交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。弁護士費用を用意できず泣き寝入りとなってしまうケースも少なくありません。
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視力が低下し足にも痺れが残った場合など、交通事故に遭い、複数の後遺障害が認められたときには、一定のルールに従って全体としての等級が認定されます。後遺障害の内容にもよりますが、複数の後遺障害が認められた場合、それぞれの後遺障害の等級よりも、全体としての等級がより上位の等級で認定されて、賠償額も増額される可能性があります。
交通事故で入院するような重傷を負った状況では、複数の後遺障害が現れるケースも珍しくありません。後遺障害の等級は、1つ違うだけでも賠償額に100万円以上の差が生じる場合があります。適正な損害賠償金を請求したいのであれば、被害者自身も後遺障害の等級認定に関する知識を深めておいた方がよいでしょう。
この記事では後遺障害が複数ある場合の、後遺障害の等級認定のルールについて解説します。交通事故被害で後遺障害の申請を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1つの事故で後遺障害が複数残った場合には、原則として以下4つのルールに従って等級認定が行われます。(一部の例外については下記の『後遺障害併合ルールの例外』で解説)
ご自身はどの等級に該当する状態なのかを把握する際は、自動車損害賠償保障法施行令で定められている『後遺障害等級表』をご確認ください。
ルール1 |
第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を3つあげる |
ルール2 |
第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を2つあげる |
ルール3 |
第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つあげる |
ルール4 |
第14級の後遺障害が2つ以上ある場合は、いくつあっても第14級 |
上記のルールを見てお気づきかと思いますが、後遺障害が複数認定された場合には、等級を足すのではなく繰り上げることによって等級認定が行われます。
例えば、後遺障害8級と11級がある状態だとルール3が適用され、7級の等級が認定されます。このように複数の後遺障害がある場合、最も重い後遺障害の等級の繰くり上げにより全体としての等級が決定されるのです。
ただし、後遺障害は1級が最も重い等級なので、それ以上のくり上げは認められません。例えば、3級と4級の後遺障害が併合してルール1が適用される状態であっても、1級より上位の等級はありません。
上記のルール4のとおり、14級は複数あっても14級のままです。14級が複数あると全体としての等級は併合14級に変わりますが、等級がくり上がることはありません。
例えば、後遺障害9級と14級がある状態だと最も等級が高い9級がそのまま認定されます。基本的に14級の後遺障害は等級くり上げには関与しないと認識しておいて問題ないでしょう。
後遺障害が複数ある状態でも上記のルールが適用されないケースも存在します。以下では後遺障害併合ルールの例外を3つご紹介します。
右手・左手や右足・左足など、類似した部位で違う等級の後遺障害が生じた状態など、くり上げによって等級の序列が乱れる場合には上記の併合ルールは適用されません。
例えば、下肢を膝関節以上で失い(4級)、もう片方の下肢を足関節以上で失った(5級)場合、後遺障害の併合ルールに従うと4級が3くり上げられて、1級が認定されるでしょう。
しかし、本来1級の認定を受けるには『両下肢をひざ関節以上で失った』状態でなければいけません。上記の例で等級をくり上げるとその条件を満たさずに1級を獲得できてしまうため、序列を乱さないように併合2級(両下肢を足関節以上失った状態)が認定されることになります。
例えば、1つの後遺障害が原因で他の後遺障害が生じているような場合、併合による等級のくり上げは認められません。最も重い後遺障害の等級が、そのまま適用されます。
具体的には、大腿骨を変形し(12級)、その足が1cm 短縮(13級)したという2つの後遺障害が認定された場合、大腿骨が変形したという1つの身体障害を別の観点から評価すると足が1cm 短縮という評価になります。この場合、実質的な後遺障害は大腿骨が変形したという点にあると考えられるため、後遺障害のくり上げは適用されずに12級が認定されることになります。
介護を要する後遺障害を認定された場合では、後遺障害が複数あっても等級のくり上げは認められません。以下の介護を要する後遺障害の等級がそのまま適用されます。
<介護を要する後遺障害の等級及び保険金額>
等級
介護を要する後遺障害
保険金額
第一級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4,000万円
第二級
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3,000万円
事故前から後遺障害のある人が、交通事故の怪我によって、同一部位について後遺障害の程度が悪化した場合、加重障害として等級認定される可能性があります。
その場合、自賠責保険の支払基準によれば、原則として、悪化した事故後の後遺障害の等級に応ずる保険金額から、事故前からあった後遺障害の等級に応ずる保険金額を差し引いた金額が、当該事故の後遺障害の保険金額となります。
なお、自賠責保険の支払基準によって支払われる保険金の額は、裁判で認められる賠償金の額よりも低額になることが通常です。
例えば、事故前からあった7級の後遺障害が、交通事故の怪我によって、同一部位について5級に悪化した場合、自賠責保険の支払基準によれば、5級の保険金額から7級の保険金額を差し引いた金額を当該事故の後遺障害の保険金額として保険金の算定がなされます。
事故の怪我によって、事故前からあった後遺障害とは無関係に別の部位に後遺障害が残った場合は、原則として、事故後の後遺障害を単独でとらえて等級認定および保険金の支払いがなされます。
交通事故に詳しい弁護士であれば、加害者が契約する任意保険会社との交渉において、豊富な法的知識をもとに、裁判で認められるであろう賠償金の額を視野に入れて交渉をするため、被害者自身が保険会社と交渉する場合と比べ、より高額な賠償金を獲得できる可能性が高くなります。
【後遺障害慰謝料の基準額】
等級(別表第2) |
自賠責基準 (2020年3月31日までに発生した事故) |
弁護士基準 |
1,150万円 (1,100万円) |
2,800万円 |
|
998万円 (958万円) |
2,370万円 |
|
861万円 (829万円) |
1,990万円 |
|
737万円 (712万円) |
1,670万円 |
|
618万円 (599万円) |
1,400万円 |
|
512万円 (498万円) |
1,180万円 |
|
419万円 (409万円) |
1,000万円 |
|
331万円 (324万円) |
830万円 |
|
249万円 (245万円) |
690万円 |
|
190万円 (187万円) |
550万円 |
|
136万円 (135万円) |
420万円 |
|
94万円 (93万円) |
290万円 |
|
57万円 |
180万円 |
|
32万円 |
110万円 |
※上記「弁護士基準」の列に記載した金額は,公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用したものです。
『離婚』『IT』『相続』『刑事』『借金』など、弁護士によってそれぞれ得意分野が異なります。中華料理人にフランス料理を注文しても料理人が調理に苦戦するのと同様に、弁護士も経験のない分野の法律問題については力を発揮できず、適正な後遺障害の等級認定や、賠償金の獲得が十分になされない可能性がありますのでお気をつけください。
そのため、弁護士に依頼して、適正な後遺障害の等級認定がされることを目指す場合には、交通事故の損害賠償請求事件に詳しく、実績が豊富な、交通事故事件を得意とする弁護士から選択したほうがよいでしょう。
近年ではHPを公開している弁護士も多くいます。気になる弁護士がいる場合は相談前に調べておくとスムーズです。また、当サイトのようなサービスを利用して、お住まいの地域に近い弁護士を探すのも有効な手段です。
後遺障害が複数ある場合、基本的には重い後遺障害の等級をくり上げて等級認定が行われます。ただし、後遺障害の部位や状態によってはくり上げの基準が変わるケースもあるので注意が必要です。
当記事では後遺障害が複数ある場合の後遺障害の等級認定について簡潔に解説しました。ですが、後遺障害の等級認定の基準はかなり複雑です。疑問がある場合はご自身だけで手続きを進めずに、弁護士依頼を検討されることをおすすめします。
等級(別表第2) |
後遺障害 |
保険金額 |
第一級 |
両眼が失明したもの 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 両上肢をひじ関節以上で失つたもの 両上肢の用を全廃したもの 両下肢をひざ関節以上で失つたもの 両下肢の用を全廃したもの |
3,000万円 |
第二級 |
一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 両上肢を手関節以上で失つたもの 両下肢を足関節以上で失つたもの |
2,590万円 |
第三級 |
一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 両手の手指の全部を失つたもの |
2,219万円 |
第四級 |
両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 両耳の聴力を全く失つたもの 一上肢をひじ関節以上で失つたもの 一下肢をひざ関節以上で失つたもの 両手の手指の全部の用を廃したもの 両足をリスフラン関節以上で失つたもの |
1,889万円 |
第五級 |
一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一上肢を手関節以上で失つたもの 一下肢を足関節以上で失つたもの 一上肢の用を全廃したもの 一下肢の用を全廃したもの 両足の足指の全部を失つたもの |
1,574万円 |
第六級 |
両眼の視力が〇・一以下になつたもの 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの |
1,296万円 |
第七級 |
一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 一足をリスフラン関節以上で失つたもの 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 両足の足指の全部の用を廃したもの 外貌に著しい醜状を残すもの 両側の睾丸を失つたもの |
1,051万円 |
第八級 |
一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 脊柱に運動障害を残すもの 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 一上肢に偽関節を残すもの 一下肢に偽関節を残すもの 一足の足指の全部を失つたもの |
819万円 |
第九級 |
両眼の視力が〇・六以下になつたもの 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 一耳の聴力を全く失つたもの 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 一足の足指の全部の用を廃したもの 外貌に相当程度の醜状を残すもの 生殖器に著しい障害を残すもの |
616万円 |
第十級 |
一眼の視力が〇・一以下になつたもの 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
461万円 |
第十一級 |
両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの 脊柱に変形を残すもの 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
331万円 |
第十二級 |
一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 長管骨に変形を残すもの 一手のこ指を失つたもの 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 局部に頑固な神経症状を残すもの 外貌に醜状を残すもの |
224万円 |
第十三級 |
一眼の視力が〇・六以下になつたもの 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一手のこ指の用を廃したもの 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
139万円 |
第十四級 |
一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 局部に神経症状を残すもの |
75万円 |
出典元 |
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