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交通事故の下肢の後遺障害の症状や慰謝料について

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
交通事故の下肢の後遺障害の症状や慰謝料について

交通事故では、脚を骨折などして後遺障害が残ってしまうケースも多々あります。脚のことを「下肢」と言います。

 

今回は、下肢の後遺障害の症状や認定される等級、後遺障害認定を受ける方法を解説していきます。

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そもそも下肢とは

そもそも下肢とはどこの部分なのでしょうか?下肢は、一般的に「脚」と呼ばれている部分で、股関節から足指に至るまでの部分です。

 

下肢には「3大関節」という3つの関節があります。それは、「股関節」「膝関節」「足関節」です。

下肢とはどこの部分か

股関節

股関節は、腰と脚とをつなぐ関節です。ここが不自由になると歩くことも困難となります。

膝関節

膝関節は、大腿骨と脛骨・腓骨の間にある関節で、膝を曲げ伸ばしするための器官です。膝関節を損傷すると、膝を曲げ伸ばししにくくなって、日常生活でも大きな支障が及びます。

足関節

足関節は、足首の関節です。足首を動かせなくなると歩行や走行、立ち座りなどのさまざまな動きが不自由になります。

 

また、3大関節ではありませんが、足の甲の「アーチ」の天井部分には「リスフラン関節」という関節があります。

下肢の後遺障害一覧

下肢の後遺障害には具体的にどのようなものがあるのか、確認しましょう。

欠損障害

欠損障害は、下肢の一部が失われる障害です。事故で直接足がなくなった場合だけではなく、手術で足を切り落とした場合なども欠損障害となります。

状態

等級

1足をリスフラン関節以上で失ったもの

第7級8号

1下肢を足関節以上で失ったもの

第5級5号

1下肢のひざ関節以上で失ったもの

第4級5号

両足をリスフラン関節以上で失ったもの

第4級7号

両下肢を足関節以上で失ったもの

第2級4号

両下肢をひざ関節以上で失ったもの

第1級5号

機能障害

機能障害は、関節が動かなくなる後遺障害です。2分の1以上可動域が失われたら「著しい機能障害」、4分の1以上可動域が失われたら「機能障害」となります。

 

「機能を全廃」とは、ほとんどあるいはまったく関節が動かなくなった状態です。

状態

等級

1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

第12級7号

1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

第10級11号

1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

第8級7号

1下肢の3大関節の2関節の用を廃したもの

第6級7号

1下肢の用を全廃したもの

第5級7号

両下肢の用を全廃したもの

第1級6号

変形障害

変形障害は、骨が変形したり本来関節ではない場所が関節の用に動いてぐらぐらしてしまったりする状態(偽関節)です。

状態

等級

長管骨に変形を残すもの

第12級8号

1下肢に偽関節を残すもの

第8級9号

1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

第7級10号

短縮障害

短縮障害は、骨折などの影響で一方の脚が他方の脚より短くなってしまう障害です。

状態

等級

1下肢を1センチメートル以上短縮したもの

第13級8号

1下肢を3センチメートル以上短縮したもの

第10級8号

1下肢を5センチメートル以上短縮したもの

第8級5号

下肢の後遺障害に関する判例

下肢の後遺障害に関する判例

以下では、下肢の後遺障害が問題となった裁判例を3つ、ご紹介します。

加害者がセンターオーバーして衝突、被害者に下肢の後遺障害が認められた事例

被害者が通常通りに車を運転していたときに、対向車両がセンターオーバーしてきて衝突された交通事故です。被害者は、右脛骨・腓骨遠位端骨折、右肘・左膝挫創による加療11ヶ月の傷害を負いました。

 

後遺障害は、右足関節痛に「局部に頑固な神経症状」があるとして12級13号、額の真ん中に傷跡が残ったことによる「外貌醜状」で14級10号、右上肢の「醜状障害」で14級4号が認定され、併合によって12級となりました。後遺障害慰謝料が360万円、労働能力喪失率14%の後遺障害逸失利益、入通院慰謝料や治療費などが認められて、最終的に被告に対し2,209万2,318円の支払命令が下りました。

事件番号  平成21(ワ)354

事件名  損害賠償請求事件

裁判年月日  平成22年12月14日

裁判所名・部  秋田地方裁判所

事故で植物状態となった被害者のケース

被害者が交差点を直進して進入したところ、右折しようとした加害者の車両に接触された交通事故です。被害者は脳挫傷、右大腿開放性骨折、右血気胸、両膝挫創の傷害を負いました。治療のために4ヶ月ほど入院しましたが意識が戻らず、症状固定して頭部外傷による四肢痙性麻痺と高度意識障害(いわゆる植物状態)の後遺障害(1級)が残りました。

 

この事案では、被害者が最終的には植物状態となったために、「常時介護を要する神経障害」として1級が認定されたのですが、下肢にも障害を負っているため、その部分も勘案して後遺障害認定されています。逸失利益が6,795万1,997円(労働能力喪失率100%)、後遺障害慰謝料2,600万円などが認められ、被告に対しては1億5,807万4,256円の支払命令が下りました。

事件番号  平成13(ワ)2568

事件名  損害賠償請求

裁判年月日  平成14年8月19日

裁判所名・部  名古屋地方裁判所

事故で下肢に高度の麻痺が残ったケース

加害者が高スピードで運転中にハンドル操作を誤り、土手に激突して大破した交通事故です。被害者は加害者の車両に同乗していて重傷を負い、傷害内容は脱臼骨折、左の4本の肋骨骨折、両肺挫傷などでした。

 

症状固定しても腰から下の部位が完全麻痺状態となり、筋萎縮や下肢の関節の自動運動不能、膀胱・直腸機能全廃、神経因性膀胱という重度な後遺障害が残りました。自賠責の事前認定により1級の後遺障害(神経系統または精神に著しい障害を残し、常時介護を要する)の認定を受けています。 

 

裁判所は逸失利益を5,179万9,075円、後遺障害慰謝料を1,800万円(家族の分を含む)、入通院慰謝料を1,000万円などと認め、最終的に被告に対して8,633万6,543円の支払命令を下しました。このケースでも、被害者は麻痺などの神経障害によって1級(要介護)に認定されているのであり、下肢の後遺障害だけで1級となったわけではありません。

 

ただ下肢に損傷を受けた事案では、これほど重大な事故にもつながるということを知っておきましょう。

事件番号  平成11(ワ)4156

事件名  損害賠償請求

裁判年月日  平成14年3月25日

裁判所名・部  名古屋地方裁判所

下肢の後遺症で後遺障害認定を得るには

下肢の後遺症で後遺障害認定を得るには

下肢に後遺症が残ったら、まずは確実により高い等級の後遺障害認定を得るべきです。そのため、以下のような対応を進めましょう。

まずは治療を受けて症状固定する

まずは、症状固定するまで入通院による治療を続けることが重要です。症状固定とは、「それ以上治療をしても回復が期待できない状態」です。

 

症状固定時に残っている症状について「後遺障害認定」されます。間違っても症状固定前に治療を辞めてはなりません。

医師に後遺障害診断書を作成してもらう

症状固定したら、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。後遺障害診断書とは、後遺障害の内容に特化した診断書です。

 

自賠責の後遺障害認定では、後遺障害診断書の記載内容が非常に重視されるので、医師や弁護士とも相談しながら慎重に対応しましょう。

後遺障害の申請をする

後遺障害診断書を入手したら、いよいよ後遺障害認定の申請を出します。その際、「事前認定」と「被害者請求」という2種類の方法があります。

事前認定

事前認定とは、加害者の保険会社に後遺障害認定の手続きを任せる方法です。事前認定するときには、医師から受けとった後遺障害診断書を相手の保険会社の担当者に渡すだけで手続きが完了します。

 

あとは、保険会社の担当者が申請を進め、結果が出たら報告してくれます。

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身が加害者の自賠責保険へ後遺障害認定の申請をする方法です。被害者請求の場合には、後遺障害診断書だけではなくこれまでの経過診断書や診療報酬明細書、事故証明書や事故発生状況報告書など、被害者自身がいろいろな書類を集めて提出しなければなりません。

 

ただ、自分の裁量で有利な証拠など提出しやすいので、後遺障害認定されるかどうか微妙な事案などでは有効です。

弁護士に相談する

下肢の後遺障害が残ると、難しい対応を迫られる可能性があります。さまざまな障害と併合認定されるケースもあれば、後遺障害の証明自体に困難を伴うケースも多々あります。

 

そのようなときは、弁護士に対応してもらうことが効果的です。後遺障害認定を申請するなら、できるだけ早めに弁護士に相談をしてサポートしてもらうのが良いでしょう。

まとめ

交通事故に遭って下肢に後遺障害が残ったら、関節が動きにくくなったり骨が変形してしまったりして歩きにくくなるケースが多数です。適切に後遺障害認定を受けましょう。

 

また、高額な慰謝料や逸失利益を払ってもらうには弁護士の力が必要です。交通事故で後遺障害が残りそうな見込みとなったら、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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