追突事故の診断書の役割|加害者への損害賠償を増額するための重要書類
交通事故(追突事故)にあったら警察に事故報告をした後に病院で検査を受ける必要がありますが、その時に受け取る診断書は損害賠償請求をするための重要な役割を担っています。
事故で負傷した場合でも適切なタイミングで診断書を作成してもらわないと、負傷について補償を受けられなくなる可能性があります。そのため、どんなに手間でも事故後は速やかに病院を受診して診断を受けて下さい。
この記事では追突事故にあった時の診断書の役割と扱い方をご紹介するので、事故後の対応を確認しておきたい場合はぜひ参考にしてみて下さい。
追突事故における診断書の役割
まず追突事故における診断書の役割を確認していきましょう。交通事故後の医師の診断書は損害賠償請求の金額に影響するとても重要な書類です。
診断書は人身事故への切り替えに必要
交通事故には物損事故と人身事故の2種類があります。物損事故は車両などのモノの破損しか損害がない事故で、人身事故は死傷者が存在する事故です。(※両者の違いの詳細は次の見出しで解説)
人身事故の場合、負傷については当然補償の対象となりますが、事故後速やかに病院を受診して診断を受けていない場合、事故で負傷した事実が立証できず、十分な補償を受けられなくなる可能性があります。
追突事故は後から負傷が発覚しやすい
事故直後は興奮状態になっているせいで自分が負傷していてもなかなか気づきにくいです。そのため、交通事故では事故直後は元気でも後日以降に身体に痛みが乗じるケースは珍しくありません。
特に追突事故では数日後に痛みが遅れて出やすい神経症であるむちうちを発症する確率が高いと言われているので、追突事故後は特に病院での検査を念入りに行うべきでしょう。
人身事故と物損事故の違い
慰謝料と傷害に対する損害賠償の有無
上記でも少し触れましたが、人身事故と物損事故の最も大きな違いは請求できる損害賠償の種類です。物損事故では壊れたモノの修理代しか請求できませんが、人身事故では以下の損害賠償の請求が認められています。
【人身事故で請求できる代表的な損害賠償】
損害賠償 |
概要 |
負傷を治療する際の治療費や通院の交通費など |
|
入通院が必用な負傷を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料 |
|
療養中に仕事を休んでいる時の収入の保障 |
|
後遺症を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料 |
|
後遺症によって減った将来の収入に対する損害賠償 |
例え1ヵ月くらいで完治する負傷であっても、上記の損害賠償の有無により人身事故と物損事故では補償の範囲が異なりますので、どんなに些細な負傷であっても自覚症状があるなら病院で診断書を受け取っておきましょう。
加害者の刑事罰の有無
物損事故では加害者はモノの修理代を補償するだけで済みますが、人身事故として処理された場合には過失運転致死傷罪として刑事的に立件されます。そのため、加害者は刑事罰も受けることになる可能性があります。
過失運転致死傷罪の刑罰は7年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金ですが、故意や飲酒・無免許といった過失がなければ大半の事故は罰金刑が科されています。
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
引用:自動車運転処罰法5条
加害者は刑事罰を避けようと被害者に「人身事故にしないでくれ」と頼んでくる場合がありますが、人身扱いとしないことで事故態様で揉めた場合の立証資料が不十分となる等の不利益を被ることがありますので、慎重に対応して下さい。
自賠責保険の保険金の有無
物損事故は自賠責保険の保障の対象外なので、加害者が任意保険未加入の場合には加害者本人に損害賠償を請求することになります。加害者が支払い能力のない状況だと損害賠償がすぐに回収できない恐れがあるので注意が必要です。
無保険事故の損害賠償請求は色々と問題が生じやすいので、変更が可能なら人身事故として処理した方が良いでしょう。
人身事故への切り替え手続き(警察との関係)
事故直後に病院で診断書を受け取る
人身事故への切り替え手続きには病院の診断書が必要になります。そのため、事故後は必ず病院で検査を受けて医師から診断書を発行してもらいましょう。
なお、人身事故の切り替え手続きに必要な診断書を発行できるのは公的医療機関です。接骨院・整骨院では診断書は作成されませんのでお気をつけください。(※治療をする際には利用可能)
警察署で診断書を提出する
病院から診断書を発行してもらったら警察へ提出して人身事故への切り替えを依頼しましょう。正式な提出期限があるわけではありませんが、事故後から時間が経ちすぎると申請が認められない場合もあるので注意が必要です。
なお、病院を受診するタイミングですが事故後から7~10日が限界点とされていますので、遅くても事故後1週間以内には病院を受診して下さい。この期間内に病院を受診していれば、警察への診断書提出が多少遅れても問題ありません。
人身事故の申請が認められなかった時の対処法
人身事故証明入手不能証明書を提出する
もしも診断書の提出期限が遅れてしまい警察で人身事故の申請が認められない場合には、加害者の保険会社に連絡をして人身事故証明入手不能証明書を提出しましょう。
人身事故証明入手不能証明書とは、何らかの事情で人身事故証明書が入手できなかった時に保険会社に提出する書類です。この書類の内容が認められれば警察で人身事故処理を受けなくても人身事故の損害賠償請求が可能です。
ただし、人身事故証明入手不能証明書を提出すれば必ず人身事故補償が受けられるわけではありません。保険会社の判断なので少しでも認められる可能性を高めるため、事前に書き方と注意点を確認しておくことをおすすめします。
裁判を起こす
人身事故証明入手不能証明書を提出しても人身事故の補償を受けられない場合には、加害者に対して裁判を起こして補償を求めるほかありません。
裁判は被害者だけでも起こせますが、法律に精通していない限りは個人で裁判をしても主張を認めさせる事は現実的には厳しいため、弁護士依頼をして手続きを進めていくことになるでしょう。
弁護士依頼を検討する場合
弁護士費用と損害賠償の金額が判断基準
弁護士依頼をして人身事故を認めさせられても、弁護士費用を含めて収支がマイナスになってしまっては意味がありません。弁護士依頼をすべき状況は『人身事故の損害賠償>弁護士費用』になる場合だけです。
【弁護士の裁判費用の相場】
【裁判】 |
着手金 |
報酬金 |
着手金あり(経済利益額0~300万円) |
経済利益額の8% |
経済利益額の16% |
着手金あり(経済利益額300万~3,000万円) |
9万円+経済利益額の5% |
18万円+経済利益額の10% |
着手金あり(経済利益額3,000万円~3億円) |
69万円+経済利益額の3% |
138万円+経済利益額の6% |
着手金あり(経済利益額3億円以上) |
369万円+経済利益額の2% |
738万円+経済利益額の4% |
着手金なし |
無料 |
20万円+報酬額の10% |
まずは弁護士に法律相談を依頼して損害賠償と弁護士費用の見積もりを出してもらい、そこから依頼をするべきかを検討すると良いでしょう。
弁護士費用特約があるなら依頼をするべき
自分か家族が加入している任意保険(車保険に)弁護士費用特約が付属していれば保険会社から弁護士費用を負担してもらえるので、その場合は依頼を検討することをおすすめします。弁護士費用の負担がほぼないので収支がプラスになる可能性が高いです。
弁護士費用特約は加入率が高い保険サービスなので、契約をした記憶がなくても事故後は自分の保険会社に連絡して確認しておきましょう。
交通事故分野が得意な弁護士に依頼する
人身事故への切り替えは患者の負傷の状態を証明する必要があるため、法律だけでなく医療の知識も求められる場面も出てきます。そのため、交通事故分野は弁護士の経験が裁判の結果に影響しやすい分野だと言えるでしょう。
弁護士依頼をする事前にその弁護士の得意分野と過去に解決した法律問題を確認しておくことをオススメします。
まとめ
交通事故(追突事故)後に病院から発行される診断書は、事故の損害賠償を請求するためのとても重要な書類です。事故で負傷をした場合には必ず病院で検査を受けて人身事故として処理してもらいましょう。
特に追突事故は後から身体に異常が生じるケースが多い事故なので、事故直後は平気でも念のために病院で検査を受けておいた方が安心です。
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