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交通事故で治療後も完治せずに後遺症が残った場合、「後遺障害認定」を受けることが重要です。後遺障害として認定されたら高額な賠償金が支払われるので、認定を受けられないときと比べると、数百万円以上の開きが出ることも少なくありません。
後遺障害の認定結果に納得できないなら、「異議申し立て」によって結論が変わることもあります。以下では、後遺障害が認定されない原因と「非該当」になったときの対処法を解説します。
交通事故でむちうちなどの症状が残っているのに、後遺障害として認定されないのはどういった原因によるものでしょうか?
よくあるのは、後遺障害診断書の記載内容が不十分なケースです。医師が交通事故の後遺障害に詳しくない場合や、患者側からの説明不足、医師とのコミュニケーション不足などが原因となって、適切な内容の後遺障害診断書を書いてもらえないパターンです。
もう1つ、多いのが根拠資料の不足です。後遺障害認定を受けるには、レントゲン、MRI、CTを始めとした画像検査結果、神経学的検査、電気生理学的な検査など、各種の検査方法を実施して結果を提出する必要があり、こうした資料が足りていなければ認定されません。
症状をしっかり立証できていても、「交通事故とは無関係な傷病である」と判断されて、後遺障害認定を受けられないケースがあります。交通事故前から症状があった場合や、事故後いったん完治した(ように見える)場合です。
交通事故後、あまり頻繁に通院していないケースでも後遺障害を否定されやすくなっています。通院していなければ、「後遺障害が残るほどのけがではないだろう」「通院していないのだから、その時点で完治したと考えられる」と判断されるからです。
後遺障害認定を受けたければ、事故後、症状固定前の期間において、まじめに通院し続けることが重要です。
交通事故では「むちうち」になる方が非常に多いのですが、後遺障害認定を否定されるケースが非常に多いのも、また「むちうち」です。なぜむちうちでは後遺障害を否定されやすいのでしょうか?
むちうちによる疼痛は、常時あるというより、雨が降ったり、気温が低かったりと、外的要因の変化により出たり出なかったりということがあります。このように症状が安定しない場合、常時ある症状でないとして後遺障害該当性が否定されることは多いです。
むちうちになっても、レントゲンやCTはおろか、MRIにも何らの異常が見られないケースが多数です。このように異常所見が認められない場合も、後遺障害該当性が否定されることは多いです。
むちうちで後遺障害認定されにくい理由について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
関連記事:むちうちが嘘と疑われたら|軽い事故追突でも痛みを伝えるポイント
後遺障害認定の申請をしたとき、認められなければ「非該当」になってしまいます。もしも非該当になったら、「異議申し立て」という方法で非該当の判断が変更される可能性があります。
異議申し立てとは、後遺障害の審査機関である自賠責保険に対し、再度後遺障害の認定申請のやり直しを求める手続きです。異議申し立ての際に追加で資料を提供することで、判断が変更されて後遺障害認定を受けられる可能性があります。
この点、認定するのは1度目と同じ自賠責ですから、1度目と同じ主張、立証をしても結果が変更される可能性は低いです。異議申し立てを成功させるには後遺障害に該当することを基礎づけるような追加資料の提出が重要です。
関連記事:後遺障害の異議申し立てをするには|等級見直しを成功させる方法を解説
異議申し立ては、「被害者請求」という方法で行うとより効果的と言われています。被害者請求とは、被害者自身が自賠責保険に対して後遺障害認定や保険金請求をする手続きです。
交通事故被害者が後遺障害認定の申請をするとき、多くのケースでは「事前認定」という方法が利用されています。これは相手の任意保険会社に後遺障害認定の申請を任せる方法です。
しかし、任意保険会社は必要最低限の書類しか提出しないことがほとんどですので、異議申し立てをしても判断が覆る可能性は低いと言われています。そこで、異議申し立てをするときには、自分の判断で資料の追加・補充ができる被害者請求がおすすめとされています。
実際に異議申し立てによって後遺障害認定されるケースにはどういったものがあるのか、具体例をご紹介します。
交差点で停止中に、信号無視をした相手から追突された交通事故です。被害者は、むちうちとなって「頚椎捻挫」と診断され、後遺障害の申請をしました。
保険会社の事前認定では、レントゲン画像で外傷が認められなかったことや、後遺障害診断書にも神経学的な所見が書かれていなかったことなどが原因で、後遺障害非該当と判断されました。納得できなかった被害者は弁護士に相談し、被害者請求の方法で異議申し立てを行い、MRIの鑑定書や本人が作成した日常生活報告書、事故状況報告書などの資料を提出して、症状と因果関係の立証に努めました。
すると、「症状の一貫性・現在の症状の残存」が認められて、後遺障害14級の認定を受けられました。
バイクで走行中、車道に入ってきた自動車をよけようとして転倒した交通事故の事案です。被害者には肩関節の動揺や疼痛などの症状が残っていましたが、後遺障害がないことを前提に示談の提案が行われている状況でした。
被害者は弁護士に依頼して異議申し立てを行い、弁護士を通じて紹介を受けた医師によるCT画像の鑑定書や主治医による「意見書」を準備・提出しました。すると、非該当の判定が覆って12級の後遺障害認定を受けることができ、賠償金が大幅にアップしました。
後遺障害認定を受けるためには、必ず弁護士に依頼すべきです。素人では、自賠責保険の後遺障害判断基準を正確に理解し、医学的に必要十分な主張や立証をできないからです。
知り合いの医師に鑑定書や意見書を書いてもらうのも難しいでしょう。異議申し立ての段階からではなく、できれば当初の段階から弁護士に依頼することが望ましいと言えます。
交通事故で弁護士に依頼すると、だいたい以下のような費用が発生します。
費目 | 金額 |
着手金 | 10~20万円 |
報酬金 | 弁護士介入で増額された金額の10~15% |
ただ、後遺障害が認められるケースでは、多くの場合賠償金額が相当程度アップするので、費用倒れのリスクはそれほど心配しなくてもよいかもしれません。現実には逸失利益や休業損害なども上がるケースが多く、過失割合も修正されればさらに増額幅が大きくなります。
後遺障害が残ったケースで、弁護士に示談交渉を依頼したときに費用倒れになる心配はほとんど皆無です。
交通事故で後遺障害が残りそうなとき、弁護士に依頼するのは早ければ早いほど良いです。できれば通院中から相談しておくと、適切な通院先の選択方法や通院の際の注意点を教えてもらえます。
そうすれば、後遺障害の資料を十分に集めることができて、認定を受けやすくなります。通院中に相談できなかった場合でも、症状固定後、後遺障害認定の請求をする際には、依頼するようにしましょう。
それにも間に合わず、自分で後遺障害認定を終わらせてしまっていたら、異議申し立ての際に弁護士に対応を依頼すべきです。自分で異議申し立てをしても、ほとんどのケースで認定を覆してもらうことは不可能です。
交通事故で後遺障害認定されなくても、諦めずに弁護士に相談してみましょう。異議申し立てによって結果が変わる可能性がありますし、それでもダメなら訴訟で争うことも可能です。
辛い症状が残ったときには、交通事故に詳しい弁護士に対応を依頼し、しっかり資料を揃えて後遺障害認定や異議申し立てを成功させましょう。
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