交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
ベンナビ弁護士保険は、弁護士依頼で発生する着手金を補償する保険です。
交通事故だけでなく、自転車事故、労働問題、離婚、相続トラブルなど幅広い法的トラブルで利用することができます。
弁護士保険で法律トラブルに備える
配達サービスの普及にともない、最近では配達業務中の自転車事故なども起きています。ウーバーイーツの配達員による労働組合である「ウーバーイーツユニオン」によると、2020年1月から3月までの間で配達中に起きた事故は約30件にのぼるようです。
事故の相手が自転車というケースでも、自動車事故と同様に、事故が原因で生じた損害について慰謝料や休業損害などの賠償金を請求することができます。ただし自転車事故の場合、過失割合の交渉などで揉めてしまうケースも珍しくありませんので、少しでも不安がある方は弁護士の力を借りることも検討しましょう。
この記事では、配達業務中の自転車事故に遭った際に請求可能な賠償金や、実際の損害賠償請求例、損害賠償請求時の注意点などを解説します。
自転車事故を起こした運転者は、被害者に対して損害賠償義務を負います。また、同運転者が配達業務に従事している最中に事故を起こしたような場合には、運転者だけでなく、その運転者を使用する事業主が「使用者」として損害賠償責任を負う可能性もあります (民法第715条)。
なお、自転車の運転者側が何らかの賠償責任保険に加入しているのであれば、被害者は当該保険会社を通じて賠償金を受け取ることができますが、上限額などは保険契約次第です。場合によっては保険適用ができないようなこともありますので、その点は注意が必要です。
自転車事故の被害者が加害者側に請求可能な賠償金としては、慰謝料・消極損害・積極損害に大きく分けられます。
慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料があり、被害状況により請求するべき慰謝料が異なります。さらに以下に挙げた通り、慰謝料は計算基準によって算定額が変わります。それでは詳しく解説していきます。
交通事故慰謝料の計算基準 |
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自賠責基準 |
自賠責保険で用いる基準 |
任意保険基準 |
加入先保険会社が独自で定める基準 |
弁護士基準 |
裁判所での判例をもとにした基準 |
自転車事故により負傷し、入院または通院などが必要となった場合、事故の相手に対して請求可能な慰謝料です。怪我の治療に要した期間や、実際に病院へ通った日数などによって金額を算定するのが通常です。
自賠責基準の計算式 |
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※①・②のうち少ない額が適用されます。
自転車事故に遭って治療を尽くしたものの後遺症が残ってしまい後遺障害と認定される場合、事故の相手に対して請求可能な慰謝料です。第1級から第14級までのうち、どの等級が認定されるかで額が決められます。
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
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998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
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861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
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737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
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512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
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419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
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249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
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136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
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94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
自転車事故に遭って命を落としてしまった場合、事故の相手に対して請求可能な慰謝料です。被害者の家族構成や、生前の家庭内での立場などによって額が決められます。
請求する要項 |
慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 |
400万円(2020年4月1日以前に発生した事故に関しては350万円) |
死亡者に扶養されていた場合(※) |
200万円 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 |
550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 |
650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 |
750万円 |
※遺族が死亡した被害者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算されます。(遺族が1人で扶養されている場合:400万円+200万円+550万円=1,150万円)
死亡者の立場 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
1,500万~2,000万円 |
2,800万円 |
配偶者、母親 |
1,500万~2,000万円 |
2,500万円 |
上記以外 |
1,200万~1,500万円 |
2,000万~2,500万円 |
消極損害は、一般的には休業損害・後遺障害逸失利益・死亡逸失利益などがあり、こちらも被害状況に応じて請求するものが異なります。それでは以下で解説していきます。
自転車事故に遭ったことで仕事を休まざるをえなくなり、事故がなければ受け取れたはずの収入が受け取れなくなった場合に請求可能な損害です。
基本的には被害者が就労していることが必要ですが、一時的な失職や就職活動中の場合にも請求できます。また専業主婦は家事労働者と整理され、請求できます。休業損害は、事故との因果関係で加害者側ともめる恐れもありますので、もし不安であれば弁護士への相談がおすすめです。
休業損害=1日あたりの基礎収入(※)×休業日数 |
※会社員・アルバイトなどの場合:「直近3ヵ月の収入÷90」
※自営業・個人事業主などの場合:「(前年度の所得+固定費)÷365」
後遺障害により労働能力が喪失された結果、将来得られるはずであった収入を得られなくなったことに伴う損害です。被害者の収入額や、等級の認定結果などによって額が決められます。
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
※基礎収入:事故前の被害者の年収
※労働能力喪失率:後遺障害による労働能力喪失の割合をパーセンテージで表したもの
※労働能力喪失期間:後遺症により労働能力が失われたと評価できる期間
※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数
被害者が死亡した場合に、将来得られるはずであった収入を得られなくなったことに伴う損害です。被害者の収入額や、生前の家庭内での立場などによって額が決められます。
死亡逸失利益=基礎収入額×(1-生活費控除率)×中間利息控除係数 |
※生活費控除率:生存していた場合に生活のために支出したものと考えられる一定割合(実際には調整的意味合いが強い)
上記のほかにも、自転車事故への対応について被害者側で支出した費用は請求対象となります。以下は一例です。
項目 |
内容 |
修理代 |
事故で破損した車両を直すために支払った費用 |
治療費 |
怪我の治療のために支払った費用 |
入院雑費 |
日用品・通信費・テレビカード代など、入院時に支払った雑費 |
通院費用 |
通院のために公共交通機関を利用した際に支払った費用 |
付添看護費 |
介護・介助が必要なケースで請求できる費用 |
将来の看護費 |
後遺症が残り、介護が必要となった際に請求できる費用 |
児童の学費等 |
事故に遭ったことで勉学が遅れてしまい、遅れた分を回収するために支払った費用 |
葬儀関係費 |
事故被害者の葬儀などを開くために支払った費用 |
弁護士費用 |
弁護士への依頼時に支払った費用 |
ここでは、自転車事故に関する実際の請求例を紹介します。
青信号を歩行横断中の被害者(75歳)が、赤信号を無視して走行してきた加害者の自転車と衝突したケースです。被害者は後頭部を強く打って脳内出血を起こし、事故の4日後に亡くなっています。裁判所は「前方不注視・安全不確認および信号無視などの過失は重い」として、加害者に賠償責任が生じることを認めました。 その結果、裁判所は賠償金として約4,800万円(死亡慰謝料:2,300万円、死亡逸失利益:約1,500万円、弁護士費用:430万円、遺族固有の死亡慰謝料:300万円、葬儀費用:150万円など)の支払いを命じました(参考判例:東京地裁平成26年1月28日判決、Westlaw Japan 文献番号2014WLJPCA01288006)。 |
青信号を歩行横断中の被害者(55歳)が、赤信号を無視して30~40km/hの速度で走行してきた加害者の自転車と衝突したケースです。被害者は事故の衝撃で頭蓋内損傷の傷害を負い、事故の約10日後に亡くなっています。 この事故について裁判所は「前方不注視や安全不確認、さらに信号無視や高速度での交差点侵入など、加害者には一方的かつ重大な過失が認められる」との判断を下しています。 その結果、裁判所は賠償金として約5,400万円(死亡慰謝料:2,600万円、死亡逸失利益:約2,100万円、弁護士費用:490万円、葬儀費用:200万円など) の支払いを命じました(参考判例:東京地裁平成19年4月11日判決、Westlaw Japan 文献番号2007WLJPCA04118013)。 |
車道左側を自転車で走行していたAが、車道を斜め横断しようと歩道から飛び出してきたBの自転車と衝突したケースです。この事故によりAは脳内出血・頭蓋骨骨折などの傷害を負い、言語機能喪失(3級)・右上肢機能全廃(2級)・右下肢機能全廃(3級)などの等級認定を受けています。 この事故について裁判所は「交通量の激しい本件道路において、十分な安全確認を行わないまま車道に侵入したBには相応の過失が認められる」として、Aに生じた損害のうち50%の賠償責任を負うのが相当との判断を下しています。 その結果、裁判所はBに対して、賠償金として入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡逸失利益・休業損害・付添介護費および将来介護費などを含めた、約9,300万円の支払いを命じました(参考判例:東京地裁平成20年6月5日判決、Westlaw Japan 文献番号2008WLJPCA06058002)。 |
自転車事故の運転者側に損害賠償請求する際は、何点か注意しておくべきポイントがありますので、以下で解説していきます。
事故の被害者が請求できる慰謝料・積極損害・消極損害は、発生した損害全額ではなく、被害者側の過失を控除した金額です。そのため、被害者側にも過失が認められる事故の場合は、被害者側の過失割合の程度に応じて請求額が大きく変動します。過失割合をどのように決めるかが事故対応の一つのポイントとなります。
しかし、自転車事故は自動車事故ほど十分な先例があるわけではなく、特に自転車同士の事故や自転車と歩行者の事故の場合には、両者の過失割合をどのように評価するべきかで参考となるような情報が少なく、紛糾する可能性があります。
自動車事故の場合には、自動車の運転者は自賠責保険に強制加入していますし、これに加えて対人・対物無制限の任意保険に加入していることが多いです。そのため、自動車事故の被害者は、発生した損害について多くの場合は任意保険会社を通じて、最悪でも自賠責保険を通じてある程度の賠償金を受け取ることができます。
しかし、自転車の場合にはこのような強制加入の保険制度は存在せず、また任意保険に加入している人もまだまだ少数です。自転車の運転者が保険未加入の場合には、被害者は運転者側に直接賠償の請求を行わなければなりませんし、運転者側に支払い能力がない場合には、ほとんど賠償金を受け取れない(要するに泣き寝入りとなる)ということも珍しいことではありません。この点は自動車事故と大きく異なるところといえます。
自転車事故に限ったことではありませんが、被害者の賠償金をどのように計算するかについては、交通事故処理についてのそれなりの知識・経験が必要です。
例として、休業損害については被害者の基礎収入をどう算定するか、休業期間をどのように評価するかによって算定額が変動します。また、後遺障害逸失利益についても、労働能力喪失期間をどのように評価するかで算定額が異なります。慰謝料についても、どのような算定基準を用いるかで算定額は異なります。
このように、損害の計算には一定の「コツ」が必要であり、素人には対応が難しい場合もあります。
事故の怪我について治療を尽くしても後遺症が残った場合、後遺障害として認定されれば後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの賠償金も請求できます。
この点、自動車事故の場合には、加害者側の自賠責保険会社に対して認定申請を行うことが可能であるため、特に難しいことはありません。認定申請の結果、認定を受けられればスムーズに請求対応へ移行できますし、認定を受けられなければあきらめるか、裁判手続で認定を求めていくべきか検討するということになるだけです。
一方、自転車事故の場合は上記の通り強制加入の自賠責保険制度が存在しないため、加害者側の自賠責保険に認定申請を行うということができません。そのため、自転車事故被害について後遺障害として賠償金を求めたいのであれば、多くの場合は裁判所に訴訟提起して、裁判所に後遺障害の有無や程度について判断してもらう以外に方法がありません(労働災害となるような場合には、労基署に認定してもらうという方法があります)。
事故対応にあたっては、弁護士のサポートを得ることで大きく負担を軽減できるでしょう。以下では、弁護士に依頼するメリットや費用相場などを解説します。
上記で解説したように、交通事故の処理には、過失割合の交渉や各損害の計算、後遺障害の認定手続きなど、さまざまな手続きが伴います。また、自転車事故の多くは運転者との直接交渉となりますので、交渉が上手く進まず、相手方と揉めてしまうこともあるかもしれません。
弁護士であれば、各種手続きを一任できますし、相手との交渉も一任できますので、本人の負担は相当軽くなります。また、仮に裁判にもつれ込んだ場合も、弁護士にそのまま処理を一任することができます。依頼後は安心して治療や自身の生活に集中できますので、心身の負担も軽くなるでしょう。
依頼時にかかる費用は、以下のように何を依頼するかで異なります。ただし各事務所でも料金設定はまちまちであるため、具体的な金額が気になる方は直接事務所へ確認した方が良いでしょう。
相手との交渉対応を依頼する場合、下記が費用目安となります。
料金体系 |
着手金 |
報酬金 |
着手金あり |
10万~20万円 |
経済的利益の10~15% |
着手金なし |
0円 |
10万~20万円+経済的利益の10~15% |
裁判対応を依頼する場合、下記が費用目安となります。
賠償金 |
着手金 |
報酬金 |
300万円以下 |
経済的利益の8% |
経済的利益の16% |
300万~3,000万円 |
経済的利益の5% |
18万円+経済的利益の10% |
3,000万~3億円 |
経済的利益の3% |
138万円+経済的利益の6% |
3億円を超える場合 |
経済的利益の2% |
738万円+経済的利益の4% |
※経済的利益:相手に請求する(または回収した)金額を指します。
これまで依頼経験の無い方にとっては、弁護士の探し方や依頼方法など分からないことばかりでしょう。また弁護士といっても、得意とする分野は一人一人で違います。対応する弁護士によって得られる結果も変わってきますので交通事故問題に力を入れている弁護士に依頼するのが一つのポイントです。
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自転車事故も自動車事故も「自身が負った損害について賠償金を請求できる」という点に変わりはありません。また自転車事故であるからといって賠償金が極端に減額されるようなこともありません。記事内でも紹介したように、自転車同士の事故では1億円近くの賠償金が支払われた例もあります。
ただし注意すべき点として、自転車事故の場合、自動車事故とは異なる問題が様々あります。そのため、交通事故処理の知識・経験のない素人では手に負えないことも珍しいことではありません。
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