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高次脳機能障害は、後遺障害認定の申請が通れば補償金を請求できる後遺症です。後遺障害認定によって交通事故の保険金が100万円単位で増額するケースも非常に多いので、もし高次脳機能障害の疑いがある状態なら後遺障害申請を検討した方が良いでしょう。
ただ、後遺障害申請の認定は書類審査のみで判断されるため、画像診断で症状が確認しにくい高次脳機能障害は認定が難しい後遺症だと言われています。書類審査で症状の有無を証明できければ後遺障害申請は認められません。
高次脳機能障害を証明するには認定の基準について把握しておく必要があります。この記事では高次脳機能障害の後遺障害等級を獲得するための条件についてご紹介します。
高次脳機能障害の代表的な症状は以下の7つです。脳に病気・負傷をした後から以下の症状に心当たりのある場合には、高次脳機能障害の可能性があるかもしれません。
脳の側頭葉内側を損傷している場合に起こりやすい障害です。大きく分類すると、新しいことを記憶できなくなる(しにくくなる)「前向性健忘」と、過去の記憶を思い出せなくなる(思い出しにくくなる)「逆向性健忘」の2つに分類されています。
<具体的な症状>
どこに何がしまってあるかを思い出せない、曜日や日付の感覚がわからなくなる、簡単な約束事が守れなくなる、同じことを何度も質問するなどの症状がある場合、記憶障害の疑いがある可能性を考えましょう。
前頭葉や頭頂葉を損傷している場合に起こりやすい障害です。注意力が散漫になり、集中力が低下する、行動に一貫性がなくなるなどの症状があります。
<具体的な症状>
何事もすぐに飽きてしまう、話しかけても反応するまでに時間がかかる・ぼんやりとしている時間が増える、話を聞きながらメモをするなど、2つ以上のことを同時進行できなくなるなどの症状がある場合、注意障害の疑いがある可能性を考えましょう。
自分が意識して見ている空間の片側(多くの人は左側)を見落とす障害と言われています。今まで見ていた範囲の中のある部分を見ようとすると、その部分の半側をもまた見落としてしまう症状が一般的です。
前頭葉と側頭葉を損傷している場合に起こりやすい障害です。暴力的な行動や、感情の抑制が効かなくなる他、逆に感情がなくなってしまい何事にも無関心になるなどの症状があります。
<代表的な症状>
突然、幼い子供のような癇癪を起こす、急に泣き出したり、怒り出したりする、食事や買い物を我慢できない、感情の起伏がなくなり、何事にも無関心になってしまったという場合、社会的行動障害の疑いがある可能性を考えましょう。
前頭葉に損傷がある場合に起こりやすい障害です。計画を立てて行動ができない、周りへの変化に対応ができなくなるなどの症状があります。話す、書く、聞く、などの1つずつの動作は問題なくこなせますが、組み合わさるとうまく行かなくなる場合が多いようです。
<代表的な症状>
物事の優先順位がつけられなくなるため、いきあたりばったりの行動や判断が特徴と言われています。約束の時間が守れない、想定外の事態に対応ができないなどの症状がある場合、遂行機能障害の疑いがあると考えましょう。
言葉がうまく出なくなる、身体に障害が残っていないのに日常生活の動作ができなくなってしまう障害です。失語症は大脳半球の損傷がある場合に起こりやすいと言われています。
会話が難しく文章が読みづらくなっている場合、失語症の疑いがあると考えられます。失行症は、言われていることは理解できるけれど、その行動がうまくいかないことが特徴です。ボタンを止める、歯を磨くなど日常的な動作でもぎこちない、できないという症状です。
<代表的な症状>
頭では理解しているのに行動が伴わず、物を壊してしまう、間違えて使ってしまう場合、失行症の疑いがあると考えられます。
手の痺れや打撲など自身の体に明らかに異常があっても、「自分は平気だ!」と言い張り実際にそう思い込んでしまう自己認識の低下が招く傷害です。
<代表的な症状>
他者から見て負傷や障害がある状態が判断できる状態にも関わらず、周囲の人からしてきされてもそれを頑なに認めない場合には、病識欠如の疑いがあると考えられます。
視覚・聴覚・触覚などの感覚器官には異常はなくても、いずれかの感覚器官での認識や特定の対象物の認識がしづらくなる障害です。
<代表的な症状>
認知症と似た症状であるためよく間違われやすいですが、事故を境に上記のような状態になった場合には、失認症の疑いがあると考えられます。
高次脳機能障害は脳の神経回路が傷ついて起こる傷害です。脳の内部は複雑に神経回路が入り組んで相互関係を結んでいますが、脳の病気や脳への強い衝撃を受けると神経が引き裂かれ、上記で紹介したような障害が生じてしまうケースがあります。
高次脳機能障害が生じる主な原因は以下の3点です。以下のいずれかを経験後に症状がある場合には高次脳機能障害の検査を受けた方が良いでしょう。
高次脳機能障害の原因でもっとも多いのは脳梗塞、くも膜下出血などによる脳血管障害です。これは脳の血管が傷ついてしまう、脳梗塞などが原因で酸素が脳内に行き渡らなかった場合に起こる高次脳機能障害です。
血液は酸素を脳内に運ぶ役割を担っているため、血流が少しでも止まってしまうと脳は栄養となる酸素を失い細胞が死んでしまいます。その悪影響により神経に何らかの異常をきたす可能性が高い損傷だと言えるでしょう。
高いところから落下して頭を打った、暴行で頭に強い衝撃が合ったなど、外部から頭部への強い衝撃も高次脳機能障害が起こる原因の1つです。
頭部に強い衝撃が加わることで、脳が傷つく脳挫傷、脳の神経線維が傷つくびまん性軸索損傷の影響で高次脳機能障害が引き起こされます。なお、日本では交通事故が原因での発症が最も多い原因になると言われています。
脳腫瘍、低酸素脳症やウイルス性脳炎などでも、高次脳機能障害が起こる可能性があります。また、脳炎、低酸素脳症、アルコールの飲み過ぎなどでも起こるケースもあるようです。
高次脳機能障害と認知症はどちらも脳に要害のある状態という点では同じですが、症状の経過が異なるのが最も大きな違いだと言えるでしょう。
認知症は一度でも発症してしまうと完治は難しいですが、高次脳機能障害は症状の悪化はなくリハビリを継続することで症状が徐々に改善していく可能性が高いです。
そのため、高齢の方でも脳の病気や負傷などをきっかけに症状を発症した場合には、認知症と直ぐに判断して対処していくのではなく、高次脳機能障害の可能性を病院で検査してもらうことをオススメします。
高次脳機能障害の特徴は、「被害者本人が自覚できない」ということです。「隠れた障害」とも呼ばれていること、表面的には何も異常がないため、身近にいる人が、気が付き、病院で適切な治療やサポートを受けるよう、手助けをする必要があります。
もし周囲に以下のリストに複数当てはまる人がいる場合は、高次脳機能障害の可能性が疑えるので、本人に相談をして検査をオススメした方が良いでしょう。
高次脳機能障害は目に見えた外傷はありませんが、日常生活に支障をきたす可能性が十分にある厄介な障害です。脳の病気や頭部の負傷が主な原因として引き起こされるケースが多いと言われています。
特に日本では交通事故の衝撃が原因で発症する事例が多いので、事故後に当記事で紹介したような症状を感じる場合には病院で検査を受けた方が良いでしょう。
なお、病院の検査で高次脳機能障害と診断されて後遺症が認められれば、後遺障害に対する損害賠償の請求も可能です。
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