- 「後遺障害等級認定の申請をしたものの、納得のいく結果が出なかった」
- 「異議申し立てをしたいが、どのように進めればよいのかわからない」
交通事故が原因で後遺障害が残った場合、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの損害賠償を請求できるようになります。
しかし、後遺障害等級認定の審査は甘くなく、想定していた等級にならないケースや、そもそも等級認定してもらえないケースも少なくありません。
実際、通知された結果に納得できず、異議申し立てを検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、後遺障害の異議申し立て方法や注意点を解説します。
等級認定の成功率を高めるためのコツなども紹介するので、後遺障害の認定結果にお悩みの場合は、参考にしてみてください。
後遺障害の異議申し立てをご検討中の方へ
後遺障害の異議申し立てを行うと、初回の申請よりも時間がかかることがほとんどです。
また十分な資料を集められないと却下される恐れがあるため、後遺障害に関する知識がないと自力で異議申し立てを行うのは困難でしょう。
交通事故問題に注力する弁護士であれば、以下のようなメリットが望めます。
- 異議申し立ての手続きを一任できる
- 自分で行うよりも期間を短縮できる
- 怪我の状況に適した後遺障害等級を獲得しやすい
- 怪我の治療に専念できる
異議申し立てが認められれば賠償金も増額して、納得のいく示談を成立させられるでしょう。一人で悩まずに、まずはお近くの弁護士にご相談ください。
後遺障害の異議申し立てとは?
まずは、後遺障害の異議申し立てについて、基本的な知識を解説します。
異議申し立ては再審査を求める手続きのこと
後遺障害の異議申立てとは、後遺障害等級認定の結果に納得できなかった場合に、再審査を求める手続きのことです。
想定していた等級にならなかった場合や、そもそも後遺障害等級に認めてもらえなかった場合などは、異議申し立てをおこなうことになるでしょう。
実際、新たな書類を追加したり、アプローチの方法を変えたりすることで、審査結果が覆る可能性は十分あります。
後遺障害認定を争う方法は大きく分けて3種類ある
後遺障害認定を争う方法は、大きく分けて3種類あります。
まず考えられるのは、以下のような手続きをおこなう方法です。
- 初回申請と同様に損害保険料算出機構に対して再審査を求める(いわゆる異議申し立て)
- 自賠責保険・共済紛争処理機構に対して調停を申し立てる。
また、上記2つとは別に「裁判を起こして裁判官に後遺障害等級を判断してもらう」方法も選択肢のひとつに入ってくるでしょう。
後遺障害の異議申し立ては、大きく分けて3種類あります。
- 初回申請と同様に損害保険料算出機構に対して再審査を求める
- 自賠責保険・共済紛争処理機構に対して審査を求める
- 裁判を起こして、裁判官に後遺障害等級を判断してもらう
それぞれの方法に順序はないので、どれを選択するかは本人の自由です。
しかし、自賠責保険・共済紛争処理機構への申立ては1回限りとされているほか、裁判を起こすとなると手間と時間がかかってしまいます。
まずは、損害保険料率算出機構に対して再審査を求めるケースが一般的といえるでしょう。
損害保険料率算出機構への異議申し立ては、回数制限がなく、ほかの方法と比べれば手続きも比較的容易です。
異議申し立ての成功率は11%程度
後遺障害の異議申し立ての成功率は、11%程度にとどまります。
2022年度において、後遺障害等級の審査件数10,353件のうち、等級変更があったのは1,111件でした。
初回の申請時にも厳格な審査がおこなわれているため、異議申し立てによって結果が覆るケースは多くありません。
結果が出るまでの期間は2ヵ月~4ヵ月程度
損害保険料算出機構での審査にかかる期間は、初回の後遺障害認定にかかった時間より少し長くなる傾向があります。
異議申し立てに基づく審査は弁護士や医者などの専門家を招いておこなわれるため、その分、結果が出るまでに時間がかかってしまうのです。
申請内容によって期間は変わりますが、おおよそ2ヵ月~4ヵ月程度、長ければ半年程度かかるものと考えておきましょう。
異議申し立てをおこなう際には、医療機関での検査や必要書類の収集にも時間がかかるので、早めに手続きを進めるようにしてください。
異議申し立ての申請時には時効に注意
後遺障害の異議申し立てを申請する際には、時効に注意しておかなければなりません。
後遺障害を理由とした損害賠償請求には、5年の時効があるためです。
基本的には、症状固定となった日の翌日から5年が過ぎてしまうと、後遺障害認定を受けても損害賠償を請求できなくなります。
なお、交通事故の時効は以下のいずれかの方法で、リセット・延長することができます。
- 加害者側が債務を承認する(リセット)
- 裁判での損害賠償請求をおこなう(延長)
- 加害者に対して直接請求する(延長)
- 当事者間で権利に関する協議をすることに書面で合意する(延長)
後遺障害等級認定の手続きが何年にもわたるケースは少ないですが、時効完成までの期間はある程度意識しておくことが大切です。
損害保険料率算出機構に異議申し立てをおこなう方法
後遺障害の異議申立てには2種類の方法がありますが、まずは損害保険料率算出機構に対する異議申し立てをおこなうケースが一般的です。
具体的な手続きの方法を解説するので、参考にしてみてください。
事前認定と被害者請求のどちらで手続きするかを判断する
異議申し立ては、事前認定と被害者請求のいずれかで進めることになります。
どちらを選択してもよいのですが、基本的には、初回申請を事前認定でおこなった人も含め、被害者請求で手続きを進めるケースが一般的です。
事前認定の場合は任意保険会社に、被害者請求の場合は自賠責保険会社に対して関係書類を提出することになります。
なお、事前認定・被害者請求のいずれの方法でも、審査自体は損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所でおこなわれます。
必要書類を収集する
後遺障害の異議申立てでは、以下のような書類の収集・提出が必要です。
【必須書類】
異議申立書 |
保険会社から入手または自身で作成 |
交通事故証明書 |
自動車安全運転センターで取得可能 |
委任状 |
弁護士に依頼した場合に必要 |
【任意で用意する書類】
新しい後遺障害診断書 |
病院で取得 |
医師の意見書 |
病院で取得 |
検査票(CT・レントゲン・神経学的検査など) |
病院で取得 |
カルテ |
病院で取得 |
医療照会の回答書 |
病院で取得 |
事故状況がわかる資料 |
保険会社などから取得 |
陳述書(症状や日常生活への影響を記載) |
自身で作成 |
日常生活状況報告書 |
家族が作成 |
どれだけ有効な書類を収集・提出できるかによって、異議申し立ての成功率は大きく変わります。
前回申請時に不足していた要素を補えるように、必要な書類を漏れなく手配するようにしましょう。
異議申立書を作成して送付する
必要書類が集まったら、異議申立書を作成しましょう。
異議申立書に決まった様式はありませんが、以下のような項目を記載するケースが一般的です。
- タイトル:「後遺障害等級認定に対する異議申立書」などと記載
- 日付:異議申立書の作成日を記載
- 宛名:保険会社の名称を記載
- 住所・氏名:代理人が作成する場合は代理人の住所・氏名を記載
- 事故を特定する情報:被害者・事故年月日・証明書番号などを記載
- 異議申立ての趣旨:どのような結果に対して、どのような異議を申し立てるのかを記載
- 異議申し立ての理由:追加資料をもとに自らの主張を正当化する根拠を記載
異議申し立てを成功させるためには、上記項目のなかでも「異議申し立ての理由」に記載する内容が重要です。
前回の認定結果が不合理であることを示しつつ、適切な等級がほかにあることを理論的・医学的に主張しなければなりません。
自力での作成はハードルが高いので、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
異議申し立てを成功させるポイント
次に、異議申し立てを成功させるポイントを3つ紹介します。
適切な後遺障害等級が認められると損害賠償の大幅な増額が期待できるので、できる限りの準備をしたうえで手続きを進めましょう。
1.納得のいく結果を得られなかった原因を分析する
まずは、納得のいく結果を得られなかった原因を分析しましょう。
異議申し立ての成功率は約11%にとどまり、そう簡単に認められるわけではありません。
むやみに異議申し立てをしても、手間と時間が無駄になるだけです。
認定結果の通知には、非該当とされた理由や、その等級に認定された理由が記載されているため、何が足りなかったのかを検討したうえで対策を練る必要があります。
2.審査で有利になる書類を収集・提出する
後遺障害の異議申し立てを成功させるためには、審査で有利になる書類を収集・提出することが重要です。
たとえば、症状の裏付けが不十分だったことが原因で等級認定されなかったのであれば、MRI・CT・レントゲンなどの必要性を医師に相談し、検査結果を添付する必要があります。
場合によっては、医師に意見書を作成してもらったり、診断書を作り直してもらったりしなければならないこともあるでしょう。
添付書類が成功のカギを握るといっても過言ではないので、医師や弁護士とも相談しながら、慎重に収集作業を進めるようにしてください。
3.医療照会を検討する
後遺障害の異議申し立てをおこなう際は、医療照会を検討してみてください。
医療照会とは、医師に質問を投げかけ、書面で回答してもらう方法のことです。
後遺症を証明する材料が不足している場合には、医療照会による医師の回答書を添付することで、医学的な主張・立証が可能になります。
ただし、医療照会には担当医の協力が必要になるうえ、一定の費用負担が求められます。
医療照会を検討する際には、まず担当医に相談することから始めましょう。
自賠責保険・共済紛争処理機構に申し立てをおこなう方法
損害保険料算出機構への異議申し立てが失敗した場合でも、第三者機関である自賠責保険・共済紛争処理機構への申立てによって、適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。
自賠責保険・共済紛争処理機構に対する申し立ての流れは以下のとおりです。
-
紛争処理申請書と添付書類を自賠責保険・共済紛争処理機構に送付する
- 受理通知が送付され、審査が始まる
- 審査結果通知が送付される
紛争処理申請書は決まった様式がありますが、添付書類は損害保険料算出機構に申し立てる場合とほとんど変わりません。
なお、以下のようなケースに該当する場合は、自賠責保険・共済紛争処理機構への申し立ては認められません。
- すでに調停や訴訟を始めている場合
- ほかの機関に異議申し立てをおこなっている場合
- 以前に自賠責保険・共済紛争処理機構に対し、同じ案件で申し立てをおこなっている場合
また、審査期間は4ヵ月程度と長期間を要する点にも注意してください。
訴訟を提起する方法
損害保険料算出機構や自賠責保険・共済紛争処理機構の認定結果に納得できない場合には、訴訟を提起する方法も選択肢に入ってきます。
裁判所は過去の認定結果に拘束されず、判断基準もほかの機構と同一ではないため、これまでの結果が覆るケースは多く見られます。
しかし、裁判所によって、一度認定された等級が否定される可能性もゼロではありません。
また、訴訟を提起するには多大な労力を要するので、実際に踏み切るかどうかは、弁護士のアドバイスを受けたうえで判断するようにしましょう。
後遺障害の異議申し立てによって結果が覆った事例
ここでは、後遺障害の異議申し立てによって結果が覆った事例を2つ紹介します。
非該当から14級に認定|約535万円の損害賠償を獲得
T字路交差点における衝突事故により、全身打撲・擦過傷・頚椎捻挫となった40代男性の事例です。
当初、後遺障害等級認定が非該当とされたため、新たな検査結果をもとに異議申し立てをおこなったところ、14級の認定を受けることができました。
その結果、500万を超える損害賠償の獲得に成功しています。
14級から12級に等級アップ|損害賠償が約500万円増額
停車中に追突事故を起こされ、外傷性頚部症候群を患った60代女性の事例です。
当初は14級に認定されましたが、弁護士が医師の検査結果を改めて確認したところ、12級の基準を満たしていることが判明しました。
そこで、異議申し立てをおこなったところ、主張どおり12級の等級が認められ、損害賠償額も約500万円増額されることになったのです。
後遺障害の異議申し立ては弁護士への依頼がおすすめ
後遺障害の異議申し立ては、弁護士に代行を依頼することが可能です。
交通事故分野に精通した弁護士であれば、後遺障害を証明するために必要な書類や診断書の書き方を熟知しているので、適切な認定結果を得られる可能性が高まります。
結果的に、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益による損害賠償額の大幅な増額も十分見込めるでしょう。
後遺障害が関わる事故では、弁護士費用よりも慰謝料の増額分が大きくなる可能性が高いので、金銭面でのメリットも大きいといえます。
後遺障害申請をするには、後遺障害や交通事故分野の知識が必要不可欠です。
ご自身だけでの手続きに不安を感じる場合は、弁護士に相談されることを強くおすすめします。
まとめ
適切な後遺障害等級認定を受けられるかどうかによっては、最終的に獲得できる損害賠償額は大きく変わります。
そのため、認定結果に納得できない場合には、異議申し立てを検討しましょう。
ただし、異議申し立てを成功させるには、過去の事例や医学の知識に精通している必要があります。
自力での対応には高いハードルがあるため、まずは弁護士に相談することが大切です。