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交通事故で死の危険があるような体験をすると、その後「PTSD」になってしまう人がいます。このような場合、症状に応じて後遺障害認定を受け、加害者に慰謝料などの賠償金を請求できる可能性があります。
今回は、PTSDで交通事故の後遺障害認定を受けられるのはどういったケースなのか、何級の認定を受けられるのか、また、どのくらいの慰謝料を請求できるのかなどを解説していきます。
そもそもPTSDとはどのような傷病・障害なのか見てみましょう。PTSDは「心的外傷後ストレス障害」という意味で、英語の「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字を取ったものです。
PTSDは、衝撃的な体験が原因で発症するとされています。あまりにも恐ろしい体験をしたことによってその記憶が埋め込まれ、時折フラッシュバックや過呼吸が起こるなどして日常生活や仕事に支障をきたします。
PTSDになる衝撃的な体験とは、「死の危険が生じる程度の事情」とされています。具体的な原因として多いのは、以下のようなものです。
交通事故でPTSDになる人もたくさんいますが、軽微な事故ではなく大型トレーラーとの正面衝突や車に挟まれる事故など、生命の危機となるような恐怖体験をした場合に発症するのが通常です。
PTSDの典型的な症状は以下のようなものです。
PTSDの原因となった災害や事故のことを何度も思い出し、フラッシュバックして強い恐怖を感じたり、繰り返し悪夢を見たりする症状です。
PTSDの原因となった災害や事故について思い出して強い不安を感じ、過度に神経質になったり落ち着きがなくなったりする症状です。
PTSDの原因となった事件や事故に関連するもの、思い出させるようなものに近づけなくなったり足がすくんでしまったりする症状です。
何事にも気力を持てなくなり意欲が低下し、自分に価値がないと感じます。たとえば、交通事故後、以下のような症状が1ヶ月以上持続していると、PTSDと診断される可能性が高くなります。
PTSDになった場合、精神科や心療内科で治療を受ける必要があります。治療方法としては、認知行動療法などのカウンセリングや薬物療法があります。
認知行動療法とは、安全な体験を思い出させたり、ゆがんだ危機意識を変化させたりすることで、PTSDを克服しようとするものです。薬物療法としては、うつ症状や精神安定剤、睡眠薬などを用いて各種の症状を抑えるものです。
PTSDになった場合でも、早期に治療を開始すると比較的完治しやすいと言われています。ただし、恐怖体験の大きさや患者の個性によっても回復度合いは異なりますし、治療開始が遅れた場合などには、数年かかっても回復しないケースもあります。
交通事故後、フラッシュバックが起こるなどしてPTSDが疑われる場合、早めに精神科や心療内科・カウンセリングルームに行って相談しましょう。
交通事故が原因でPTSDになった場合、被害者は明らかに大きな精神的苦痛を受けています。どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか?
まず、PTSDによる慰謝料請求は、それ自体ハードルは高いです。上記のとおり、PTSDは、発症条件が生命に危険が及ぶような体験をすることと考えられていますので、仮に担当医にPTSDと診断されていても、事故状況を客観的に見た場合にPTSDを発症していると認められない場合があるからです。
PTSDに罹患していることが客観的に証明できない場合は、そもそもPTSDに基づく賠償請求はできません。
他方、PTSDに罹患していることが客観的に認められる場合は、その症状の内容・程度に応じて治療行為や後遺障害について補償を受けられる可能性があります。仮に後遺障害として補償を求める場合は、自賠責保険により後遺障害認定を受けているかどうかも重要となります。
PTSDに罹患した場合に認められる可能性のある慰謝料の内訳を見てみます。
交通事故が原因で入通院すると、治療期間に応じて入通院慰謝料が支払われます。治療期間が長くなれば入通院慰謝料も上がります。
そのため、身体的な怪我の治療が完了しても、PTSDについて要治療状態が続く場合、当該治療期間も含めて補償の対象となります。
PTSDについて治療しても症状が軽快しないという状態(症状固定)となり、その時点の症状が後遺障害と認められれば、通院治療とは別に補償を受けることができます。慰謝料の額は後遺障害として認められる等級によって異なります。
PTSDの慰謝料は、上記の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の合計金額となります。入通院期間が長くなった場合や後遺障害の等級が高くなった場合に全体的な慰謝料額が高額になります。
交通事故が原因でPTSDになったからといって、必ずしも後遺障害として認定されるわけではありません。PTSD自体は交通事故の後遺障害として定められていません。
たとえ客観的に「PTSD」に罹患しているとしても、直ちに後遺障害まで認定されるわけではありません。
PTSDは、うつ病などと同様、後遺障害としては「非器質性の精神障害」として検討対象となります。非器質性とは、物理的に脳に損傷を受けていないことです。非器質性の精神症状の場合の後遺障害認定基準は、以下のとおりです。
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの
つまり、PTSDの精神症状によって、どの程度日常生活や仕事に支障が出ているのかにより、認定される等級が変わってきます。
交通事故で後遺障害認定を受けるには、以下の2種類の手続き方法があります。
事前認定は、加害者の保険会社に依頼して後遺障害認定の手続きを進めてもらう方法です。被害者は後遺障害診断書を入手するだけでよく、ほとんど何もしなくてもかまいません。
被害者自身が積極的に自分に有利な資料を提出したり症状を説明したりできないので、認定を受けにくくなるケースがあります。
被害者請求は、被害者が直接加害者の自賠責保険や共済へ後遺障害認定請求をする方法です。必要書類等が多く手間がかかりますが、被害者自身の裁量で手続きを進められるので見通しを立てやすく、後遺障害認定を受けやすくなる可能性が高まります。
交通事故でPTSDになったとき、弁護士に依頼すると大きなメリットを受けられます。
1つは後遺障害認定を受けやすくなることです。PTSDで後遺障害認定を受けるのは、簡単ではありません。
医師がPTSDと診断していても、「非該当」にされるケースもあります。きちんと認定を受けるには、専門のスキルやノウハウが必要です。
弁護士に依頼すると、被害者請求などの方法を使って効果的に後遺障害等級を勝ち取ってくれます。
弁護士が示談交渉に対応すると「弁護士基準」が適用されるので、賠償金が大きく増額されます。上記で紹介した慰謝料の金額(相場)は弁護士基準で計算したものであり、被害者が自分で交渉すると、思ったより補償額が少ないということはよくあります。
弁護士に依頼すればこのような憂いは払拭できる可能性が高いです。
交通事故でPTSDになった場合、被害者としては「もうこれ以上のストレスには耐えられない」と感じているでしょう。しかし、交通事故後の保険会社との示談交渉は、被害者にとって非常に大きなストレスとなります。
精神症状のない一般の交通事故被害者であっても、示談交渉がストレスになって耐えられないと感じたり、不眠になってしまったりすることが多々あります。ましてPTSDの場合、自分で対応していると治るものも治らなくなりますし、交通事故を思い出すきっかけが増えて、症状がより悪化してしまう可能性も高くなります。
弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士が矢面に立って対応するので、被害者は基本的に自分では保険会社と話をする必要はなくなり、ストレスが大きく軽減されます。
大きな事故で強い恐怖体験をしてPTSDになってしまったら、早めに治療を開始するとともに、交通事故後の示談などの対応は弁護士に任せるべきです。放置すると、PTSDの辛い症状がいつまでも続きますし、慰謝料は減額されてしまう可能性が高まります。
交通事故の体験を思い出すたびに辛いなど、PTSDを疑わせる症状があったら、すぐに精神科を受診するとともに弁護士に相談してみましょう。
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