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腕を切断する事故に遭った際の慰謝料額や後遺障害等級を解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
腕を切断する事故に遭った際の慰謝料額や後遺障害等級を解説

交通事故によって腕を失ってしまった場合、後遺障害として等級認定を受けることで、「入通院慰謝料」に加えて「後遺障害慰謝料」なども請求でき、大幅な示談金の増額が見込めます。また、「切断したのは片腕か両腕か」「どの部分を切断したのか」など、切断の程度によっても請求金額は大きく異なります。

この記事では、腕を切断する事故に遭った際に請求できるお金・認定される後遺障害等級・請求額の計算例・示談金獲得にあたってのポイントなどについて解説します。

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腕を切断する事故に遭った際に請求できるお金

腕を切断する事故に遭った場合、相手に請求できるお金としては主に以下が挙げられます。ここでは、それぞれの概要や計算方法などについて解説します。

<交通事故の加害者に請求できる損害>

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
  • 休業損害
  • その他費用 など

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、怪我の治療のために入院・通院した場合に請求できる慰謝料のことです。また、慰謝料については、以下のように3つの計算基準が設けられており、どれが適用されるかによって請求額の相場は異なります。

交通事故慰謝料の計算基準

自賠責基準

自賠責保険における計算基準

任意保険基準

各保険会社が定める計算基準

弁護士基準

裁判所での判例を基にした計算基準

自賠責基準

自賠責基準については、以下①・②のうち計算結果の小さい方が適用されます。

<自賠責基準の相場>

  1. 4,300円×実際に病院へ通った日数×2
  2. 4,300円×治療期間

任意保険基準

任意保険基準については、各保険会社によって独自に定められているため明確な基準はありません。したがって、以下の相場額はあくまで一つの参考としてご覧ください。

<任意保険基準の相場(単位:万円)>

任意保険基準の相場

弁護士基準

弁護士基準については、「客観的に見て怪我の状態が明らかであるか否か(他覚症状があるかないか)」によって請求額が異なります。請求時の相場額としては以下のとおりです。

<弁護士基準の相場|他覚症状がある場合(単位:万円)>

弁護士基準の相場|他覚症状がある場合

<弁護士基準の相場|他覚症状がない場合(単位:万円)>

弁護士基準の相場|他覚症状がない場合

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、治療を尽くしても一定の後遺症が残ってしまったような場合に請求できる慰謝料のことで、請求にあたっては「後遺障害申請」を行って等級認定を受けておくとスムーズです。こちらも入通院慰謝料と同様、3つの計算基準が設けられており、それぞれ以下のように請求額の相場が異なります。

<後遺障害慰謝料の相場>

等級

自賠責基準

(2020年3月31日までに発生した事故)

任意基準(推定)

弁護士基準

第1級

1,150万円

(1,100万円)

1,600万円程度

2,800万円

第2級

998万円

(958万円)

1,300万円程度

2,370万円

第3級

861万円

(829万円)

1,100万円程度

1,990万円

第4級

737万円

(712万円)

900万円程度

1,670万円

第5級

618万円

(599万円)

750万円程度

1,400万円

第6級

512万円

(498万円)

600万円程度

1,180万円

第7級

419万円

(409万円)

500万円程度

1,000万円

第8級

331万円

(324万円)

400万円程度

830万円

第9級

249万円

(245万円)

300万円程度

690万円

第10級

190万円

(187万円)

200万円程度

550万円

第11級

136万円

(135万円)

150万円程度

420万円

第12級

94万円

(93万円)

100万円程度

290万円

第13級

57万円

60万円程度

180万円

第14級

32万円

40万円程度

110万円

休業損害

休業損害とは、怪我の治療のために仕事を休んだことで減ってしまった収入分における損害を指します。請求時は以下の計算式で求められます。

<休業損害の計算方法>

休業損害=1日あたりの基礎収入(※)×休業日数

※会社員・契約社員の場合:「直近3ヶ月の収入÷90」

※自営業・個人事業主の場合:「(前年度の所得+固定費)÷365」

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺症を負ったことで減ってしまった将来分の収入における損害を指し、請求にあたっては「後遺障害申請」を行って等級認定を受けておく必要があります。

<後遺障害逸失利益の計算方法>

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数

※基礎収入:被害者の事故前の年収

※労働能力喪失率:後遺障害による労働能力喪失の割合を%で表したもの

※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数

その他費用

上記のほかにも、事故を原因として発生した以下の費用なども請求することができます。

<その他費用一例>

  • 入通院治療費
  • 入院雑費
  • 付添看護費
  • 入通院交通費
  • 将来の手術・義足等装具費
  • 診断書等費用
  • 車の修理代 など

腕を切断する事故に遭った際に認定される後遺障害等級

腕を切断する事故に遭った場合、被害の程度に応じて、以下いずれかの後遺障害等級が認定されることになるでしょう。ここでは、各等級の内容や、各等級に応じて支払われる「自賠責保険金(共済)」や「後遺障害慰謝料」などを解説します。

  • 1級|3号:両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 2級|3号:両上肢を手関節以上で失ったもの
  • 4級|4号:1上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 5級|4号:1上肢を手関節以上で失ったもの

1級|3号:両上肢をひじ関節以上で失ったもの

後遺障害等級1級3号は、事故によって「両腕を肘から肩までの間で切断した」というケースで認定されます。このようなケースの場合、請求できる慰謝料額などは以下のとおりです。

後遺障害慰謝料

(2020年3月31日までに発生した事故)

自賠責保険(共済)金額

労働能力喪失率

自賠責基準:1,150万円(1,100万円)

任意保険基準:1,600万円(推定)

弁護士基準:2,800万円

3,000万円

100%

2級|3号:両上肢を手関節以上で失ったもの

後遺障害等級第2級3号は、事故によって「両腕を手首から肘までの間で切断した」というケースで認定されます。このようなケースの場合、請求できる慰謝料額などは以下のとおりです。

後遺障害慰謝料

(2020年3月31日までに発生した事故)

自賠責保険(共済)金額

労働能力喪失率

自賠責基準:998万円(958万円)

任意保険基準:1,300万円(推定)

弁護士基準:2,370万円

2,590万円

100%

4級|4号:1上肢をひじ関節以上で失ったもの

後遺障害等級第4級4号は、事故によって「片腕を肘から肩までの間で切断した」というケースで認定されます。このようなケースの場合、請求できる慰謝料額などは以下のとおりです。

後遺障害慰謝料

(2020年3月31日までに発生した事故)

自賠責保険(共済)金額

労働能力喪失率

自賠責基準:737万円(712万円)

任意保険基準:900万円(推定)

弁護士基準:1,670万円

1,889万円

92%

5級|4号:1上肢を手関節以上で失ったもの

後遺障害等級第5級4号は、事故によって「片腕を手首から肘までの間で切断した」というケースで認定されます。このようなケースの場合、請求できる慰謝料額などは以下のとおりです。

後遺障害慰謝料

(2020年3月31日までに発生した事故)

自賠責保険(共済)金額

労働能力喪失率

自賠責基準:618万円(599万円)

任意保険基準:750万円(推定)

弁護士基準:1,400万円

1,574万円

79%

等級別|請求金額の計算例

ここでは以下のようなケースを想定して、等級ごとの請求金額についておおまかな計算例を紹介します。請求にあたって、一つの目安としていただければと思います。

  • 職業:会社員
  • 年齢:40歳
  • 年収:600万円
  • 入院期間:90日
  • 通院期間:200日(実際の通院日数:150日)

1級|3号:両上肢をひじ関節以上で失ったもの

後遺障害等級第1級3号に該当する場合、加害者への請求金額については以下のように計算できます。

請求費用

請求金額

入通院慰謝料(自賠責基準)

124万7,000円

後遺障害慰謝料(自賠責基準)

1,150万円

休業損害

150万円

後遺障害逸失利益

8,785万8,000円

入通院治療費(想定)

700万円

入院雑費(入院日数1日あたり1,500円で計算)

13万5,000円

付添看護費(入院日数1日あたり2,050円で計算)

18万4,500円

合計

1億942万4,500円


2級|3号:両上肢を手関節以上で失ったもの

後遺障害等級第2級3号に該当する場合、加害者への請求金額については以下のように計算できます。

請求費用

請求金額

入通院慰謝料(自賠責基準)

124万7,000円

後遺障害慰謝料(自賠責基準)

998万円

休業損害

150万円

後遺障害逸失利益

8,785万8,000円

入通院治療費(想定)

650万円

入院雑費

13万5,000円

付添看護費

18万4,500円

合計

1億740万4,500円

4級|4号:1上肢をひじ関節以上で失ったもの

後遺障害等級第4級4号に該当する場合、加害者への請求金額については以下のように計算できます。

請求費用

請求金額

入通院慰謝料(自賠責基準)

124万7,000円

後遺障害慰謝料(自賠責基準)

737万円

休業損害

150万円

後遺障害逸失利益

8,082万9,360円

入通院治療費(想定)

550万円

入院雑費

13万5,000円

付添看護費

18万4,500円

合計

9,676万5,860円

5級|4号:1上肢を手関節以上で失ったもの

後遺障害等級第5級4号に該当する場合、加害者への請求金額については以下のように計算できます。

請求費用

請求金額

入通院慰謝料(自賠責基準)

124万7,000円

後遺障害慰謝料(自賠責基準)

618万円

休業損害

150万円

後遺障害逸失利益

6,940万7,820円

入通院治療費(想定)

500万円

入院雑費

13万5,000円

付添看護費

18万4,500円

合計

8,365万4,320円

後遺障害認定を受けて示談金を獲得するまでの流れ

事故によって後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害申請を行って等級認定を受けることで、入通院慰謝料や休業損害のほか、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益なども請求することができます。後遺障害認定の有無によって示談金額も大きく変わりますので、腕を切断する事故に遭った際は、まずは加害者自賠責保険会社に後遺障害認定を申請しましょう。

ここでは、後遺障害認定を受けて補償金が支払われるまでの流れを解説します。

①医師から症状固定の診断を受ける

治療を一定期間受けると、「これ以上治療を続けても改善は見込めない」という状態(症状固定)に至ります。怪我の程度によって症状固定の時期は異なるため、医師と相談しながら決めることになります。

②医師に後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定の診断を受けた後は、保険会社から後遺障害診断書の用紙を取り寄せて、医師に作成してもらいます。作成後は医師から手渡されるケースが多いようですが、中には直接保険会社へ郵送されるケースもあるようです。

③後遺障害申請を行う

次に後遺障害申請を行います。申請方法としては、被害者請求事前認定の2つがあり、以下で詳しく解説します。

被害者請求

被害者請求とは、被害者が自分で自賠責保険会社へ申請するという手続きです。なお、申請にあたっては、以下のような書類を準備しなければならないため、「申請準備に時間がかかる」という点がデメリットと言えます。

しかし、その分、自分の裁量で進められるため、「自分にとって有利に働きそうな資料を集めて申請できる」という点はメリットです。

<提出書類一例>

  • 後遺障害診断書
  • 交通事故証明書
  • 診療報酬明細書
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の意見書・本人の陳述書
  • 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書
  • 印鑑証明書
  • レントゲン写真等 など

事前認定

事前認定とは、加害者の保険会社へ申請対応を任せるという手続きです。こちらの場合、後遺障害診断書さえ提出すれば保険会社が代行してくれるため、「手間をかけずに申請できる」という点がメリットと言えます。

しかし、保険会社は必要最低限の書類しか提出しません。積極的に後遺障害が認定されるような対応は取られないという点はデメリットです。

④認定結果が通知される

申請内容に問題がなければ、約1ヶ月~3ヶ月ほどで認定結果が通知されます。上肢切断の場合は、1級・2級・4級・5級いずれかの認定を受けることになります。なお、もし認定結果に納得がいかない場合は、異議申し立てを行うことも可能ですが、その際は「請求の根拠となる資料」を新たに用意する必要があります。

⑤示談交渉~示談金を受け取る

等級認定を受けた後は、示談交渉を行って示談金を決めていきます。加害者が任意保険に加入している場合は、加害者の加入する保険会社が対応するのが通常です。

交渉で話がまとまれば、示談書を交わして示談金を受け取ることになりますが、もし話がまとまらなかった場合などは、裁判にて解決を図ることを検討せざるを得ません。

適切な等級認定を受けて示談金を獲得するためのポイント

納得のいく額の示談金を獲得するためにも、ここでは事故後の対応について知っておくべきポイントを解説します。

後遺障害申請では必要書類を適切に準備・作成する

後遺障害申請は書面審査ですので、後遺障害診断書の内容も不備なく作成することがポイントです。記載内容に抜け漏れがないか十分にチェックすることが大切です。

特に、後遺障害診断書については「依頼する医師の作成経験の有無」によって作成結果が異なるため注意が必要です。依頼した医師に作成経験がなかった場合、記載内容に漏れが生じて適切な等級認定が得られないおそれもあるため、一度はチェックしておいた方が良いでしょう。

示談交渉では客観的資料をもとに妥当額を判断する

示談交渉にあたっては、事故状況や怪我の程度などの客観的資料をもとに進めていくことになります。しかし、示談金に相場はありませんので、ケースごとに「いくらであれば妥当であるのか」判断することになります。

また、示談交渉については、一度成立してしまうと原則やり直すことができないため、注意が必要です。相手方の保険会社から、「〇〇万円でどうか」と提示されることもありますが、必ずしもそれが妥当額であるとは限りませんので、安易に妥協することは避けた方が良いでしょう。

弁護士にサポートを依頼する

後遺障害申請や示談交渉については、もちろん自力で行うことも可能です。しかし、中には「抜け漏れなくできるか不安」という方も多いのではないでしょうか。

そのような方については、弁護士にサポートを依頼するのがおすすめです。弁護士であれば、後遺障害申請や示談交渉など、事故後に必要な対応を一任することができます。

症状に適した後遺障害等級の獲得が望めるだけでなく、慰謝料請求にあたっては「弁護士基準」で請求することもできるため、場合によっては大幅に獲得金額が増額する可能性もあります。

まとめ

事故後の対応については「後遺障害申請を適切に済ませられるか」「どの計算基準で慰謝料請求を行うか」という2点がポイントとなるでしょう。しかし、自力で対応するには労力もかかる上、知識なども必要となります。

特に「まだ日常生活に慣れるのに必死」という方には負担も大きいでしょう。

その点、弁護士であれば事故後の対応を一任できるため、対応負担を大きく減らすことができます。さらに、大幅な示談金の増額につながることもありますので、まずは一度相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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