後遺障害認定されたらどうなる?慰謝料や認定後の流れなどを解説

交通事故に遭うと、身体のさまざまな箇所に「後遺障害」が残ってしまう可能性があります。そのようなとき、相手からはどのような補償をしてもらえるのでしょうか?
慰謝料だけではなく「逸失利益」という高額な賠償金を支払ってもらえるケースが多いので、そういった知識も身に付けておきましょう。今回は交通事故の後遺障害が認定されたときの賠償金の相場や計算方法をご説明します。
後遺障害認定されたらいくらもらえる?
交通事故で後遺障害認定されたらどのくらいの賠償金を払ってもらえるのでしょうか?まずは「慰謝料」を簡単に計算してみて下さい。
等級別|後遺障害の慰謝料相場
交通事故で「後遺障害」認定された場合の後遺障害慰謝料の相場は以下の通りです。後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級が高ければ高いほど高額になります。また「弁護士基準」で計算すると他の基準より大幅に増額されます。
等級 |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
1,600万円程度 |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
1,300万円程度 |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,100万円程度 |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
900万円程度 |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
750万円程度 |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
600万円程度 |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
500万円程度 |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
400万円程度 |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
300万円程度 |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
200万円程度 |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
150万円程度 |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
100万円程度 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円程度 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円程度 |
110万円 |
逸失利益とは?意味と計算方法を解説
有職者の方に後遺障害が残った場合「逸失利益」という損害が発生します。逸失利益とは、後遺障害が残って労働能力が低下したために得られなくなった将来の収入です。身体を自由に動かせなくなって仕事を限定され、収入が減少するので損害として認められます。
逸失利益の計算式は、以下の通りです。
事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
「基礎収入」は事故前に実際に得ていた収入です。主婦や失業者など、現実の収入がなかった方の場合には賃金センサスの「平均賃金」をあてはめます。
「労働能力喪失率」は後遺障害の内容や程度に応じて定められます。等級ごとの労働能力喪失率の平均的な数値は以下の通りです。
等級 |
労働能力喪失率 |
1級 |
100% |
2級 |
100% |
3級 |
100% |
4級 |
92% |
5級 |
79% |
6級 |
67% |
7級 |
56% |
8級 |
45% |
9級 |
35% |
10級 |
27% |
11級 |
20% |
12級 |
14% |
13級 |
9% |
14級 |
5% |
ライプニッツ係数とは、将来の収入を先に一括して受けとる利益を調整するための数字です。つまり本来なら事故後に毎月給料や収入を得ていくはずですが、先に一括して受けとると運用利益が発生すると考えられるので、その分を差し引きます。
以下で逸失利益の計算例を示します。
ケース1
事故当時25歳、後遺障害2級となった男性、年収300万円
300万円×100%×17.423=5,226万9,000円 |
ケース2
事故当時50歳、後遺障害7級となった女性、年収500万円
500万円×56%×11.274=3,156万7,200円 |
ケース3
事故当時37歳、後遺障害12級となった男性、年収700万円
700万円×14%×15.372=1,506万4,560円 |
後遺障害認定が得られるまでの流れ
事故発生
事故が起こったら、警察を呼んで実況見分に立会い、相手と情報を交換し合うなど適切な対応をしましょう。
入通院
交通事故でけがをしたら、すぐに病院で治療を受けましょう。
症状固定
治療は「症状固定」するまで継続します。症状固定とは、それ以上治療をしても症状が改善しなくなった状態です。医学的な事項は医師が判断するので、医師と相談しながら症状固定時期を決定しましょう。
後遺障害診断書を作成
症状固定したら、保険会社から後遺障害診断書用の書式を取り寄せて医師に渡し、後遺障害診断書を作成してもらいます。
後遺障害申請
医師から後遺障害診断書を受け取ったら、後遺障害等級認定の請求を行います。相手の保険会社に手続きを任せる「事前認定」か、被害者が自分で手続きを行う「被害者請求」か選ぶことが可能です。
等級認定または非該当
後遺障害等級認定をして1~3か月くらいすると認定結果が出ます。後遺障害が認められれば等級が決定しますし、後遺障害と認められない場合「非該当」である旨通知があります。
後遺障害認定されたらやるべきことは?
後遺障害申請をして認定結果が出たら、以下のように対応しましょう。
異議申し立て※認定結果に納得できない場合
後遺障害の認定結果は、必ずしも被害者が納得できるものではありません。身体に痛みなどの症状が残っているのに「非該当(後遺障害がない)」と判断されてしまうケースもありますし、認定されたものの思ったより等級が低くなってしまう事例もあります。
そのようなとき「異議申立て」により後遺障害認定の結果を覆せる可能性があります。異議申立ては、後遺障害認定を行った相手の自賠責保険に対して行います。ただし一度目と同じ機関が判定するので、同じ方法で異議申立をしても結果を変更してもらえる可能性はほとんどありません。異議申立で等級を変更するには、一般的には、新たな後遺障害診断書や検査結果などの追加資料を用意する必要があります。
支払われる保険金の額が適正かの確認
後遺障害等級認定結果に納得できる場合や異議申立の結果を受け入れて示談する場合、相手の保険会社による提示金額が妥当か確認すべきです。
たとえば等級ごとの後遺障害慰謝料の金額は、上記の表で示したとおりです。被害者としては法的な「弁護士基準」で計算すべきですから,相手の提示金額が低すぎないかチェックしましょう。
損害賠償金額を計算する
次に、後遺障害慰謝料だけではなく他の賠償金についても試算してみましょう。たとえば逸失利益について、上記で紹介した計算式を使って計算してみて下さい。他にも治療費や休業損害、付添看護費用等発生するでしょうから、正確に計算しましょう。
示談交渉をする
保険会社と示談交渉をすると、相手は「任意保険基準」によって計算した低額な慰謝料を提示してくることが予想されます。任意保険基準は任意保険会社が独自に定めている法的な根拠のない基準なので、受け入れる必要はありません。
また後遺障害逸失利益についても、さまざまな理由で減額してくるケースが非常に多数です。たとえば「後遺障害が労働能力に影響していない」とか「実際には減収が発生していないから基礎収入をもっと低く算定すべき」などと言われます。
そのような場合にも、相手の言っていることが妥当とは限らないので、疑問があれば弁護士に相談して正しい考え方を確認しましょう。
後遺障害で弁護士に依頼するべき理由
交通事故で後遺障害が残ったら、弁護士に対応を依頼することを強くお勧めします。以下でその理由をご説明します。
高額な慰謝料基準(弁護士基準)で請求できるから
弁護士に示談交渉を依頼するとそれだけで慰謝料が倍増します。弁護士が示談交渉を行うときには高額な「弁護士基準」が適用されるからです。保険会社は独自の「任意保険会社の基準」をもうけていますが、弁護士を介した交渉では弁護士基準が用いられることが一般的です。
被害者が自分で交渉する場合と比べると、弁護士に依頼することで後遺障害慰謝料が大幅に増額されるケースもあります。また、仮に後遺障害補償がない場合でも、入通院慰謝料が増額されるケースも多いです。なるべく多額の慰謝料を獲得したいなら、必ず弁護士に依頼すべきです。
保険会社に提示された金額が適切かどうか判断できるから
交通事故では慰謝料や逸失利益だけではなく休業損害や付添看護費用、雑費なども発生するので、これらすべてについて適切に計算する必要があります。
しかし自分で示談交渉を進める場合、相手の保険会社が提示している金額が必ずしも適正かわかりません。相手からは治療費についても「整骨院の分は認めない」「〇月〇日以降の分は認めない」などと言われることがよくあります。
このような場合も弁護士に相談することで交渉がスムーズとなることもあります。
将来発生しうる費用も忘れずに請求できるから
交通事故で後遺障害が残ると、将来にわたってさまざまな費用が発生する可能性があります。典型的なのが「将来介護費用」です。後遺障害が残って介護が必要になった場合には基本的に一生介護を受け続けなければならないので、将来的に介護費用が発生し続けます。
それ以外にも、車いすや義手義足、コンタクトレンズなど一生のうちに何度か買い換えなければならない器具や装具の費用も必要です。自宅を改装してリフトをつけたりバリアフリーにしたりするケースもありますし車を障害者対応の仕様に改造するケースもあります。
このようなさまざまな費用について素人の方が自分で計算するのは困難ですが、弁護士であれば対応可能です。重大な後遺障害が残った事案ほど弁護士が必要です。
後遺障害を負うような事故の場合は費用倒れしにくいから
交通事故で弁護士に依頼すると「費用倒れ」が心配になるものです。費用倒れとは、弁護士に依頼して得られる金額より弁護士費用の金額の方が高くなって損をすることです。
しかし後遺障害が残るような事案では、費用倒れの心配はあまりありません。重大な後遺障害の場合、弁護士の交渉により増額される幅は比較的多額となりやすいので、通常は、そこから弁護士費用を捻出することができます。後遺障害が残ったら、こちらの過失割合が異常に高いなどの事情でもない限り費用倒れの心配がないので、是非とも弁護士に依頼しましょう。
まとめ
交通事故で後遺障害が残ったら、たとえ軽症でも日常生活や仕事に支障が出るケースが多々あります。適切な補償を受けるためには弁護士に相談し、後遺障害認定の手続きや示談交渉を依頼する必要性が高いものです。まずは後遺障害認定に詳しい弁護士を探して相談を受けてみて下さい。
弁護士に相談するかお悩みの方へ
下のボタンからあなた当てはまるものを選んで悩みを解消しましょう。
弁護士費用特約があれば 実質0円で依頼できます!

多くの保険会社では、被害者1名につき最大300万円までの弁護士費用を負担してくれます。特約があるか分からない方でも、お気軽にご相談ください。弁護士と一緒にご確認した上で依頼の有無を決めて頂けます。
特約を利用して弁護士に相談する交通事故問題を依頼する弁護士の選び方にはポイントがあります。
- 過去の解決事例を確認する
- 料金体系が明確である弁護士を選ぶ
- 交通事故問題が得意な弁護士から選ぶ
等です。
詳しくは以下の記事を読んで、正しい弁護士の選び方を理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士の選び方について詳しくみる
【事故直後からご相談ください】むち打ちから死亡事故まで幅広い交通事故に対応◆一都三県は出張相談も可能◆実績豊富な弁護士が、理想的な解決に向けて迅速かつ丁寧に対応いたします【初回相談無料】
事務所詳細を見る
【人身事故被害者の方へ】事故直後・通院中いずれの場合もまずはご相談ください。弁護士への依頼で、結果が大きく変わるかもしれません。【初回面談無料】【着手金無料プランあり】【オンラインで全国対応可能】
事務所詳細を見る
【無料の電話相談】【東京都相談窓口】【着手金0円】【365日】交通事故に精通する弁護士、示談の経験豊富な弁護士が多数在籍し、慰謝料増額に向けた充実のサポートを受けられます。
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡


後遺障害等級・申請方法に関する新着コラム
-
本記事では、交通事故の被害に遭い橈骨頭骨折を負った方に向けて、橈骨橈骨折の症状や後遺症に関する基礎知識、橈骨橈骨折で認められる後遺障害等級の目安、適切な後遺障害...
-
交通事故で頚椎を損傷すると、どのような症状が出るのでしょうか?本記事では、頚椎損傷の主な症状や考えられる後遺症、加害者に請求できるお金について解説します。少しで...
-
交通事故による後遺症が残ったときは、後遺障害等級認定の手続きが必要です。等級認定を受けることができれば、賠償金の大幅な増額が期待できます。本記事では、後遺障害等...
-
交通事故に遭ったことが原因でけがを負い、後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けることで保険会社から損害賠償を受け取れる可能性があります。交通事故による後遺...
-
交通事故に遭ってしまい腰椎圧迫骨折の治療を続けたものの、後遺障害等級が認定されず、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。本記事では、腰椎圧迫骨折で後遺障...
-
本記事では交通事故の被害に遭った方に向けて、後遺障害等級認定の定義、仕組み、認定機関、調査期間などの基礎知識、事前認定と被害者請求の大まかな流れ、後遺障害等級が...
-
事故で受けたケガが完治しない場合「後遺障害等級認定を受けるかどうか悩んでいる」という方もいるでしょう。この記事では、「後遺障害等級認定を受けることにはデメリット...
-
交通事故に巻き込まれた際は、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。支払ってもらえる保険金額や逸失利益を計算したい場合もあるでしょう。本記事では、後遺障害...
-
後遺障害等級と障害者手帳の交付を受けるための等級は別物であり、必ずしも障害者手帳が交付されるわけではありません。本記事では、後遺障害11級に認定された方に向けて...
-
後遺障害10級には、肩・腕・手や股関節・膝・足を骨折して可動域が2分の1以下に制限された場合が含まれます。本記事では、後遺障害10級の具体的な症状や認定基準、後...
後遺障害等級・申請方法に関する人気コラム
-
【弁護士監修】交通事故で後遺障害となり第14級と認定された場合、後遺障害慰謝料の相場がいくらになるのか、計算方法や示談金額、第14級の認定基準などを徹底解説。正...
-
後遺障害診断書の概要や入手方法、書き方と記入例、後遺障害の等級認定を獲得するためのポイントのほか、医師が診断書を書いてくれない場合とその対処法、後遺障害診断書の...
-
今回お伝えする内容は、後遺障害等級12級に該当する症状と認定の方法、そして、後遺障害等級12級の適切な慰謝料を獲得する7つの知識をご紹介します。
-
交通事故に遭った被害者のために、後遺障害の基礎・基本を解説します。適切な治療やリハビリを受けている場合でも、後遺障害を負ってしまうかもしれません。そのようなとき...
-
交通事故における症状固定とは、むちうちなどのような後遺障害等級の獲得や示談時期などを決める際に重要な意味があります。安易に保険会社から症状固定日の提案に同意する...
-
交通事故トラブルを弁護士に相談すれば、自身に有利な条件で問題解決できる可能性が高くなります。しかし、費用面が気がかりで躊躇している方もいるのではないでしょうか。...
-
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主に脳に損傷を負ったことで起こる様々な神経心理学的障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など)...
-
後遺障害等級13級に該当する症状と後遺障害等級13級を獲得する手順をご紹介していきます。
-
後遺障害の認定が非該当になった場合に、異議申し立てを行うための方法と、成功させるコツをご紹介します。
-
後遺障害等級10級に認定された場合、その後遺障害が与える労働能力喪失率は27%と設定されており、後遺症が残った場合はいよいよ実生活にも多大な影響を与える症状が多...
後遺障害等級・申請方法の関連コラム
-
本記事では、交通事故の被害に遭い橈骨頭骨折を負った方に向けて、橈骨橈骨折の症状や後遺症に関する基礎知識、橈骨橈骨折で認められる後遺障害等級の目安、適切な後遺障害...
-
交通事故で頚椎を損傷すると、どのような症状が出るのでしょうか?本記事では、頚椎損傷の主な症状や考えられる後遺症、加害者に請求できるお金について解説します。少しで...
-
後遺障害診断書の概要や入手方法、書き方と記入例、後遺障害の等級認定を獲得するためのポイントのほか、医師が診断書を書いてくれない場合とその対処法、後遺障害診断書の...
-
追突事故の代表的な負傷としてむちうちが挙げられます。むちうちは治療をしても痛みが治らず、後遺障害として扱われるケースも珍しくありません。その場合は、後遺障害認定...
-
事故により腕の切断を余儀なくされた場合、後遺障害として認定を受けることで、加害者に対して「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」などを請求することができます。この記事で...
-
後遺障害第1級に該当する遷延性意識障害とは「植物状態」となってしまった症状をいいます。今回は、遷延性意識障害になった場合に獲得できる慰謝料などを見ていきましょう...
-
交通事故で頸椎捻挫をした場合には、後遺障害を認めてもらえる可能性があります。後遺障害等級が認められると、損害賠償額が大きく変わります。しかし、認定されるためには...
-
高次脳機能障害が後遺障害として認定されると、その症状の度合い(等級)に応じて慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求をする権利が認められます。本記事では、高次脳機能障...
-
交通事故が原因の腰痛で請求できる慰謝料は、症状の程度により異なります。腰痛の場合、後遺障害等級12級・14級が認定される可能性がありますが、そのためには申請手続...
-
医療機関を受診する必要性を認識するために、症状や後遺症などについて確認しておきましょう。ここでは、慢性硬膜下血腫の症状や検査方法、治療法などについてご紹介します...
-
後遺障害の慰謝料とは、交通事故に被害で負った後遺症が、後遺障害等級認定をされた際に請求できる慰謝料のことで、交通事故の損害賠償の中でも相場を引き上げる要因にもな...
-
交通事故により重度の後遺障害を負った場合、加害者や保険会社から受け取る損害賠償とは別に、国より「障害年金」を受給することが可能です。この記事では障害年金の制度や...
後遺障害等級・申請方法コラム一覧へ戻る