交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
訪日観光客が増加したことにより、最近では外国人とのレンタカー事故が増加しています。レンタカー事故の場合、レンタカー会社(レンタカー会社の加入する保険会社)に対して損害賠償請求できる可能性がありますが、十分な支払いを受けるには弁護士のサポートを得た方が効果的です。
この記事では「交通事故の相手がレンタカーを運転する外国人だった」という方に向けて、事故時の対処法や損害賠償の内訳、弁護士に依頼するメリットなどを解説します。
まずは、外国人とのレンタカー事故の発生状況などについて解説します。
以下グラフの通り、外国人のレンタカー利用者数は年々増加しており、2011年から2015年までの5年間で約18万人→約70.5万人と約4倍まで急増しています。冒頭でも触れたように、訪日観光客が増加したことが大きな理由の一つとして考えられます。
以下グラフによると、レンタカー事故は全体的に減少傾向にありますが、外国人ドライバーによる事故は年々増加状態にあります。その理由の一つとして「外国人によるレンタカー利用者数の増加」が考えられますが、2020年に東京オリンピックを控えていることもあり、今後さらに事故が増加していく可能性もあります。
次に、実際に事故に遭った際にどのような流れで対処するのか、全体の流れを解説します。
まずは警察を呼び救急車などの手配を済ませましょう。交通事故直後に警察に通報しないことは違法ですし、保険金を請求する際に必要な「事故証明書」が発行されない可能性もあります。被害の程度にかかわらず、交通事故の当事者となってしまった場合、必ず警察に通報するようにしましょう。
なお、警察に通報した場合には、警察が到着するまでその場から離れないでください。考えにくい事態ではありますが、警察が到着する前に相手当事者が逃走してしまうということも全くないとは言い切れません。警察が到着すれば、このような逃走リスクはほぼなくなりますので、それまでの辛抱です。
相手が外国人の場合、安易に「YES」や「NO」を使うことは避けましょう。口頭でのやり取りが直ちに責任の有無・程度に影響するものではありませんが、わけもわからず「YES」などと答えてしまったことで「こちらの主張が全面的に認められた」と勝手に受け取られてしまい、のちのちの示談交渉がこじれる可能性が否定できません。
相手がレンタカーの場合、レンタカー会社を確認し、同会社に連絡して事故が起きたことを伝えてください。事故証明書があれば後日連絡してやり取りすることも可能ですが、事故当日に連絡した方がその後の処理も早いと思われます。
相手がレンタカーである場合、通常はレンタカー会社が対人・対物無制限の任意保険に加入していますので、人身・物損の補償については、当該任意保険会社が責任を持って対応してくれます。そのため、あまり心配する必要はないかもしれません。
また、仮に何らかの理由で保険金が下りなかったり、保険会社から十分な補償がされないような場合でも、相手がレンタカーの場合には、当該車両を所有・支配するレンタカー会社に対して、運行供用者として直接賠償請求することもできます。
相手の会社の運営状況・財務状況にもよりますが、通常の会社であれば適正な範囲で補償をするでしょうから、過度に不安になる必要はありません。
交通事故の加害者に対して請求できる主な損害項目としては、積極損害・消極損害・慰謝料の3つが挙げられます。ここでは、各損害項目の概要や相場額などを解説します。
事故のために被害者が支払った費用のことを積極損害と呼びます。主に以下のような費用が該当します。
修理代 |
破損した車などを修理する際に支払った費用 |
治療費 |
怪我を治療する際に支払った費用 |
入院雑費 |
衣類代・洗面具代・寝具代・電話代・切手代などに支払った費用 |
通院費用 |
公共交通機関やタクシーなどを利用した際に支払った費用 |
付添看護費 |
怪我によって介護や介助が必要な場合に請求できる費用 |
将来の看護費 |
後遺症により今後介護が必要となった場合に請求できる費用 |
児童の学費等 |
被害者の学生が休学や留年をしたことで発生した授業料など |
葬儀関係費 |
被害者の葬儀を行った際に支払った費用 |
弁護士費用 |
交通事故問題の解決を弁護士に依頼した際に支払った費用 |
事故がなければ被害者が受け取れたであろう、収入に対する損害のことを消極損害と呼びます。消極損害については、休業損害・後遺障害逸失利益・死亡逸失利益の3つに分類されます。
事故により休業したことで得られるはずであった収入を得られなくなることに対する補償のことを休業損害と呼びます。金額については以下の式から計算できます。
なお、被害者が専業主婦の場合も休業損害の請求は可能ですが、専業主婦は休業期間が明確ではなく若干紛糾する可能性があります。この点は負傷の内容・程度に応じて慎重に検討することになるでしょう。
休業損害=1日あたりの基礎収入(※)×休業日数 |
※会社員・アルバイトなどの場合:「直近3ヵ月の収入÷90」
※自営業・個人事業主などの場合:「(前年度の所得+固定費)÷365
事故による後遺症により労働能力が低下したことで、将来受け取れたはずの収入が受け取れなくなったことに対する補償のことを後遺障害逸失利益と呼びます。金額については以下の式から計算できます。
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数 |
※基礎収入:事故前の被害者の年収
※労働能力喪失率:後遺障害による労働能力喪失の割合をパーセンテージで表したもの
※労働能力喪失期間:後遺症により労働能力が失われたと評価できる期間
※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数
被害者が死亡したケースにおいて、生存していれば受け取れたはずの収入が受け取れなくなったことに対する補償のことを死亡逸失利益と呼びます。金額については以下の式から計算できます。
死亡逸失利益=基礎収入×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数×(1-生活費控除率) |
※生活費控除率:生存していた場合に生活のために支出したものと考えられる一定割合(実際には調整的意味合いが強い)
交通事故により入通院を余儀なくされたことや、後遺症を負ったことに伴う精神的苦痛について支払われる金銭的補償のことを慰謝料と呼びます。また慰謝料には自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準などの計算基準があり、それぞれ金額は異なります。ここでは、各計算基準の相場額を紹介します。
交通事故慰謝料の算出基準 |
|
自賠責基準 |
交通事故の被害者を対象に、法令による最低限の補償を目的とした基準 |
任意保険基準 |
自動車保険会社が独自で設定する基準。自賠責基準より多くの補償が受けられる |
弁護士基準 |
裁判所の判例などを参考にした基準。最も高額な水準となっている |
怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされた場合に請求できるのが入通院慰謝料です。通院期間や通院日数などにより金額は異なり、各計算基準の相場額としては以下の通りです。
自賠責基準の計算式 |
|
※①・②のうち少ない額が適用されます。
交通事故に伴う後遺障害があると認められる場合に請求できるのが後遺障害慰謝料です。後遺症の程度(認定される等級の高さ)によって金額は異なり、各計算基準の相場額としては以下の通りです。
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
事故により被害者が死亡した際に請求できるのが死亡慰謝料です。被害者の立場や慰謝料請求する遺族の人数によって金額は異なり、各計算基準の相場額としては以下の通りです。
請求する要項 |
慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 |
400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円) |
死亡者に扶養されていた場合(※) |
200万円 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 |
550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 |
650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 |
750万円 |
※遺族が死亡した被害者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。(遺族が1人で扶養されている場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)
死亡者の立場 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
1,500万~2,000万円 |
2,800万円 |
配偶者、母親 |
1,500万~2,000万円 |
2,500万円 |
上記以外 |
1,200万~1,500万円 |
2,000万~2,500万円 |
交通事故で被害者が請求できる補償額は下記の2点によって大きく左右されます。適正な金額を受け取るためにも、以下のポイントについて知っておきましょう。
過失割合とは「交通事故に対する事故当事者の責任の割合」のことを指します。交通事故は、必ずしも加害者が100%悪いという事故ばかりではありません。例えば、動いている車両同士の交通事故は追突事故のような場合でない限り、事故当事者双方に相応の責任があると考えられています。
事故当事者の過失割合は、被害者側が請求できる補償額にダイレクトに影響します。すなわち、事故当事者双方に過失があるような場合、被害者が加害者に対して請求できる補償金は、被害者に生じた全損害ではなく、そこから被害者の過失割合分を控除した金額となります。
例えば「被害総額1,000万円の交通事故について事故当事者の過失割合が被害者40、加害者60」というケースでは、被害者が加害者に請求できる補償額は、1,000万円から事故の過失分400万円を控除した600万円に限られます。
このように、事故当事者の過失割合をどのように認定するかにより、被害者が請求できる補償金は大きく変動します。したがって、交通事故が起きた際に事故当事者の過失割合をどのように考えるかは、一つの重要な論点となり得ます。
交通事故の補償金は、交通事故により被害者に生じた損失を補填するものです。
そのため、被害者の請求するべき補償額は、被害者の属性(例えば、職業、収入、家族構成、年齢等)により大きく変動します。そのため、加害者に対して補償を求める際は、被害者の属性を踏まえた丁寧な個別的検討が必要です。
相手が外国人であろうとなかろうと、交通事故に遭って弁護士に相談し、対応を委ねることには大きなメリットがあります。例えば以下のようなメリットです。
交通事故では、相手と協議しながら補償額について妥結するという流れが通常です。また、このような協議がまとまらなければ訴訟提起も視野に入れなければなりません。このような煩雑な交渉や手続を自身で行うのは非常に煩雑です。
弁護士であればこのような煩雑な処理を一任することができますので、このメリットは大きいと言えます。
交通事故の慰謝料等は弁護士基準で請求する場合が高額となりやすい傾向にあります。もっとも、保険会社との交渉では、弁護士が介入しない段階では、保険会社は弁護士基準での算定を渋る傾向にあると言われています。
そのため、被害者において適正な補償を受けたいと考えるのであれば、弁護士に依頼し、弁護士基準で補償額を算定・請求してもらうことが推奨されます。
通院期間 |
自賠責基準(※1) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準(※2) |
1ヶ月間 |
8万6,000円 (8万4,000円) |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
2ヶ月間 |
17万2,000円 (16万8,000円) |
25万2,000円 |
52(36)万円 |
3ヶ月間 |
25万8,000円 (25万2,000円) |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
4ヶ月間 |
34万4,000円 (33万6,000円) |
47万8,000円 |
90(67) 万円 |
5ヶ月間 |
43万円 (42万円) |
56万8,000円 |
105(79) 万円 |
6ヶ月間 |
51万6,000円 (50万4,000円) |
64万2,000円 |
116(89) 万円 |
※1: 初診から治療終了日を21日とし実際の通入院は10日間だったと仮定し、2020年3月31日までは4,200円、2020年4月1日より後に発生した事故に関しては4,300円で計算しています。
※2:()内はむちうち等の他覚症状がない負傷の慰謝料
交通事故当事者間の過失割合が補償額に直接影響することは上記のとおりです。この点、過失割合は交通事故の態様から客観的に定めるものです。しかし、過失割合を的確に評価・判断するためには、交通事故処理についての知識・経験がある程度必要となることも事実です。
素人限りでは、相手保険会社から提示された過失割合が正しいのかどうか、正しくないとしてどのように反論・指摘すれば良いかわからないということがほとんどでしょう。
弁護士に依頼すれば、交通事故処理に係る知識・経験を踏まえ、実際の事故態様に照らした的確な過失割合を評価・判断して、これを踏まえて相手保険会社と交渉してくれます。
交通事故にあった被害者は、加害者側に対して積極損害・消極損害・慰謝料などの損害を請求することができます。しかし賠償金の計算や相手との示談交渉にあたっては、素人では適切に対応しきれない可能性もありますので、交通事故分野に注力する弁護士に依頼することをおすすめします。
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