後遺障害が認定されない原因と非該当に納得できないときの対処法

交通事故後に治療を受けても完治せずに後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けることが重要です。
後遺障害として認定されたら高額な賠償金が支払われるので、等級認定を受けられないときと比べると、数百万円以上の開きが出ることも少なくありません。
もし後遺障害の認定結果に納得できないなら、異議申立てによって結論が変わることもあります。
本記事では、後遺障害が認定されない原因や、非該当になったときの対処法などを解説します。
後遺障害が認定されない5つの理由
交通事故でむちうちなどの症状が残っているのに、後遺障害として認定されないのはどのような原因によるものでしょうか?
1.後遺障害診断書の記載が不十分だから
よくあるのは、後遺障害診断書の記載内容が不十分なケースです。
医師が交通事故の後遺障害に詳しくない場合や、患者側からの説明不足や医師とのコミュニケーション不足などが原因となって、適切な内容の後遺障害診断書を書いてもらえないパターンです。
2.症状を裏付ける証拠が不足しているから
もうひとつ多いのが、根拠資料の不足です。
後遺障害等級認定の流れとしては、必要書類を準備して、自賠責保険会社を経由して損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送付したのち、書面にて認定基準を満たしているかどうかが判断されます。
後遺障害認定を受けるには、レントゲン・MRI・CTなどの画像検査結果や神経学的検査、電気生理学的な検査など、各種の検査方法を実施して結果を提出する必要があり、こうした資料が足りていなければ認定されません。
特にむちうちは後遺障害として認定されにくい
交通事故ではむちうちを発症するケースが多いですが、後遺障害認定を否定されるケースが多いのもむちうちです。
むちうちによる疼痛は、雨が降ったり気温が低かったりと、外的要因の変化によって出たり出なかったりすることがあります。
また、レントゲン・CT・MRIなどでは何ら異常がみられないケースもよくあります。
このように、症状が安定しない場合や異常所見が認められない場合などは、それらを理由に後遺障害該当性が否定されることは多いです。
むちうちで後遺障害認定されにくい理由について、詳しくは以下の記事で解説しています。
3.交通事故との因果関係が不明確だから
たとえ症状をしっかり立証できていても、なかには「交通事故とは無関係な傷病である」と判断されて、後遺障害認定を受けられないケースもあります。
たとえば、交通事故前から症状があった場合や、事故後に一旦完治した(ように見える)場合などです。
4.治療期間・通院日数が足りていないから
交通事故後にあまり頻繁に通院していないケースでも、後遺障害認定されない恐れがあります。
しっかり通院していないと、「後遺障害が残るほどのけがではないだろう」「通院していないのだから、その時点で完治したと考えられる」などと判断されるからです。
後遺障害認定を受けたければ、事故後の症状固定前の期間において、医師の指示に従って通院し続けることが重要です。
5.症状に一貫性がないから
後遺障害認定を受けるためには、症状に一貫性があることも大切です。
たとえば「治療開始してしばらくしてから痛みを主張し始めた場合」や「治療によって症状が落ち着いたあと、また痛みなどを主張して治療を再開した場合」などは、一貫性がないと判断される恐れがあります。
後遺障害が認定されずに納得できない場合の対処法
後遺障害等級認定の申請をして、もし認定基準を満たしていなければ非該当になってしまいます。
もし非該当になって納得いかない場合は、以下のような対応を検討しましょう。
被害者請求で異議申立てをする
異議申立てとは、後遺障害の審査機関に対し、再度後遺障害の認定のやり直しを求める手続きです。
被害者請求とは、被害者自身が書類などを準備して後遺障害認定の申請をおこなう方法です。
交通事故被害者が後遺障害認定の申請をする場合、相手方の任意保険会社に対応を任せる「事前認定」を選択するのが一般的です。
しかし、相手保険会社は必要最低限の書類しか提出しないことがほとんどなので、異議申立てをしても判断が覆る可能性は低いといわれています。
異議申立てを成功させるためにも、自分の判断で資料の追加・補充ができる被害者請求がおすすめです。
注意点として、1度目と同じ主張・立証をしても結果が変更される可能性は低いです。
異議申立てを成功させるには、後遺障害に該当することを基礎づけるような追加資料の提出が重要です。
紛争処理制度を利用する
自賠責保険・共済紛争処理機構に対して、紛争処理を依頼するという方法もあります。
紛争処理を依頼した場合、紛争処理委員会によって自賠責保険会社・共済組合の判断が妥当かどうかが審査されます。
ただし、これは一度しか利用できないため、十分に検討したうえで判断しましょう。
具体的な手続きの流れなどについては「紛争処理制度の概要」を確認してください。
裁判提起する
裁判を起こして、裁判所に等級認定の判断を求めるという方法もあります。
ただし、異議申立てなどと比べると手間や時間もかかるため、あくまでも最終的な手段として考えましょう。
また、裁判手続きでは専門知識などが必要であり、弁護士に依頼するのが一般的です。
後遺障害の異議申立てをして非該当から等級認定された事例
実際に異議申立てによって後遺障害認定されるケースにはどのようなものがあるのか、具体例を紹介します。
非該当から14級を獲得できたケース
交差点で停止中に、信号無視をした相手から追突されたという事故です。
被害者は、むちうちとなって頚椎捻挫と診断され、後遺障害の申請をしました。
保険会社の事前認定では、レントゲン画像で外傷が認められなかったことや、後遺障害診断書にも神経学的な所見が書かれていなかったことなどが原因で、後遺障害非該当と判断されました。
納得できなかった被害者は弁護士に相談し、被害者請求で異議申立てをおこない、MRIの鑑定書や本人が作成した日常生活報告書、事故状況報告書などの資料を提出して、症状と交通事故の因果関係の立証に努めました。
すると、症状の一貫性・現在の症状の残存が認められて、後遺障害14級の認定を受けることができました。
結果として、弁護士に相談し異議申立てをおこなったことで、慰謝料を含む賠償額全体で300万円の増額となったケースです。
非該当から12級を獲得できたケース
バイクで走行中、車道に入ってきた自動車を避けようとして転倒したという事故です。
被害者には肩関節の動揺や疼痛などの症状が残っていましたが、後遺障害がないことを前提に示談の提案がおこなわれている状況でした。
被害者は弁護士に依頼して異議申立てをおこない、弁護士を通じて紹介を受けた医師によるCT画像の鑑定書や主治医による意見書を準備・提出しました。
すると、非該当の判定が覆って12級の後遺障害認定を受けることができ、賠償金が大幅に増額しました。
後遺障害の認定を受けたいなら弁護士への相談がおすすめ
後遺障害認定を受けるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
ここでは、弁護士に依頼するメリット・デメリットや、弁護士費用の相場などを解説します。
弁護士に依頼するメリット
交通事故トラブルに注力する弁護士に相談すれば、「後遺障害認定のためにどのような治療を受けるべきか」「どのような資料を集めるべきか」などのアドバイスが望めます。
すでに後遺障害認定の申請をして非該当になってしまった方も、弁護士に新たな資料などを用意してもらって異議申立てをすることで判断が覆る場合もあります。
弁護士は、後遺障害申請・異議申立て・訴訟の手続き・相手方との示談交渉など、さまざまな手続きを代行してくれるので、交通事故被害者にとって心強い味方になってくれるでしょう。
弁護士費用の相場
交通事故後の対応を弁護士に依頼すると、おおよそ以下のような費用が発生します。
項目 |
相場 |
着手金 |
10万円~20万円程度 |
報酬金 |
弁護士の介入によって増額できた金額の10%~15%程度 |
ただし、後遺障害が認められるケースでは、多くの場合で賠償金額が相当程度アップするので、費用倒れのリスクはそれほど心配しなくてもよいかもしれません。
現実には逸失利益や休業損害なども上がるケースが多く、過失割合も修正されればさらに増額幅が大きくなります。
弁護士に相談するタイミング
交通事故で後遺障害が残りそうなとき、弁護士に依頼するのは早ければ早いほど良いです。
通院中から相談しておくと、適切な通院先の選び方や通院時の注意点などを教えてもらえます。
そうすれば、後遺障害の資料を十分に集めることができて、認定を受けやすくなります。
通院中に相談できなかった場合でも、症状固定後に後遺障害認定の申請をする際には、依頼するようにしましょう。
もし自分で後遺障害認定の申請手続きを終わらせてしまった場合でも、異議申立てをする際は弁護士に対応を依頼しましょう。
弁護士に依頼するデメリット
交通事故後に弁護士に依頼した場合、以下のようなデメリットもあります。
- 弁護士費用がかかる
- 弁護士を探す手間や時間がかかる
- 弁護士との相性が悪い場合、思うような結果にならない恐れがある など
ただし、後遺障害が残るようなケースでは弁護士の介入によって賠償金の増額が期待できますし、自動車保険の弁護士費用特約を利用できれば自己負担無しで済むこともあります。
また、当サイト「ベンナビ交通事故」であれば交通事故に注力する全国の弁護士を一括検索できるため、自分に合った弁護士をスムーズに見つけられます。
初回相談無料の法律事務所も多くあるので、あまりデメリットについては重く考えずに、まずは一度相談してみることをおすすめします。
まとめ
交通事故で後遺障害認定されなくても、諦めずに弁護士に相談してみましょう。
異議申立てによって結果が変わる可能性がありますし、もし変わらない場合は訴訟で争うことも可能です。
辛い症状が残ったときには、交通事故に詳しい弁護士に対応を依頼し、しっかり資料を揃えて後遺障害認定や異議申立てを成功させましょう。
弁護士に相談するかお悩みの方へ
下のボタンからあなた当てはまるものを選んで悩みを解消しましょう。
弁護士費用特約があれば 実質0円で依頼できます!

多くの保険会社では、被害者1名につき最大300万円までの弁護士費用を負担してくれます。特約があるか分からない方でも、お気軽にご相談ください。弁護士と一緒にご確認した上で依頼の有無を決めて頂けます。
特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
- 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士の選び方について詳しくみる
【人身事故被害者の方へ】事故直後・通院中いずれの場合もまずはご相談ください。弁護士への依頼で、結果が大きく変わるかもしれません。【初回面談無料】【着手金無料プランあり】【オンラインで全国対応可能】
事務所詳細を見る
【相談料・着手金:0円、成功報酬制、賠償金の適正診断:0円】

提示された賠償金に納得がいかない方は、アディーレへご相談を!適正な賠償金を受け取るためにサポートします◆自転車・バイク事故にも対応◆
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡


後遺障害等級・申請方法に関する新着コラム
-
本記事では、交通事故の被害に遭い橈骨頭骨折を負った方に向けて、橈骨橈骨折の症状や後遺症に関する基礎知識、橈骨橈骨折で認められる後遺障害等級の目安、適切な後遺障害...
-
交通事故で頚椎を損傷すると、どのような症状が出るのでしょうか?本記事では、頚椎損傷の主な症状や考えられる後遺症、加害者に請求できるお金について解説します。少しで...
-
交通事故による後遺症が残ったときは、後遺障害等級認定の手続きが必要です。等級認定を受けることができれば、賠償金の大幅な増額が期待できます。本記事では、後遺障害等...
-
交通事故に遭ったことが原因でけがを負い、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで保険会社から損害賠償を受け取れる可能性があります。交通事故による後遺...
-
交通事故に遭ってしまい腰椎圧迫骨折の治療を続けたものの、後遺障害等級が認定されず、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では、腰椎圧迫骨折で後遺障...
-
本記事では交通事故の被害に遭った方に向けて、後遺障害等級認定の定義、仕組み、認定機関、調査期間などの基礎知識、事前認定と被害者請求の大まかな流れ、後遺障害等級が...
-
事故で受けたケガが完治しない場合「後遺障害等級認定を受けるかどうか悩んでいる」という方もいるでしょう。この記事では、「後遺障害等級認定を受けることにはデメリット...
-
交通事故に巻き込まれた際は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。支払ってもらえる保険金額や逸失利益を計算したい場合もあるでしょう。本記事では、後遺障害...
-
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は別物であり、必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。本記事では、後遺障害11級に認定された方に向けて...
-
後遺障害10級には、肩・腕・手や股関節・膝・足を骨折して可動域が2分の1以下に制限された場合が含まれます。本記事では、後遺障害10級の具体的な症状や認定基準、後...
後遺障害等級・申請方法に関する人気コラム
-
【弁護士監修】交通事故で後遺障害となり第14級と認定された場合、後遺障害慰謝料の相場がいくらになるのか、計算方法や示談金額、第14級の認定基準などを徹底解説。正...
-
後遺障害診断書の概要や入手方法、書き方と記入例、後遺障害の等級認定を獲得するためのポイントのほか、医師が診断書を書いてくれない場合とその対処法、後遺障害診断書の...
-
今回お伝えする内容は、後遺障害等級12級に該当する症状と認定の方法、そして、後遺障害等級12級の適切な慰謝料を獲得する7つの知識をご紹介します。
-
交通事故に遭った被害者のために、後遺障害の基礎・基本を解説します。適切な治療やリハビリを受けている場合でも、後遺障害を負ってしまうかもしれません。そのようなとき...
-
交通事故における症状固定とは、むちうちなどのような後遺障害等級の獲得や示談時期などを決める際に重要な意味があります。安易に保険会社から症状固定日の提案に同意する...
-
交通事故トラブルを弁護士に相談すれば、自身に有利な条件で問題解決できる可能性が高くなります。しかし、費用面が気がかりで躊躇している方もいるのではないでしょうか。...
-
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳に損傷を負ったことで起こる様々な神経心理学的障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など)...
-
後遺障害等級13級に該当する症状と後遺障害等級13級を獲得する手順をご紹介していきます。
-
後遺障害の認定が非該当になった場合に、異議申し立てを行うための方法と、成功させるコツをご紹介します。
-
後遺障害等級10級に認定された場合、その後遺障害が与える労働能力喪失率は27%と設定されており、後遺症が残った場合はいよいよ実生活にも多大な影響を与える症状が多...
後遺障害等級・申請方法の関連コラム
-
後遺障害には第1級〜第14級までの等級が設定されていますが、その中でも第1級〜第3級は家事や学業も含めた社会復帰が事実上不可能とされる症状も多く含まれています。...
-
後遺障害の等級で14級9号が認定された場合の、示談金(慰謝料)請求事例をご紹介します。保険会社が提示する示談の条件が必ず適正とは限りません。示談の内容に納得でき...
-
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は別物であり、必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。本記事では、後遺障害11級に認定された方に向けて...
-
交通事故トラブルを弁護士に相談すれば、自身に有利な条件で問題解決できる可能性が高くなります。しかし、費用面が気がかりで躊躇している方もいるのではないでしょうか。...
-
後遺障害診断書は後遺障害認定を受けるために必須の書類です。しかし、医師が診断書を書いてくれないトラブルが時折生じます。この記事では、医師が後遺障害診断書の作成を...
-
交通事故により重度の後遺障害を負った場合、加害者や保険会社から受け取る損害賠償とは別に、国より「障害年金」を受給することが可能です。この記事では障害年金の制度や...
-
バイクで腕や足を切断する事故に遭った場合、切断部位・認定等級・被害者の年収・年齢などによって獲得できる金額は異なります。この記事では、腕や足の切断事故に遭った際...
-
後遺障害の認定は書類審査により判断されます。申請内容に不備があると非該当になりやすいため、後遺症があるのに等級を獲得できないケースは珍しくありません。そこで、こ...
-
追突事故の代表的な負傷としてむちうちが挙げられます。むちうちは治療をしても痛みが治らず、後遺障害として扱われるケースも珍しくありません。その場合は、後遺障害認定...
-
交通事故により眼球やまぶたが傷ついたり、機能障害を負ったりします。この記事では、眼球やまぶたに関する後遺障害について、該当する症状や後遺障害等級、慰謝料相場をす...
-
バイクは運転者の体が丸出しになっている乗り物です。そのため、交通事故では重症を負ってしまう可能性が高く、後遺症が残るケースも珍しくありません。この記事では、後遺...
-
後遺障害認定されたら具体的に何がどうなるのでしょうか。この記事では、後遺障害認定されたら発生する慰謝料や逸失利益などのお金の知識や、後遺障害認定前と認定後の流れ...
後遺障害等級・申請方法コラム一覧へ戻る