支払能力もないという最悪の事態にいたる場合もあります。

このような場合には、加害者の自賠責保険から上手に回収する方法や、被害者の方自身が加入している保険の利用を検討する必要があります。

特に、被害者の方の加入している保険に人身傷害保険や搭乗者傷害保険などが付いている場合、損害に対して別途保険金が支払われる可能性があります。

加害者に資力がなくて損害賠償金を支払えない場合は、見極めが大変難しくなるため、極力早い時期に弁護士による正式な法律相談を受けて対策を講じておくことが必要です。

交通事故の損害賠償金をできる限り増やす方法

次に、交通事故の損害賠償金をできる限り増やすための方法を解説します。

ただし、実際に、専門知識がない方が示談交渉をおこなおうとしても、加害者保険会社のほうが一枚も二枚も上手である可能性が高いです。

ですので、可能な限り「交通事故の慰謝料問題が得意な弁護士」に相談することをおすすめします。

可能な限り過失割合を低くする

交通事故で受け取れる損害賠償額は過失割合によって大きく変わります。

そこで、できる限り過失割合が有利になるように交渉しましょう。

弁護士基準で慰謝料や逸失利益を計算する

交通事故の慰謝料や逸失利益の金額は、原則として弁護士基準で計算すると最も高額となります。

そのため、損害賠償金の増額を求めるなら、弁護士基準で交渉しましょう。

実際、弁護士基準で示談を成立できれば、慰謝料額や逸失利益を2倍〜3倍程度増額できる場合もあります。

ただし、保険会社の対応姿勢は、「弁護士や裁判手続を利用せずに、個人が弁護士基準で交渉を持ち掛けても、全くそれに応じる気配を見せない」というのが通常です。

そのような場合、自力で裁判をするか、弁護士に依頼するといった方法を検討する必要があります。

その際には、弁護士に依頼する場合の費用対効果をしっかりと見極める必要があります。

適切な後遺障害等級の認定を受ける

事故により後遺障害を負った場合、被害者の方は後遺障害等級認定を受ける必要があります。

一般的に自賠責保険における認定手続を受けることになりますが、事案によっては、労災保険における認定手続や犯罪被害者給付金における認定手続を受けなければならない場合もあります。

ただし、加害者側保険会社と交渉をおこなう際には、自賠責保険における認定結果でなければ一般的に協議にすら応じてもらえません。

そのため、交通事故の被害者の方は、可能な限り自賠責保険で適切な等級が認定されるように手続きを進めていくことになります。

後遺障害等級は、後遺障害慰謝料に大きく影響するため、もしも認定された等級に納得がいかない場合には「異議申立手続」を検討しましょう。

医師や弁護士等と相談し、費用対効果を検討したうえで、異議申立をすることが必要・有効と判断した場合には、医療資料を準備し、適切な後遺障害等級の認定を目指すことになります。

交通事故の損害賠償は弁護士に相談するのがおすすめ

交通事故の損害賠償は弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

なぜなら、弁護士に相談・依頼することで、次のようなメリットを享受できるからです。

  • 損害賠償額の適正額がわかる
  • 損害賠償金の増額が期待できる
  • 適正な過失割合がわかる
  • 保険会社との示談交渉を代行してくれる
  • 早期に解決される可能性が高まる

交通事故の損害賠償請求では、法律的な知識がないと、被害者側が損をしてしまう可能性は十分にあり得ます。

そのため、適正な損害賠償金を請求するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。

少しでもわからないことがあったら、弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

交通事故の損害賠償金として請求できるもの、損害賠償金額の計算方法、支払いまでの流れなどを紹介しました。

交通事故の損害賠償に関する知識を正しく理解することで、自分の損害賠償金額が妥当かどうかの判断ができるようになります。

ただし、交通事故の損害賠償の問題は奥が深く複雑な問題です。

そのため、少しでも不安に感じる部分があれば、直接弁護士に相談してみてください。

ベンナビ交通事故では、交通事故の損害賠償請求に注力している弁護士を多数掲載しています。

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  • 過去の解決事例を確認する
  • 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
  • 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ

等です。

詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。

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この記事の監修者
松島 達弥 弁護士 (京都弁護士会)
弁護士登録後、企業側の弁護士としてキャリアを積むも「地域で暮らす方々により添える弁護士でありたい」という思いから、いろどり法律事務所を設立。ご相談者様の話にじっくり耳を傾け、適切な助言を心掛ける。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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