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右直事故でのバイクの過失割合や損害賠償請求のポイント

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
右直事故でのバイクの過失割合や損害賠償請求のポイント

バイクでの右直事故に巻き込まれてしまった場合、どのような被害を負ったのかによって請求できる賠償金は異なります。さらに信号機の色や車両の位置関係など、どのような状況での事故だったのかによって双方に生じる過失(責任)の大きさも異なります。

トラブルなく損害賠償請求を済ませて、適正な賠償金を受け取るためにも、この記事で事故に遭った際のポイントをおさえておきましょう。この記事では、右直事故でのバイクの過失割合や請求できる賠償金の種類、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

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バイク事故の発生状況

まずは、バイク事故の発生状況や事故が起きる原因などを解説していきます。

右直事故は単独事故に並んで多く発生している

引用元:二輪車の交通死亡事故統計(令和元年中)|警視庁

上図は、2019年に東京都で発生した、バイクによる死亡事故の発生状況を示したグラフです。これによると、右折時に事故に遭って死亡した方は9名と、単独事故と並んで最も多いことがわかります。

また過去5年分の平均データでも8.8名と2番目に多く、東京都では右折時に事故が多く発生していることがわかります。

事故が起きる原因

引用元:平成30年中の交通事故の発生状況|警察庁

上図は、法令違反別の交通事故件数の年間推移を示したグラフです。交通事故が起きる主な原因として、上記のような8つの法令違反が挙げられ、なかでも安全不確認による事故が多いことがわかります。

特にバイクを運転する際は前傾姿勢となるため、目線が下に下がってしまって十分に安全確認ができず、結果的に事故につながってしまうこともあるでしょう。

さらに自動車と比べて車体が小さく小回りが利くため、無茶な追い越しやすり抜けなどをしてしまって事故につながることもあり得ます。

右直事故でのバイクの過失割合

右直事故が起きた場合、事故の当事者には過失が生じます。それぞれの過失の大きさについては、過失割合として「30:70」「50:50」などの形で示されます。

ただし過失割合は事故状況によってそれぞれ異なり、なかには「0:100 」となるようなケースもあります。

以下では図解を用いて解説していきます。

バイクが直進・自動車が右折のケース

信号機が設置されている

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク直進、自動車右折(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

15

85

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

60

40

直進車、右折車双方とも黄で進入

30

70

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

80

20

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

60

40

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

100

0

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク直進、自動車右折(右図)

バイク直進、自動車右折

15

85

バイクが右折・自動車が直進のケース

信号機が設置されている

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク右折、自動車直進(左図)

直進車、右折車双方とも青で進入

70

30

直進黄で進入、右折車青進入黄右折

25

75

直進車、右折車双方とも黄で進入

50

50

直進車は赤、右折車は青で進入赤で右折

10

90

直進車は赤、右折車は黄で進入赤で右折

20

80

右折車に青矢印による右折可の信号、直進車は赤

0

100

双方とも赤で進入

40

60

信号機が設置されていない

過失割合(%)

バイク

自動車

バイク右折、自動車直進(右図)

バイク右折、自動車直進

70

30

バイクが直進・右方または左方の自動車が右折のケース

交差道路から進入

過失割合(%)

バイク

自動車

左方自動車の右折:図1

30

70

右方自動車の右折:図2

20

80

バイクが右折・右方または左方の自動車が直進のケース

交差道路から進入

過失割合(%)

バイク

自動車

左方バイクの右折:図1

50

50

右方バイクの右折:図2

60

40

右直事故での過失割合は修正要素によって変動する

上記で紹介した過失割合はあくまで基本過失割合であり、具体的な事故状況に応じて修正を受けます。例えば「大回りで右折していた」「ウインカーを出さずに右折していた」のように危険な運転があった場合などは、上記の過失割合に修正要素が加わることになります。

右直事故で起きやすい修正要素としては以下の通りで、例えば以下のような修正要素が認められる場合、それぞれの態様に応じて過失割合が5~20%の範囲で加算・減算される可能性があります

修正要素

概要

早回り右折

交差点の中心の直近の内側を通らずに右折した場合、右折車に加算される修正要素

大回り右折

道路の中心に車体を寄せずに右折した場合、右折車に加算される修正要素

直近右折

対面の直進車が交差点内に侵入している状態で右折開始した場合、右折車に加算される修正要素

既右折

右折車が右折を終えている状態で直進車が衝突した場合、右折車が減算される修正要素

明らかな先入り

先に交差点内に侵入していた峡路車に広路車が衝突した場合、峡路車が減算される修正要素

合図なし

ウインカーをつけずに右折した場合、合図を出さなかった車両に加算される修正要素

徐行なし

徐行をしなければならない場所で怠った場合、徐行をしなかった車両に加算される修正要素

バイクでの右直事故で請求できる賠償金

右直事故で請求できる賠償金としては、慰謝料・消極損害・積極損害などがあります。以下でそれぞれ解説していきます。

慰謝料

交通事故では、被害の程度に応じて入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料などの慰謝料を請求することができます。また慰謝料には3つの計算基準があり、それぞれ金額が異なります。以下で各慰謝料の中身と相場額を解説します。

交通事故慰謝料の計算基準

自賠責基準

自賠責保険で用いる基準

任意保険基準

加入先保険会社がそれぞれ定める基準

弁護士基準

裁判所での判例をもとにした基準

入通院慰謝料

右直事故で入院や通院が必要な怪我を負った際は、入通院慰謝料を請求することができます。入通院慰謝料では、入通院日数や治療期間などをもとに金額が決められ、各計算基準の計算方法・相場としては以下の通りです。

  • 自賠責基準

自賠責基準の計算式

  1. 4,300円(2020年3月31日までに発生した事故は4,200円)×治療期間(病院で通っていた期間)
  2. 4,300円(2020年3月31日までに発生した事故は4,200円)×実通院日数(実際に病院に通った日数)×2

※①・②のうち少ない額が適用されます。

  • 任意保険基準(保険会社ごとに計算方法が異なるため以下は推定額です)

  • 弁護士基準

  • 弁護士基準(むち打ち症のように他覚症状がない場合)

後遺障害慰謝料

右直事故により後遺症が残り「後遺障害」として等級認定を受けた場合、後遺障害慰謝料を請求することができます。なお後遺障害として認められるためには、後遺障害診断書などの書類を提出して審査を受ける必要があります。

後遺障害慰謝料では等級の高さによって金額が決められ、各計算基準の相場としては以下の通りです。

等級

自賠責基準

(2020年3月31日までに発生した事故)

任意保険基準(推定)

弁護士基準

第1級

1,150万円

(1,100万円)

1,600万円程度

2,800万円

第2級

998万円

(958万円)

1,300万円程度

2,370万円

第3級

861万円

(829万円)

1,100万円程度

1,990万円

第4級

737万円

(712万円)

900万円程度

1,670万円

第5級

618万円

(599万円)

750万円程度

1,400万円

第6級

512万円

(498万円)

600万円程度

1,180万円

第7級

419万円

(409万円)

500万円程度

1,000万円

第8級

331万円

(324万円)

400万円程度

830万円

第9級

249万円

(245万円)

300万円程度

690万円

第10級

190万円

(187万円)

200万円程度

550万円

第11級

136万円

(135万円)

150万円程度

420万円

第12級

94万円

(93万円)

100万円程度

290万円

第13級

57万円

60万円程度

180万円

第14級

32万円

40万円程度

110万円

死亡慰謝料

右直事故によって死亡してしまった場合は、死亡慰謝料を請求することができます。死亡慰謝料では、慰謝料の請求人数や死亡者の立場などによって金額が決められ、各計算基準の相場としては以下の通りです。

  • 自賠責基準

請求する要項

慰謝料額

死者本人に対する慰謝料

400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円)

死亡者に扶養されていた場合(※)

200万円

慰謝料を請求する遺族が1人の場合

550万円

慰謝料を請求する遺族が2人の場合

650万円

慰謝料を請求する遺族が3人の場合

750万円

※遺族が死亡した被害者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。(遺族が1人で扶養されている場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)

  • 任意保険基準・弁護士基準

死亡者の立場

任意保険基準(推定)

弁護士基準

一家の支柱

1,500万~2,000万円

2,800万円

配偶者、母親

1,500万~2,000万円

2,500万円

上記以外

1,200万~1,500万円

2,000万~2,500万円

消極損害

事故に遭わなければもらえるはずだった収入を失ってしまったことに伴う損害を、消極損害と言います。なお消極損害は、休業損害・後遺障害逸失利益・死亡逸失利益に細分化され、以下でそれぞれの中身と計算方法を解説していきます。

休業損害

右直事故により休業を余儀なくされ、本来得られる収入が得られなかった場合は、休業損害を請求することができます。休業損害の計算方法としては以下の通りで、専業主婦や就職活動中の方でも請求は認められます。ただし専業主婦などの場合、休業期間について揉めたりすることもあり得ますので、不安な方は一度弁護士に相談してみましょう。

休業損害=1日あたりの基礎収入(※)×休業日数

※会社員・アルバイトなどの場合:「直近3ヵ月の収入÷90」

※自営業・個人事業主などの場合:「(前年度の所得+固定費)÷365」

後遺障害逸失利益

右直事故により後遺症が残り、労働能力の低下が認められる場合は、後遺障害逸失利益を請求することができます。なお後遺障害逸失利益とは、事故に遭わず後遺症などもない状態で働いていれば、将来もらえるはずだった収入を失ってしまったことに伴う損害のことを呼びます。計算方法は以下の通りです。

後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

※基礎収入:事故前の被害者の年収

※労働能力喪失率:後遺障害による労働能力喪失の割合をパーセンテージで表したもの

※労働能力喪失期間:後遺症により労働能力が失われたと評価できる期間

※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数

死亡逸失利益

右直事故によって死亡してしまった場合は、死亡逸失利益を請求することができます。なお死亡逸失利益とは、事故に遭わず生きて働いていれば、将来もらえるはずだった収入を失ってしまったことに伴う損害のことを呼びます。計算方法は以下の通りです。

死亡逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×中間利息控除係数

※生活費控除率:生存していた場合に生活のために支出したものと考えられる一定割合(実際には調整的意味合いが強い)

積極損害

そのほか修理代や治療費など、右直事故によって実際に支払った費用についても請求することができます。一例として、以下のようなものが挙げられます。

項目

内容

修理代

事故で壊れた車などを直す際にかかった費用

治療費

怪我の治療を受ける際にかかった費用

入院雑費

日用品雑貨・通信費・文化費など、治療費以外にかかった諸費用

通院費用

電車代・バス代・タクシー代など、通院するためにかかった費用

付添看護費

事故により介護や介助などを要する際に請求できる費用

将来の看護費

将来的に介護を要する後遺症が残った場合に請求できる費用

児童の学費等

入院などをして学習が遅れた分を取り戻すためにかかった授業料など

葬儀関係費

死亡した被害者の葬儀等を執り行うためにかかった費用

弁護士費用

弁護士に問題解決を依頼した際にかかった費用

バイクでの右直事故に遭った際に知っておいた方がよい3つのポイント

右直事故に遭ってしまい損害賠償請求を行う際は、以下のポイントをおさえておきましょう。

過失割合によって請求できる賠償額が変わる

加害者に請求できる賠償金は、過失割合により大きく影響を受けます。例えば賠償額の合計が1,000万円という場合、過失割合が「30(被害者):70(加害者)」であれば、合計額の1,000万円から被害者の過失割合分である300万円をマイナスした700万円を請求することになります。

被害者側の過失割合が大きくなるほど請求額は減額されてしまい、上記のケースでは「40(被害者):60(加害者)」と10%変わるだけで請求額は100万円減額されることになります。賠償金が数千万円を超えるようなケースでは、さらに大きく変動することになりますので、過失割合の取り決めも重要と言えます。

賠償金が支払われるまでの流れ

基本的には、上図のような流れで手続きを進めることになります。損害賠償請求にあたっては、相手と交渉を行って金額を決めていくことになりますが、交渉では話がまとまらないような場合は、裁判へと発展して争われることもあります。

なお、賠償金の支払い方法については「銀行口座への一括振り込み」という手法が取られることが多いようです。ただし、必ずこの方法でなければならないというわけではありませんので、加害者が一括払いできる余裕のない場合などは、分割払いに応じなければならないという場合もあるでしょう。

示談成立後はやり直しが原則できない

示談交渉を行う際、特に注意すべきポイントがあります。それは「安易に示談を成立させない」ということです。一度示談が成立してしまうと「すでに双方で決着がついたもの」として扱われますので、示談のやり直しは原則認められません

特に交通事故では、加害者に対して請求できる損害がさまざまありますので、請求忘れがないように注意する必要があります。また、なかには相手先保険会社から示談を催促されることもあるかと思いますが、焦って対応を進めてしまうのは避けた方が無難です。もし不安な場合は、一度弁護士に相談してみましょう。

バイクでの右直事故で弁護士に依頼するメリット

交通事故の問題解決に力を入れている弁護士であれば、以下のようなメリットが見込めます。少しでも有利に話を進めたい方は依頼することをおすすめします。

過失割合に関する的確な判断が望める

過失割合を決める際は、事故累計毎に過失割合が整理された資料を参考にしつつ、場合によっては類似事案の裁判例を参考とすることが多いです。過失割合の評価は交通事故の知識・経験が乏しいと難しいことが多く、相手保険会社の提示したものを受諾せざるを得ないということもあるかもしれません。

しかし、弁護士に依頼すれば、交通事故の知識や事故対応の経験などを踏まえて、過失割合の内容について的確なアドバイスが望めますので、相手保険会社の主張するままこれを受諾するということを避けられます。また、弁護士に依頼すれば相手保険会社との交渉全てを任せられますので、納得のいく形での終結が期待できます。

慰謝料が増額できる可能性がある

慰謝料は計算基準によって金額が異なり、自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準となります。慰謝料を多く受け取りたいのであれば弁護士基準で請求するのが有効です。

しかし、相手保険会社は弁護士が介入しない場合には弁護士基準での算定を渋るケースが多いようです。もし弁護士基準でスムーズに処理したいのであれば、弁護士に依頼する方が近道かもしれません。

通院期間

自賠責基準(※1)

任意保険基準(推定)

弁護士基準(※2)

1ヶ月間

8万6,000円

(8万4,000円)

12万6,000円

28(19)万円

2ヶ月間

17万2,000円

(16万8,000円)

25万2,000円

52(36)万円

3ヶ月間

25万8,000円

(25万2,000円)

37万8,000円

73(53)万円

4ヶ月間

34万4,000円

(33万6,000円)

47万8,000円

90(67) 万円

5ヶ月間

43万円

(42万円)

56万8,000円

105(79) 万円

6ヶ月間

51万6,000円

(50万4,000円)

64万2,000円

116(89) 万円

※1: 初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。

※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の慰謝料

事故後の対応を一任できる

交通事故に遭ってしまった際は、さまざま対応に追われることになります。怪我の治療や示談交渉などのほか、後遺症が残った場合は等級認定を受けるための手続きも検討するべきですし、示談交渉がうまくいかない場合は裁判へ移行することもあるでしょう。

弁護士に依頼すれば、依頼者の代わりに弁護士がすべての事故対応を行います。依頼後は示談交渉などに頭を悩ませる必要がなくなりますので、安心して怪我の治療などに専念できます。事故対応にかかる時間的負担・精神的負担を軽くできるというのも、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

まとめ

右直事故では「過失割合について有利に話を進められるか」という点が一つのポイントとなります。過失割合によって獲得金額は大きく左右されますので、もし不安を感じるようであれば弁護士に交渉対応などのサポートを依頼するのが良いでしょう。

またそのほかにも、慰謝料や休業損害などの各損害についてケースごとに算定を行って、請求内容に漏れがないよう確認するなどの対応も必要となります。弁護士であればこれらの対応も一任できますので、特にこれまで事故対応の経験がない方にとっては心強い味方となるでしょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ交通事故(旧:交通事故弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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