追突事故でむちうち(14級・12級)の後遺障害認定を受けるには
追突事故に遭った被害者が「むちうち」になることはよくあることです。たかがむちうちと思えても、重症であれば数ヶ月間の治療が必要な場合がありますし、場合によって治療を受けても後遺障害が残ってしまうこともあります。
今回は、追突事故でむちうちになったときに後遺障害認定を受けるための手続や、後遺障害が残ったときに請求できる賠償金、認定を受けられた事例などをご紹介します。
追突事故でむちうちが生じやすい理由
追突事故では、どうしてむちうちになりやすいのでしょうか?
むちうちの正式名称は「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」です。これらは、首の骨である「頸椎」が外的な力によって損傷を受けることによる症状です。
追突事故(追突事故だけではないですが)では、衝突により運転者に突然強い力が加わり、普段激しく動くことがない首に急激な圧力が加わります。そのときに頸椎及びその周辺組織が損傷して、「むちうち」になってしまうのです。
むちうちになると、肩や背中のコリ、痛みやしびれ、上腕の痛みやしびれなどの症状が出ることが多いようです。また、このような症状だけでなく、頭痛や頭重感が発生したりめまい・耳鳴りなどの症状が出たりするケースもあるようです。
むちうちで認定の可能性がある後遺障害
むちうちにより後遺症が残った場合でも、後遺障害として認定されないケースがほとんどです。しかし、むちうちを原因とする疼痛症状やしびれの症状が、後遺障害の等級は「14級9号」または「12級13号」に認定されるということはあります。
14級9号
14級9号は「局部に神経症状が残ったとき」に認定される後遺障害等級です。
局部とは、身体の一部のことです。神経症状とは疼痛、しびれ、温感や熱感、違和感などの症状全般を指します。
むちうちによる疼痛やしびれが14級9号になる可能性があるのは、MRIなどの画像診断によって他覚所見(異常)を確認できないものの、一定の神経症状が一貫して発生していると認められるような場合です。
12級13号
12級13号は「局部に頑固な神経症状が残ったとき」に認定される後遺障害等級です。12級については、痛みなどの自覚症状に加えて、MRIやCT、レントゲンなどにより痛みの原因となる神経損傷・圧迫等が他覚的に確認できる場合に認められやすいとされています。
もっとも、画像で所見の確認ができればよいというものではなく、当該所見と事故との因果関係や、症状との因果関係も必要です。たとえば椎間板ヘルニアなどの異常所見があっても、事故前からあった可能性がある場合やヘルニアと神経症状が整合しないような場合は、後遺障害として認定されない可能性があります。
後遺障害の認定で請求できる損害賠償
ではむちうちにより生じた後遺症について後遺障害認定を受けた場合、補償額はどの程度となるのでしょうか?以下で賠償金の種類とそれぞれの相場を確認しましょう。
後遺障害慰謝料
交通事故で生じた後遺症が後遺障害と認められる場合、怪我の治療に対する慰謝料(傷害慰謝料)とは別に、「後遺障害慰謝料」を請求できます。後遺障害が残ると、被害者は今までのように身体を自由に動かせなくなったり仕事ができなくなったりして精神的に大きな苦痛を受けます。そこで後遺障害の程度に応じてこの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料が支払われるのです。
後遺障害慰謝料の金額には、認定された等級に応じた相場があります。弁護士基準の場合、12級であれば290万円程度、14級の場合には110万円程度が相場です。
逸失利益
後遺症が後遺障害と認められる場合、逸失利益を請求できるのが通常です。
逸失利益とは
後遺障害が残るとその内容・程度に応じて労働能力が低下すると考えられています。逸失利益とは、このような労働能力の低下に伴い、健常であれば得られたはずの将来収入が得られなくなった(得られなくなる蓋然性がある)ことに対する損失です。このような損失も事故により生じたものであるとして、賠償を求めることができます。
逸失利益の計算は、後遺障害等級毎に定まる「労働能力喪失率」、労働能力喪失期間(就労可能年数)、交通事故前の収入(基礎年収)によって計算します。就労可能年齢の上限は67歳ですが、被害者が67歳を超えて就労していた可能性がある場合は、平均余命に基づいて算定することもあります。
逸失利益の計算式
逸失利益の計算式は、以下の通りです。
逸失利益=事故前の基礎収入(年収)×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
12級の労働能力喪失率は14%、14級の労働能力喪失率は5%とされています。
以下で12級と14級それぞれの逸失利益計算例を示します。
12級の逸失利益計算例
事故当時30歳、年収400万円の被害者が追突事故でむちうちとなり、12級の後遺障害認定を受けた場合
逸失利益=400万円×14%×16.711(就労可能年数37年に対応するライプニッツ係数)=935万8,160円 |
※ 但し、後遺障害12級の場合、労働能力喪失期間は10年程度として計算することも多いです。むちうちに伴う神経症状の場合は特にそうです。
14級の逸失利益計算例
事故当時35歳、年収420万円の被害者が追突事故でむちうちとなり、14級の後遺障害認定を受けた場合
逸失利益=420万円×5%×15.803(就労可能年数32年に対応するライプニッツ係数)=331万8,630円 |
※ 但し、後遺障害14級の場合、労働能力喪失期間は5年程度として計算することも多いです。むちうちに伴う神経症状の場合はとくにそうです。
追突事故による損害賠償請求事例
以下では、追突事故によって後遺障害認定された事例を2つ、ご紹介します。
後遺障害14級が認定された事例
被害者が交差点で停止していたところ、赤信号であるにもかかわらず加害者が追突してきた事故です。
被害者は頸椎捻挫(むちうち)となりましたが、レントゲンや神経学的検査で異常が認められなかったために後遺障害非該当とされました。
しかし事故後も首の痛みやしびれが残り、日常生活や仕事上に支障が出ていたので被害者は納得できず、弁護士に異議申立を依頼しました。
弁護士がMRIの結果と鑑定書、被害者自身による日常生活報告書、事故状況報告書を提出するなどの丁寧な立証活動を行ったところ、後遺障害14級が認定されました。
後遺障害12級が認定された事例
交差点において被害者が赤信号で停車していたところ、加害車両が後方から追突してきて起こった交通事故です。
被害者は左TFCCを損傷し(転んで手をついたことなどによる手首の損傷)、半年以上治療を行いましたが完治せず、後遺障害等級12級13号の認定を受けました。
当初被害者が自分で示談交渉をしていたとき、保険会社からは250万円の示談金額が提示されましたが、被害者はこれが妥当かわからなかったので、弁護士に相談しました。
弁護士は賠償金が低すぎると判断し、増額の見込みがあることを伝えて被害者は弁護士に依頼しました。
弁護士が示談交渉を代行したところ、保険会社は慰謝料を弁護士基準まで引き上げるとともに逸失利益も認め、結果的に賠償金額が1,200万円にまでアップしました。
追突事故で後遺障害認定を受けるためのポイント
追突事故でむちうちなどの症状が残ったとき、後遺障害認定を受けるには以下のようなことがポイントとなります。
通院は怠らず症状固定まで治療を続ける
まず、症状固定まで定期的に通院を続け、症状については明確に医師に伝えましょう。むちうちに伴う神経症状が後遺障害と認められるかどうかは、症状が一貫しているかどうかも重視されます。定期的な通院がなかったり、症状について明確な申告がなければ症状の連続性については確認できませんので、後遺症が認定で不利となる可能性があります。
事前認定でなく被害者請求で申請する
2つ目のポイントとして、事前認定ではなく被害者請求の方法で後遺障害認定の申請をすることです。
後遺障害申請には、相手の任意保険会社に手続を依頼する「事前認定」と、自分で手続きをする「被害者請求」の2種類の方法があります。
事前認定の場合、保険会社は必要最低限の書類しか用意してくれませんが、被害者請求の場合、後遺障害の存在を基礎づける資料を自身の判断で追加することができます。例えば、病院のカルテ等を追加して認定申請を行うことで、審査で有利となることもあり得ます。
弁護士へ後遺障害申請を依頼する
後遺障害認定を受けたいのであれば、申請手続きを弁護士に依頼することをお勧めします。
後遺障害の認定は自賠責保険に対して申請するものですが、申請についての知識・経験がない素人には煩雑で難しいこともあります。したがって、そのような場合は、弁護士に相談することも検討されてはいかがでしょう。
まとめ
追突事故でむちうちとなり、痛みやしびれなどの後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を申請することも検討するべきです。まずは交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士を探して、相談をしましょう。すでに後遺障害認定を受けている方の場合でも、保険会社から提示される賠償額が低額であるような場合もあります。相手の言い分を鵜呑みにせずに、弁護士に妥当な相場の金額を確認してから示談することをお勧めします。
弁護士に相談するかお悩みの方へ
下のボタンからあなた当てはまるものを選んで悩みを解消しましょう。
弁護士費用特約があれば 実質0円で依頼できます!
多くの保険会社では、被害者1名につき最大300万円までの弁護士費用を負担してくれます。特約があるか分からない方でも、お気軽にご相談ください。弁護士と一緒にご確認した上で依頼の有無を決めて頂けます。
特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
- 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士の選び方について詳しくみる何度でも相談料0円/着手金0円!完全成功報酬※保険会社との交渉に自信!まずはご面談ください●累計相談2000件以上/賠償金約300万円増額実績あり《詳細は写真をクリック》あなたの持つ権利をお守りします
事務所詳細を見る提示された賠償金に納得がいかない方は、アディーレへご相談を!適正な賠償金を受け取るためにサポートします◆自転車・バイク事故にも対応◆
事務所詳細を見る提示された賠償金に納得がいかない方は、アディーレへご相談を!適正な賠償金を受け取るためにサポートします◆自転車・バイク事故にも対応◆
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
後遺障害等級・申請方法に関する新着コラム
-
交通事故に遭ったことが原因でけがを負い、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで保険会社から損害賠償を受け取れる可能性があります。交通事故による後遺...
-
交通事故に遭ってしまい腰椎圧迫骨折の治療を続けたものの、後遺障害等級が認定されず、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では、腰椎圧迫骨折で後遺障...
-
本記事では交通事故の被害に遭った方に向けて、後遺障害等級認定の定義、仕組み、認定機関、調査期間などの基礎知識、事前認定と被害者請求の大まかな流れ、後遺障害等級が...
-
事故で受けたケガが完治しない場合「後遺障害等級認定を受けるかどうか悩んでいる」という方もいるでしょう。この記事では、「後遺障害等級認定を受けることにはデメリット...
-
交通事故に巻き込まれた際は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。支払ってもらえる保険金額や逸失利益を計算したい場合もあるでしょう。本記事では、後遺障害...
-
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は別物であり、必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。本記事では、後遺障害11級に認定された方に向けて...
-
後遺障害10級には、肩・腕・手や股関節・膝・足を骨折して可動域が2分の1以下に制限された場合が含まれます。本記事では、後遺障害10級の具体的な症状や認定基準、後...
-
後遺障害等級の認定に当たっては、後遺症の症状や交通事故との因果関係などが精査されます。本記事では、後遺障害等級の認定は厳しいのかどうかや認定されない理由、非該当...
-
交通事故に遭った家族が1ヵ月以上意識不明の場合は、将来的に「遷延性意識障害」の診断を受ける可能性があります。 本記事では、家族が交通事故に遭って1ヵ月以上意識...
-
交通事故により重度の後遺障害を負った場合、加害者や保険会社から受け取る損害賠償とは別に、国より「障害年金」を受給することが可能です。この記事では障害年金の制度や...
後遺障害等級・申請方法に関する人気コラム
-
【弁護士監修】交通事故で後遺障害となり第14級と認定された場合、後遺障害慰謝料の相場がいくらになるのか、計算方法や示談金額、第14級の認定基準などを徹底解説。正...
-
後遺障害診断書の概要や入手方法、書き方と記入例、後遺障害の等級認定を獲得するためのポイントのほか、医師が診断書を書いてくれない場合とその対処法、後遺障害診断書の...
-
今回お伝えする内容は、後遺障害等級12級に該当する症状と認定の方法、そして、後遺障害等級12級の適切な慰謝料を獲得する7つの知識をご紹介します。
-
交通事故に遭った被害者のために、後遺障害の基礎・基本を解説します。適切な治療やリハビリを受けている場合でも、後遺障害を負ってしまうかもしれません。そのようなとき...
-
交通事故における症状固定とは、むちうちなどのような後遺障害等級の獲得や示談時期などを決める際に重要な意味があります。安易に保険会社から症状固定日の提案に同意する...
-
交通事故トラブルを弁護士に相談すれば、自身に有利な条件で問題解決できる可能性が高くなります。しかし、費用面が気がかりで躊躇している方もいるのではないでしょうか。...
-
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳に損傷を負ったことで起こる様々な神経心理学的障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など)...
-
後遺障害等級13級に該当する症状と後遺障害等級13級を獲得する手順をご紹介していきます。
-
後遺障害の認定が非該当になった場合に、異議申し立てを行うための方法と、成功させるコツをご紹介します。
-
後遺障害等級10級に認定された場合、その後遺障害が与える労働能力喪失率は27%と設定されており、後遺症が残った場合はいよいよ実生活にも多大な影響を与える症状が多...
後遺障害等級・申請方法の関連コラム
-
後遺障害認定されたら具体的に何がどうなるのでしょうか。この記事では、後遺障害認定されたら発生する慰謝料や逸失利益などのお金の知識や、後遺障害認定前と認定後の流れ...
-
交通事故の被害に遭い後遺障害が生じた場合、適切な後遺障害等級を得ることで損害賠償が大きく変わります。より簡単に負担を少なく後遺障害等級を獲得し、適切な損害賠償を...
-
交通事故に巻き込まれた際は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。支払ってもらえる保険金額や逸失利益を計算したい場合もあるでしょう。本記事では、後遺障害...
-
後遺障害等級第3級は労務に服することができない(障害のせいで働けない)状態に認定される等級です。被害者の今後の人生に大きな支障をきたす障害であるため、高額な慰謝...
-
事故で受けたケガが完治しない場合「後遺障害等級認定を受けるかどうか悩んでいる」という方もいるでしょう。この記事では、「後遺障害等級認定を受けることにはデメリット...
-
後遺障害の申請方法には、事前認定と被害者請求の2種類があります。それぞれメリットとデメリットがあるので、手続きに臨む前に両者の違いについて把握しておいた方がよい...
-
交通事故に遭ってしまい腰椎圧迫骨折の治療を続けたものの、後遺障害等級が認定されず、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では、腰椎圧迫骨折で後遺障...
-
後遺障害等級13級に該当する症状と後遺障害等級13級を獲得する手順をご紹介していきます。
-
交通事故で頸椎捻挫をした場合には、後遺障害を認めてもらえる可能性があります。後遺障害等級が認められると、損害賠償額が大きく変わります。しかし、認定されるためには...
-
交通事故でPTSDになった場合、症状に応じて後遺障害認定を受けられることがあります。この記事では、どのような場合に後遺障害認定が認められるのか、何級に該当するの...
-
後遺障害認定の結果に納得がいかない場合は、異議申し立てをすることで再審査を受けられます。しかし、手続きの進め方がわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか...
-
今回は、後遺障害11級と認定される症状や、後遺障害等級11級となった場合に、どの程度の損害賠償になるのかなどをご紹介します。
後遺障害等級・申請方法コラム一覧へ戻る