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高次脳機能障害の慰謝料相場はいくら?後遺障害等級ごとの金額を解説

監修記事
高次脳機能障害の慰謝料相場はいくら?後遺障害等級ごとの金額を解説

高次脳機能障害で症状固定となり後遺障害等級認定されると、その症状の度合い(等級)に応じて慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求をする権利が認められます

ただし、交通事故の慰謝料の金額は、主に加害者の保険会社との話し合いで決定されます。

その際に慰謝料の相場を知らないと、慰謝料が少なく見積もられた場合に気が付けず損をしてしまう恐れもあるので注意が必要です。

本記事では、高次脳機能障害で請求できる慰謝料の相場や判例などを紹介します。

交通事故で高次脳機能障害を負った場合は参考にしてください。

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高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳の一部が損傷して脳機能に障害が生じ、日常生活に支障をきたしている状態のことを指します。

交通事故や労災事故などの外傷によって発症するケースもあれば、くも膜下出血や脳梗塞などの病気が原因で発症するケースもあります。

高次脳機能障害の症状としては記憶障害や注意障害などがあり、一見すると他者からは障害の存在がわかりにくいという点が特徴的です。

交通事故で後遺障害等級認定を受けるためには、症状の存在や程度などを証明しなければならないため、どのような資料を集めるべきか適切に判断する必要があります。

高次脳機能障害の主な4つの症状

ここでは、高次脳機能障害の主な症状について解説します。

1.記憶障害

高次脳機能障害の症状のひとつとして記憶障害があります。

記憶障害は前向性健忘・逆行性健忘・全健忘の3種類に分類され、それぞれの症状は以下のとおりです。

項目

具体的な症状

前向性健忘

高次脳機能障害の発症前の記憶は残っているが、発症後のことについて記憶できない

逆行性健忘

高次脳機能障害の発症後のことについては記憶できるが、発症前の記憶が残っていない

全健忘

高次脳機能障害の発症前・発症後いずれの記憶も失っている

2.注意障害

注意障害とは、注意能力が低下して作業などに集中できなくなる状態のことです。

注意障害は持続性注意障害・選択性注意障害・転換性注意障害・配分性注意障害の4種類に分類され、それぞれの症状は以下のとおりです。

項目

具体的な症状

持続性注意障害

注意力が続かずに長時間の作業ができない

選択性注意障害

ほかのことが気になって作業を続けられない

転換性注意障害

一つの作業に集中しすぎて別の作業に移れない

配分性注意障害

複数の作業を同時におこなうことができない

3.遂行機能障害

遂行機能障害とは、スムーズに物事を進行できなくなる状態のことです。

遂行機能障害では、以下のとおり目標設定・計画立案・計画実行・効果的・効率的な行動などについて障害が生じます。

項目

具体的な症状

目標設定の障害

今後について目標を定めることができない

計画立案の障害

目標達成のための計画を立てることができない

計画実行の障害

計画通りに物事を進めることができない

効果的・効率的な行動の障害

予定変更・計画変更などの修正ができない

4.社会行動障害

社会行動障害とは、対人関係がうまくいかなくなる状態のことです。

社会行動障害の具体的な症状としては以下のとおりです。

項目

具体的な症状

意欲・発動性の低下

自発的な行動ができなくなる

人格機能の低下

子どもっぽい言動になる、家族に甘えたがる

感情コントロールの低下

怒りっぽくなる、暴力的になる

固執性

細かいことにこだわるようになる

対人関係の障害

相手の気持ちを察することができなくなる

上記の4つの症状以外にも、失認症・失行症・言語障害・半側空間無視などの症状もあります。

高次脳機能障害で請求できる慰謝料・賠償金の内訳

交通事故における慰謝料は、あくまでも損害賠償金の一部です。

よく混同されがちですが、慰謝料は治療費や休業損害などと同じく「損害賠償の一項目」として扱われます。

高次脳機能障害を負った場合に請求できる賠償金としては、主に以下があります。

内訳

内容

傷害(入通院)慰謝料

傷害を負ったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料。入通院期間・回数を基準に算出されるため、入通院慰謝料とも呼ばれます

後遺障害慰謝料

後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料

後遺障害逸失利益

後遺障害によって労働能力が低下したことで、将来獲得できたはずの収入が減ったことに対して支払われる金銭

治療関係費

治療のために支出した費用(治療費・入院費・など)

通院交通費

通院のための交通費

付添介護費

(医師の指示や被害者の年齢などから)治療期間中に付添が必要となった場合の費用

休業損害

事故による受傷の治療期間中、受傷や治療のために仕事ができずに失った利益に対して支払われる金銭

将来介護費

後遺障害によって治療終了後に介護が必要となった場合に請求できる費用

交通事故の慰謝料には3つの算出基準がある

交通事故の慰謝料には3つの算出基準があり、どの基準が適用されるかによって慰謝料の金額が変わってきます。

慰謝料の金額は「弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準」で、弁護士基準が最も高額になりやすい傾向にあります。

交通事故の慰謝料を決める3つの基準

自賠責基準

交通事故により負傷した被害者に対して、法令で決められた最低限の補償をおこなうことを目的とした基準。

任意保険基準

自動車保険会社が独自に設けている基準。自賠責基準よりも高額な慰謝料が設定されている場合が多い

弁護士基準・裁判所基準

裁判所の判例などを参考にした基準。自賠責基準や任意保険基準よりも高額になることが多い。

弁護士基準は、慰謝料請求を弁護士に依頼した場合に適用される基準です。

高次脳機能障害が後遺障害認定されている状況であれば、弁護士費用を差し引いてもほかの基準との差額が大きいので、弁護士に依頼したほうが得をする可能性が高いでしょう。

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高次脳機能障害の慰謝料の相場額

高次脳機能障害で請求できる慰謝料は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類あります。

以下では、各基準の相場額を紹介します。

高次脳機能障害で請求できる2つの慰謝料

傷害(入通院)慰謝料

交通事故によって傷害を負った精神的苦痛に対して請求できる慰謝料

後遺障害慰謝料

交通事故によって後遺障害が残った精神的苦痛に対して請求できる慰謝料

傷害(入通院)慰謝料

傷害(入通院)慰謝料の金額は、実際に入通院をした期間・日数によって決定されます。

ケースごとの相場を比較すると以下のとおりです。

なお、1ヵ月間ごとの通院日数は10日と仮定して計算しています。

治療日数

自賠責基準(※1)

任意保険基準(推定)

弁護士基準(※2)

3ヵ月間の通院

25万8,000円
(25万2,000円)

37万8,000円

73万円
(53万円)

6ヵ月間の通院

51万6,000円
(50万4,000円)

64万2,000円

116万円
(89万円)

1ヵ月間の入院

8万6,000円
(8万4,000円)

25万2,000円

53万円
(35万円)

※1:()内は2020年3月31日以前に起きた交通事故の慰謝料です。
※2:()内はむちうち症などの他覚的所見がない負傷の場合の慰謝料です。

以下では、各計算基準での入通院慰謝料の計算方法や相場を解説します。

自賠責基準の場合

自賠責基準の場合、以下の計算式で入通院慰謝料を計算します。

入通院慰謝料の計算式
  1. 4,300円×治療期間(病院に通っていた期間)
  2. 4,300円×実通院日数(実際に病院に通った日数)×2

※1・2のうち少ないほうの金額が採用されます。
※2020年3月31日以前に発生した事故では、1日あたりの金額を4,200円で計算します。

任意保険基準の場合

任意保険基準については、保険会社によって計算方法が異なるうえ公表されていません。

あくまでも以下の表は目安であり、明確な金額は不明です。

任意保険基準

弁護士基準の場合

弁護士基準の場合、「他者から見て症状の存在が確認できるかどうか」によって、以下のように金額が異なります。

他覚症状がある場合弁護士基準:他覚症状がある場合

他覚症状がない場合弁護士基準:他覚症状がない場合

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料の金額は後遺障害の等級によって決定されます。

後遺障害等級は1級から14級まであり、基本的に高次脳機能障害の場合は1級・2級・3級・5級・7級・9級・12級・14級のいずれかが認定されます。

まず、各等級の認定基準は以下のとおりです。

等級

認定基準

1級1号(要介護)

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

2級1号(要介護)

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

3級3号

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

5級2号

神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

7級4号

神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

9級10号

神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号

局部に神経症状を残すもの

次に、各計算基準での後遺障害慰謝料の相場は以下のとおりです。

等級

自賠責基準

(2020年3月31日までに発生した事故)

任意保険基準(推定)

弁護士基準

第1級

1,150万円

(1,100万円)

1,600万円程度

2,800万円

第2級

998万円

(958万円)

1,300万円程度

2,370万円

第3級

861万円

(829万円)

1,100万円程度

1,990万円

第5級

618万円

(599万円)

750万円程度

1,400万円

第7級

419万円

(409万円)

500万円程度

1,000万円

第9級

249万円

(245万円)

300万円程度

690万円

第12級

94万円

(93万円)

100万円程度

290万円

第14級

32万円

40万円程度

110万円

高次脳機能障害の損害賠償・慰謝料の具体例

ここでは、実際に裁判所で判決が下された高次脳機能障害での損害賠償・慰謝料の具体例を紹介します。

過去に裁判所で出た損害賠償(慰謝料)の例1

項目

詳細

被害者

43歳、嘱託勤務、商品部にてデザイン業務

性別

男性

傷害の内容

脳挫傷・急性硬膜外血腫・頭蓋骨骨折・外傷性くも膜下出血・易怒性・記銘力低下・感情失禁・社会的適応性の障害(高次脳機能障害)・外傷後てんかん発作

獲得等級

5級2号

休業損害

82万8,306円

入通院慰謝料

120万円

後遺障害慰謝料

1,700万円

逸失利益

4,596万8,996円

将来の介助費用

1,460万2,737円

合計

7,960万39円

【参考元】京都地裁判決 平成17年12月15日

過去に裁判所で出た損害賠償(慰謝料)の例2

項目

詳細

被害者

高校1年生、15歳

性別

女性

傷害の内容

集中力の低下・記銘力低下・記憶障害

獲得等級

3級3号

入通院慰謝料

190万円

後遺障害慰謝料

1,990万円

逸失利益

8,605万9,619円

合計

1億785万9,619円

【参考元】札幌高裁判決 平成18年5月26日

まとめ

高次脳機能障害で請求できる慰謝料は「傷害(入通院)慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類あり、慰謝料には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類の算出基準が存在します。

慰謝料が高額になりやすい高次脳機能障害を負っている状態であれば、弁護士費用を差し引いても弁護士を雇ったほうが獲得金額の増額が期待できます

弁護士であれば、適切な損害賠償金の算出や等級獲得に向けた具体的なアドバイスのほか、任意保険会社との示談交渉の代行などのサポートもしてくれます。

初回相談無料の法律事務所もあるので、まずは気軽に一度利用してみることをおすすめします。

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この記事の監修者
田代 隼一郎 (福岡県弁護士会)
当事務所の弁護士は公益財団法人交通事故紛争処理センターに在籍しており、保険会社や裁判官との意見交換会などを行っています。知識と経験から依頼者様のメリットを最大化するよう尽力しています。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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