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交通事故に遭うと、その後頻繁にめまいが起こる方がおられます。そのようなとき、「後遺障害」として認定を受けて慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があります。
めまいが起こるときには、どういった後遺障害が認定される可能性があるのでしょうか?今回は、交通事故の「めまい」で後遺障害が認定される症状やこれまでに後遺障害認定された事例をご紹介します。
まずはめまいが起こったとき、どのような後遺障害が認定される可能性があるのか、症状と認定等級を見てみましょう。交通事故の自賠責の認定基準には明確に「めまいの後遺障害」はありませんが、労災の認定基準にその基準が存在します。
以下がその「失調、めまい及び平衡機能障害」の労災認定基準です。
症状 |
等級 |
生命の維持に必要な身のまわり処理の動作はできても、高度の失調や平衡機能障害のために労務に服することができない |
|
著しい失調または平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下して一般平均人の4分の1程度となっている |
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中等度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の 2分の1以下程度に低下している |
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通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ平衡機能検査で明らかな異常所見があって就労可能な職種が相当程度に制限される |
|
通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があって、かつ平衡機能検査で異常所見が認められる |
|
平衡機能検査で異常所見は認められないが、めまいの自覚症状があり、その症状を医学的に合理的に推測できる |
交通事故でめまいが残った場合には、上記と等級は同じでも「神経障害」として後遺障害認定されるケースが多数です。
めまいの後遺障害が残ることの多いのは、以下のような障害を負ったケースです。
追突事故などに遭い「バレー・リュー症候群」となった場合、めまいの発作が起こるケースが多々あります。バレー・リュー症候群とは、交通事故の衝撃で神経を損傷し、交感神経に異常が発生する症状です。
全身の自律神経に異常が発生して身体中に多種多様な症状が出ますが、そのうちの1つにめまいや耳鳴りなどがあります。
脳挫傷や頭蓋骨骨折、脳内出血やくも膜下出血などにより脳を損傷すると、その後に平衡機能が失われてめまい発作が起こるようになることがあります。交通事故後、めまい発作が起こるようになったら、「気のせいかな」などと放置せずに脳神経外科などの適切な診療科を受診しましょう。
以下では、「めまい」によって後遺障害が認定された裁判例を2つ、ご紹介します。
バスが急停止したために、乗車していた被害者が負傷して「回転性めまい」となった事案です。裁判では被害者の「耳の後遺障害(聴力障害)」と「回転性めまい」の後遺障害の有無が争われました。
裁判所は「耳の後遺障害」については否定しましたが、「回転性めまい」については症状固定後も残存しているとして、後遺障害12級13号の「局部の頑固な神経症状」を認定しました。賠償金としては後遺障害慰謝料290万円、後遺障害逸失利益393万6,275円を認め、他に治療費や文書料等の損害を合計して、被告に対し709万39円の賠償金支払命令を下しました。
加害者が被害者の車両に衝突したため、被害者が「高次脳機能障害」となった事例です。被害者は事故後頸椎捻挫などと診断されて整形外科で治療を受けていましたが、記憶力の低下や集中力の低下、「漢字を書けなくなる」など学習能力の著しい低下、性格の変化、めまいが続くなどの異常な状態となりました。
こういった状況やMRS、PETなどによる検査結果に異常が認められたことなどが評価されて「高次脳機能障害」と認定されました。認定等級は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」として3級3号、後遺障害慰謝料は1,990万円、後遺障害逸失利益は8,605万9,619円とされました。
上記に治療費や傷害慰謝料、弁護士費用などを加算し、被告に対しては1億1,793万1,619円の支払命令が下りました。
参考:平成16(ネ)60 交通事故による損害賠償請求控訴,附帯控訴事件 |裁判所
上記のように、後遺障害を負った場合は慰謝料の金額が高額になる傾向があります。金額が高額なために、保険会社に相場以下の金額を提示されたり、示談交渉がまとまらないことも起こり得ます。
まずは、適切な慰謝料額を把握することから始めましょう。
交通事故後、症状固定しても「めまい」の症状が治まらないのであれば、「後遺障害認定」を受けることを検討しましょう。後遺障害と認められないと、後遺障害慰謝料や逸失利益を払ってもらえないためです。
後遺障害認定を受けるときは、一般的には以下のような流れで行います。
交通事故で後遺障害認定を受けるためには、「後遺障害診断書」が必要です。後遺障害診断書は後遺障害の内容について詳しく説明するための診断書です。
後遺障害診断書は医師に作成を依頼するものですが、依頼のタイミングは「症状固定したとき」です。症状固定とは、交通事故後治療を続けてきて「それ以上治療しても状態が改善しなくなったタイミング」です。
医師が適切な時期を判断するので、自己判断で勝手に治療をやめてはなりません。症状固定したら自賠責から後遺障害診断書の書式を取り寄せて医師に渡し、作成を依頼しましょう。
また、高次脳機能障害などのケースでは他に、「頭部外傷後の意識障害に関する所見」「神経系統の障害に関する医学的所見」という書類も作成を依頼する必要がありますし、被害者の家族が「日常生活状況報告書」を作成する必要もあります。
書類を用意できたら、自賠責保険に提出して後遺障害認定請求を行います。その際「事前認定」と「被害者請求」という2種類の方法があります。
事前認定とは、加害者の任意保険会社に後遺障害認定の手続きを任せる方法です。この場合には、書類を相手の任意保険担当者に送れば手続きが完了し、後は任意保険の担当者から結果の報告があります。
被害者請求とは、被害者自身が加害者の自賠責保険へ後遺障害認定の請求を行う方法です。この場合には、事故証明書や事故発生状況報告書、診療報酬明細書などの書類をすべて揃えて被害者が自分で自賠責保険に送付し、手続きを進める必要があります。
被害者請求は事前認定に比べて手間がかかりますが、自分の裁量で手続きを進められるメリットがあります。高次脳機能障害などの難しい事案で後遺障害認定されるかどうか微妙なケースでは、自分で積極的な立証をできる「被害者請求」をするのが良いでしょう。
後遺障害認定の請求をしても認定されなかった場合や、思ったより等級が低くなってしまった場合には、以下のような対応をしましょう。
自賠責による後遺障害認定結果に対しては「異議申し立て」ができます。手続きとしては、自賠責保険に「異議申立書」を提出するだけでできますが、それだけでは認定結果が覆る可能性は高くありません。
効果的に認定結果を変更してもらうには、新たな資料が必要です。たとえば、新たに検査を受けて結果の資料をつける、医師に意見書や新たな診断書を作成してもらうなどの工夫をしましょう。
どのように対応するのが最善か判断しにくい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
自賠責による後遺障害認定結果に異議申し立てをする場合には、弁護士に対応を依頼することも可能です。たとえば、1度目の請求の際に事前認定を利用して相手の任意保険会社任せにしてしまった場合、異議申し立ては弁護士に依頼して被害者請求を行うと等級が変更される可能性を少しでも高められるかもしれません。
被害者請求は自分でやるととても面倒ですし、被害者が自分一人で医師に依頼して有利な資料を作成してもらうことなどは困難です。弁護士に依頼すると、弁護士が医師に連絡を取って作成を依頼したい意見書や診断書の内容などを説明してくれますし、受けるべき検査の内容なども説明・提案してくれます。
このように、弁護士と医師が連携することにより、等級認定の結果が覆る可能性が高まるのです。交通事故の後遺障害認定結果に納得できない場合、まずは弁護士に相談してみるのが有効です。
交通事故後、めまいの後遺障害が残ったときには高次脳機能障害などで非常に高い等級が認定される可能性もあります。「たかがめまい」と放置せず、早めに交通事故に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。
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